《じっくり解説》葬儀とは?

葬儀とは?

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葬儀…

死者を弔う儀式.<復> 1.葬儀の形態.<復> わが国における葬儀は,主として仏式で行われる.時として,キリスト教式,神道式でも行われるが一般化されていない.また最近は無宗教形式の葬儀も行われるようになっている.<復> 仏式,神道式,キリスト教式では,それぞれ葬儀の行い方が異なる.それは,それぞれの宗教の持つ,神概念,世界観,人間観が根本的に異なるからである.葬儀について理解するには,まずそのことを知っておかなければならない.<復> (1) 仏式. 仏教には,キリスト教で信じるような万物の創造者は存在しない.死者そのものが人を祝福したり,のろったりする存在であると考えられている.従って仏式葬儀は死者の霊を慰めて,たたったり,のろったりしないようにするためでもある.それゆえ仏式では,死者そのものが主人公なのである.参加者は死者そのものに,ささげ物をし,礼拝をすることが求められている.<復> (2) 神道式.わが国では仏式葬儀が圧倒的に多い.それは,徳川幕府のキリシタン禁令の際,仏式以外の葬儀が禁止されたことにもよっている.一時期,明治の初めに,廃仏毀釈の命令によって,神道式の葬儀が盛んに行われたことがあった.しかし神道思想の死を忌み嫌う観念とぶつかり,また,1882(明治15)年に神官の葬儀禁止令が出されたこともあって,結局神道式の葬儀は一般化されなかった.神道式の葬儀では,供物は酒やなま物がささげられる.また,神官の祝詞(のりと)が読まれ,焼香の代りに,玉串がささげられる.死者は〇〇の命(みこと)と命名され神格化されるので,葬儀の主人公は仏式同様,死者自身であり死者が礼拝の対象である.<復> (3) キリスト教式.キリスト教式の葬儀には当然,キリスト教(すなわち聖書)の世界観や人生観が反映されており,仏式や神道式とは異なった形式をとることになる.従ってキリスト教式の葬儀を理解するためには,聖書の世界観や人間観を知る必要がある.<復> a.キリスト教の世界観.①全知,全能の創造主が,全宇宙を創造し,これを保持しておられる(創世1章).②人間を御自身の英知によって創造しこれにいのちを与えられた(創世1:27).③創造主は,人に与えたいのちを,また人より取り去り,その生涯においてなしたことを善悪ともにさばかれる(Ⅱコリント5:10,11,黙示録22章).④創造主は,さばかれるべき人間の救いのために,聖い人(イエス)となられ,自らの聖いいのちを代償として,人々を赦される(Ⅱコリント5:21).⑤この赦しは,イエスを救い主と信じた人々に与えられ,その恵みは永遠のいのちである(ヨハネ3:16).<復> b.キリスト教の人間観.①人間は創造主の最高の作品であって,自然発生したものでも,偶然に進化したものでもない.創造主の英知によって造られたものである(詩篇139篇).②しかしその人間は,始祖アダムにおいて創造主に背き,創造主の怒りを買い,さばきとしての死が定められた(創世3章).③それゆえ,すべての人は,自らの力では創造主の祝福にあずかることができなくなっている(ローマ3:23).④そのさばかれるべき人間のために,救い主が来られて,御自分のいのちをいけにえとしてささげ,救いを求める人々に永遠の祝福を与えられる(ヘブル10:14).⑤しかしこの救い主の赦しを拒む者は永遠のさばきを受けなければならない(黙示録21:8).⑥天国と地獄は交通不可である(ルカ16:19‐31).<復> この世界観,人間観に基づいて,キリスト教の葬儀は行われるのである.<復> キリスト教の葬儀の主人公は,死者でも,喪主でもない.人にいのちを与え,またこれを取られる創造主御自身なのである.キリスト教の葬儀においては,厳しくも人のいのちを取りたもう創造主を,厳粛な思いをもって,恐れかしこみ,あがめまつるのであって,死者が礼拝される対象であってはならない.また必ず自分にもこの死が訪れることを思い,死者の生き方から深く学び厳粛に創造主をあがめる時でもある.こうした世界観,人間観に基づいて,キリスト教の葬儀は理解され執り行われなければならない.<復> 2.葬儀に関する法律.<復> 葬儀に関する法律は,その行い方などを定めてはいない.ただ「生活衛生法」の中に,「墓地,埋葬等に関する法律」がある.参考までに記すこととする.<復> 墓地,埋葬等に関する法律<復> 第1章 総則<復> 〔法律の目的〕<復>第1条 この法律は,墓地,納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が,国民の宗教的感情に適合し,且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から,支障なく行われることを目的とする.<復> 〔定義〕<復>第2条① この法律で「埋葬」とは,死体(妊娠4箇月以上の死胎を含む.以下同じ.)を土中に葬ることをいう.<復>② この法律で「火葬」とは,死体を葬るために,これを焼くことをいう.<復> 第2章 埋葬,火葬及び改葬<復> 〔24時間内の埋葬又は火葬の禁止〕<復>第3条 埋葬又は火葬は,他の法令に別段の定があるものを除く外,死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ,これを行ってはならない.但し,妊娠7箇月に満たない死産のときは,この限りでない.<復> 〔墓地外の埋葬・火葬場外の火葬の禁止〕<復>第4条① 埋葬又は焼骨の埋蔵は,墓地以外の地域に,これを行ってはならない.<復>② 火葬は,火葬場以外の施設でこれを行ってはならない.<復> 墓地,埋葬等に関する法律施行細則<復> (埋葬又は火葬の許可申請)<復>第1条 …市町村長(特別区区長を含む)の埋葬又は火葬の許可を受けようとする者は,次の事項を記載した申請書を同条2項に規定する,市町村長に提出しなければならない.<復> 1死亡者の本籍,住所,氏名.(死産の場合は,父母の本籍,住所,氏名)<復> 2死亡者の性別.(死産の時は妊娠の月数)<復> 3死因.(法定伝染病,その他の別)<復> 4死亡年月日.(死産の時は分べん年月日)<復> 5死亡場所.(死産の時は分べん場所)<復> 6埋葬又は火葬場所.<復> 7申請者の住所氏名及び死亡者との続柄.<復> 3.葬儀の内容.<復> 葬儀は,人の死亡に伴い,その人を葬る行為である.次のような事柄が含まれる.<復> (1) 死亡診断書の受理.死亡診断書は,医師より必ず受け取らなければならない.<復> (2) 死亡届の提出.身内の者または関係者が医師の死亡診断書を持って,市町村役場に提出する.<復> (3) 火葬,埋葬許可申請.申請書は市町村役場にある.申請方法については,本項目2.を参照.この時,火葬場の都合と葬儀を行う側の都合とを勘案して火葬の日時を定め,葬式の日時をも定めることになる.この書類は火葬の際,火葬場の事務所に提出する.<復> 家族の中に死者が生じた場合,教会に連絡し相談する.教会ではあらかじめ葬儀社を決めておいてキリスト教式の葬儀について,よく説明し理解しておいてもらう必要がある.「キリスト教式で」と言うだけではよく理解していないために仏式とそれほど変らない葬儀,用具になりやすい.教会はパンフレット等を作っておいて説明するとよい.特に病院で死亡して,自宅または教会に棺を運んだ場合には,前もって調べておく必要がある.時として仏式の装束で納棺されている場合があるからである.<復> (4) 関係者への連絡.火葬許可により火葬の日時が決定し,葬式の日時も決定したら,関係者に連絡する.挨拶状の作成は葬儀社に依頼すると素早く印刷してくれる.その際キリスト教式の挨拶状にすることに気を付けること.蓮の絵の入ったものは避ける.蓮は仏式のシンボルである.<復> (5) 納棺式.<復> a.場所.①病院で死亡した場合.病院へ葬儀社から棺を運び,病院で行うこともある.②自宅で行う場合.葬儀社から棺が届けられた後,ごく親しい者が集まって納棺式を行う.<復> b.納棺式プログラム.①賛美.故人愛唱歌がある時は,説明して歌う.②聖書朗読.詩篇23,90篇,ヨハネ14:1‐4,Ⅱコリント5:1‐11等.③祈祷.故人が信者と不信者とでは異なる.④賛美.「永生」「天国」などの項目から.初めのものと入れ替えてもよい.⑤納棺の辞.故人のあかしなども含めて.棺に聖書等を入れることもあるが,それらはむしろ記念に保管しておいたほうがよいと思われる.⑥賛美.故人愛唱歌,または「永生」「天国」.⑦祈り.遺族や参加者の今後の守りのため(プロテスタントの教会では,死者のための祈りは行われない).<復> (6) 前夜式.<復> a.前夜式の意味.仏教の通夜は,死者に悪霊が入るのを夜通し防ぐのが目的だが,キリスト教にはそのような考えは存在しないので,行わなくても一向に差支えない.もし行うのであれば,遺族の慰めや励ましのためであり,夜遅くなって翌日の葬儀に支障を来さないようにすべきである.プログラムは納棺式のプログラムとほぼ同じで遺族の挨拶や翌日の葬儀のための連絡報告などを加えればよい.<復> b.供物について.仏教では死んだ本人にささげ物をするが,キリスト教では,ささげ物は唯一の創造主に対してのみささげられるものなので,死者へのささげ物はしない.金品を持参するのであれば,それは遺族に対する慰め,励まし,会場の飾り付けの費用などの志とすべきである.「供」の字をつけるとささげ物になるので避ける.葬儀に際して持参する金品は「慰」「寸志」,または「哀悼」などとするとよい.<復> c.献花について.キリスト教の葬儀に献花が一般化してきている.しかし「献」という字は死者へのささげ物を意味するので,人は喜ぶかもしれないが,創造主には喜ばれない行為であると思われるため,行わないほうがよい.どうしても行うならば献花でなく,花で遺体の周りを飾る旨を明確にすべきである.<復> (7) 葬式.キリスト教式の葬式は,自宅で行うより,教会で行うほうがよい.自宅で行う場合,親族や近所の人の介入が強く混乱を来す場合が多いからである.<復> a.準備.正面に棺を置いて,生花で飾る.仏式のような祭壇は用いない.プログラムは,あらかじめ用意しておくと心のこもった葬式となる(薄いグレーの紙に黒字で印刷し,濃い目のグレーか黒のリボンを付けると感じのよいプログラムができる).<復> b.プログラム.①奏楽.②棺入場.あらかじめ準備してある場合はこの項は不用.③賛美歌.「永生」「天国」関係のものがよい.④聖書朗読.死と死後に関するものなど.⑤祈祷.用語に注意(死者のためではない).⑥賛美歌.故人愛唱のものがあれば,説明して歌う.⑦故人略歴.親しかった人,または教会代表が行う.⑧説教.個人のあかしを含めながら,死と死後のことについて聖書から学ぶ.⑨賛美歌.故人愛唱,または「永生」「天国」関係のもの.①0(弔辞).これは死者への語りかけになりやすいので,やむを得ない場合以外にはないほうがよい.入れるならば,死者への呼びかけをしないで,故人の思い出を通して遺族への励ましや慰めになるように,事前に十分了解してもらうことが重要である.①1弔電披露.弔電は遺族にわかればよく,弔電披露は出席者より弔電のほうが大切であるという印象を与えかねないので,「弔電を多くの方からいただいて,遺族は大いに慰められており,感謝しております」というように報告すればすむであろう.①2頌栄.これは創造主の主権をほめたたえる歌である.①3終祷.これは祝祷である.しかし葬式に「祝」の字を使うと誤解を招く恐れがあるので,注意が必要.①4後奏.送葬行進曲または賛美歌.この間静まる.①5遺族挨拶.遺族から参会者への謝辞.①6報告.火葬に関する報告など.①7棺退場.出棺.これは身内の者数名で行う.<復> c.注意.①葬式は大体1時間以内.②写真が参加者の礼拝の対象にならないようにする配慮が必要.③地域によっては,金ピカでない,感じのよい霊棺車を持っているので問い合せるとよい.<復> (8) 火葬.火葬を嫌う教会もあるが,復活の時の肉体は,今われわれが所有している肉体ではないので,信仰上火葬は問題にならない.ちりはちりに帰る(創世3:19).<復> a.火葬場で.まず,火葬許可書を事務所に提出する.棺は,係員により,炉の前に運ばれる.参加者は炉の前に並ぶ.この際,キリスト教式と告げて,拾骨室の仏式用具を取りのけてもらう.<復> b.火葬プログラム.①賛美歌.故人愛唱歌または『讃美歌』320番.②聖書朗読.来世に関する希望を与えるもの.③祈祷.創造主の御支配を覚え厳粛に祈る.復活の希望,再会の希望などの祈り.④点火.この時賛美歌を歌うこともある.40—60分,時としてはそれ以上かかる.その間,指定された部屋で休む.交わりの時.⑤拾骨.火葬が終ると係りから連絡がある.一同拾骨室に集まる.牧師が祈ってから,死者に一番近い関係の者から拾骨する.骨つぼに納めて,自宅に持ち帰る.<復> (9) 納骨または埋骨.日を定めて墓地にて行う.<復> a.プログラム.①賛美歌.「永生」「天国」.②聖書朗読.復活などの希望を与える箇所.③祈祷.創造主の約束への信頼.④納骨または埋骨.埋骨の場合はあらかじめ穴を掘り,骨を入れてから,身内の者から土をかける.⑤賛美歌.故人愛唱歌があれば歌う.または「永生」「天国」.⑥祈祷.遺族の慰め,守り,励ましを願う.<復> b.喪について.仏教では,死者は49日間,中間状態にあるので,その間死者の供養をしなければ死者は成仏しないという考えがある.しかしキリスト教には,このような考え方は存在しない.喪にはいろいろな考えがあるようである.仏教では死者のある家は入口に「忌中」という札を貼って慎む.喪も,死の汚れを持った人が忌み慎んで,一室に閉じこもる状態との考えがある.喪の期間を,いとこは7日,兄弟姉妹は30日,親子は50日と定めているところもある.聖書では死を悲しむ度合によってその長さは異なっていて自由のようである.とにかくキリスト教には,仏教のような喪の考え方は存在しない.「喪中につき新年の挨拶は御遠慮申し上げます」という考え方は果してキリスト教的なのか,疑問である.<復> c.喪主について.仏式で葬儀の主催者を言い,親の死に際しては一般には長男が行う.クリスチャンは仏式の葬儀の喪主にならないほうがよい.偶像礼拝の主催者になるのであるから.キリスト教式において「喪主」という用語は誤解を与える感じが強いので,「遺族代表」とでもすべきではなかろうか.<復> (10) 記念会.キリスト教の記念会は,死者を慰める集いではない.故人をしのび,主の恵みに感謝し,自らの死への備えをする時である.また身内の者との良い交わりの時として行う.行うべき定められた周期はなく,またこれを行わなくてもよい.→冠婚葬祭とキリスト者,祖先崇拝とキリスト者,仏教・ヒンズー教とキリスト教,神道とキリスト教.<復>〔参考文献〕『世界大百科事典』平凡社,1971;小畑進『キリスト教慶弔学事典〈婚&葬〉』いのちのことば社,1978;井之口章次『日本の葬式』筑摩叢書,1977;竹田聴洲『祖先崇拝』平楽寺書店,1964;岩野真雄『追善供養の意義と効果』大東出版社,1967;『実務・衛生行政六法』新日本法規,1989.(堀越暢治)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社