《じっくり解説》世界の教会と神学(ヨーロッパ)とは?

世界の教会と神学(ヨーロッパ)とは?

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世界の教会と神学(ヨーロッパ)…

Ⅵ ヨーロッパの教会と神学<復> 1.世俗化・教会・神学.<復> 近代から現代にかけて,ヨーロッパの教会全体に大きくのしかかってきている問題は,″世俗化″([英語]secularization,[ドイツ語]Sa¨kularisierung—もともと「時代」「世代」「永続する」を意味する[ラテン語]saeculumとsaecularisに由来し,アウグスティーヌス以来″この世″″この世的″を意味する)の問題である.世俗化とは,「一般的に宗教的教会的表象や思想の除去,ならびに宗教的事物や人間の神的な結びつきからの解放と独立を意味する.すなわち,宗教や教会や信仰といったものを排除したときはじめて,自己と世界を事実に即して正しく認識することができるという考えから,人間は文化,経済,国家,科学を宗教から分離するのであり,この分離の遂行された状態を〈世俗主義〉(secularism, Sa¨kularismus),その過程そのものを〈世俗化〉という」(堀光男).1882年にニーチェが宣言した「神の死」ということは,まさにこの過程を浮彫りにしたものであり,以来,ヨーロッパにおいてはこの世俗化は生活全体の特色となってきており,″キリスト教的ヨーロッパ″(Corpus Christianum)の瓦解が急速に進んできた.今日,ヨーロッパにおいて,人々は神に無関心か,あるいはルターのように恵み深い神について問うのではなく,「神よ,あなたはどこにいるのか」と神そのものについて問うている(Zahrnt H., Die Sache mit Gott, 1966).<復> こうした状況の中で,ヨーロッパの教会は,「神について語ることはいかに可能か?」「人はこの世俗化した社会において,いかにしてキリスト者として生きることができるか?」という根本問題の解決を迫られてきた.大局的には教会の中に二種の取組みが登場してきている.一つは,世俗化をあるべき理想からの退廃過程と見なし,自律的理性の立場を批判しながらキリスト教の失地回復を目指す弁証論(Mascall, E., The Secularization of Christianity, 1965 ; Dooyeweerd H., Roots of Western Culture, 1979)であり,他は,F・ゴーガルテン(Verha¨ngnis und Hoffnung der Neuzeit—Die Sa¨kularisierung als theologische Problem, 1953),J・A・T・ロビンスン(『神への誠実』1964),D・ボーンヘファー(『抵抗と信従』1964)などに見られる積極的肯定的取組みである.ボーンヘファーは,世俗化はキリスト教信仰それ自身の中に出発点を持っているとし,福音を,①イエス・キリストの人間化(ヨハネ1:14),②人間らしくあること,③他者のための存在,の三点を軸として福音の「非宗教的解釈」の提示を試みている(Loen, A., Secularization,1967;J・マッコーリー『神とこの世』1971).<復> ヨーロッパの神学界については,プロテスタント・サイドでは,1965年にP・ティリヒ,66年にE・ブルンナー,68年にK・バルト,76年にR・ブルトマンが,またカトリック・サイドでは84年にK・ラーナーといった神学的巨星が没した後,リベラル化が一層進行しつつある一方,全体としては若返り,多様化,そしてある意味で混迷の状況にあると言える.<復> 2.変りつつあるローマ・カトリック教会.<復> 「1962年10月11日は,近代教会史上,画期的意義を持つ重要な日の一つに数えられるであろう!」これは,公会議にオブザーバーとして招かれたオランダ改革派の神学者G・C・ベルカウワーの第2ヴァチカン公会議に対する総括の言葉である(The Second Vatican Council and the New Catholicism, 1965).<復> この第2ヴァチカン公会議は「アジョルナメント」(aggiornamento—現代化)を基調として,①教会が自覚を強め,その本性に対する理解を高めること,②教会内の刷新をはかること,③キリスト教会の一致を推進すること,④現代人との有効な対話を増進すること,の四つを具体的目標として掲げた.これら四点を過去のトリエント公会議及び第1ヴァチカン公会議と比較してみると,①と②の点は,教会の権威の強化や異端邪説の規制を主眼とした両会議と著しい対照をなしている.③の点は,特にトリエントに見られた反プロテスタントの傾向と対照的であり,④の点は,従来の公会議が専らキリスト教徒とキリスト教国のみを対象としていたことと,著しく違っている.特に,公布された「憲章」「教令」のうち,「啓示憲章」「教会憲章」「典礼憲章」「現代世界憲章」「エキュメニズム教令」「非キリスト教諸宗教宣言」「信教自由宣言」がカトリックの新方向を示すものとして重要である.今日,カトリックに起りつつある変化と新しい動きとを考えずに,ヨーロッパの教会を理解することは不可能である.<復> 第2ヴァチカン公会議と最近のカトリック神学界で起りつつある主要な変化として次の点に注目すべきである.①聖餐(聖体拝受)—パンとブドウ酒の″実体変化″を中心とする従来の化体説とは別に,それにあずかる信者が知覚する″意味変化″を中心とする説の広がり,②進化論に対するオープンな姿勢(ティアール・ド・シャルダン),③プロテスタントを「別れていった兄弟たち」と呼び直し,「十字架の敵」と呼んできたルターに対するより評価的姿勢,④聖書の批評学的研究の受容(シュナケンブルクやラグランジュ)やバルト神学の積極的評価(キュング,バルタザル),⑤「神の民」としての教会,聖職位階制はあくまでも神の民に奉仕するためのもの,各司教及び司教団の権限の大幅な増加,⑥自国語(ラテン語でなく)での典礼の執行,ミサにおける説教の強調,他教会の洗礼に対する寛容な扱い,教会暦の簡素化,⑦マリヤを「神の民」という見地から,信仰の模範と規定し直したこと,⑧信教の自由,反ユダヤ主義の否定や他宗教に対する寛容な姿勢,世界平和への積極的貢献,⑨プロテスタント及びギリシヤ正教との和合の方向の表明など(南山大学監修『第2バチカン公会議解説』全7巻,1968—69).これらの変化は,ヨーロッパ・キリスト教界の今後の構図を大幅に書き換えていくものではないかと予測される.<復> 3.伸び続ける福音派.<復> 「グレーター・ヨーロッパ・ミッション」の副会長として,長年ヨーロッパ伝道に従事してきたウェイン・デッツラーは『変りゆくヨーロッパの教会』(The Changing Church in Europe, 1979)の中で,「今まで少数派と言われてきた福音派は,ルター派色の強い北部からカトリック色の強い南部に至るヨーロッパ全土において,顕著な隆起を示している」と指摘している.また,G・リシャール・モラールは,『プロテスタント—過去と未来』(1979)の中で,″福音派の活力″に触れ,「〈ファンダメンタリスト〉が多くの地域で—イタリア,スペイン,あるいはポルトガルを含めて—市民権を得るようになった.…ファンダメンタルなキリスト者は,将来の歴史のために根本的な財産寄託をしているのではないか…と問われるべき」であると指摘している.<復> 今日,一般に脱キリスト教現象ということで知られているヨーロッパのキリスト教界の実態をより正しく理解するためには,この「福音派」([ドイツ語]Evangelikaler)の台頭と以下に挙げるような活動にも注目する必要があろう.①全世界的,全ヨーロッパ的及び地域的な伝道会議の開催—全世界的な会議として,ベルリン世界伝道会議(1966年.One Race, One Gospel, One Task, 2 Vols,1967),ローザンヌ世界伝道会議(1974年.Let the Earth Hear His Voice,1975),アムステルダム世界伝道者(エバンジェリスト)会議(1983年).全ヨーロッパ的な会議として,ヨーロッパ伝道会議(1971年.主催ヨーロッパ福音主義同盟.36か国より18教派の1064名参加.指導者はドイツのP・シュナイダー,ノルウェーのC・ヴィスレフ,英国のG・カービー及びJ・ストット,フランスのH・ブロチャーなど)と,「ユーロフェスト’75」(ブリュッセルで1万以上の福音派の青年が参集).地域的会議として,フィンランド伝道会議,スペイン伝道会議,ノルウェー青年宣教大会など.②協議会—フランス福音同盟,フランス独立福音的改革教会全国連合,英国聖公会内の福音主義協議会,ドイツの聖書と告白の集い協議会など.③伝道組織・福音的運動—ケズィックの運動,ペンテコステ運動(スカンジナビア諸国とイタリアに多い),ルター派内のリーベンツェラー運動,ラブリ(F・シェーファー創立)を初めとする多くの兄弟団運動,ドイツのルター派改革派内のNo Other Gospel運動,英国のキリスト者学生運動(The Universities and Colleges Christian Fellowship), International Fellowship of Evangelical Students,英国のLeicester Ministers Conference,ヨーロッパ全土に広がるTrans World Radio,国際飢餓対策機構,Scripture Unionなど多数.④神学・教育機関—英国London Bible College, Spurgeon’s College, Tyndale House,オスロー独立神学校,アペルドルン神学校,カンペン神学大学,ティンダル神学校,カルヴァン主義哲学協会,スイスのバプテスト神学校,エマオ聖書学校,バーゼル神学アカデミー,フランスのエックス・アン・プロバンス改革派神学校,ドイツのTheologische Konvent(1970年フランクフルト宣言を発表),ヨーロッパ福音主義神学者会(テュービンゲン大学のP・バイアハウス,カンペン神学大学のK・ルニヤ,英国のJ・ストットなどが中心).これまで学位を重んじなかった福音派のおもに宣教師養成神学校が,24校でヨーロッパ福音主義神学協議会を結成.1990年には,フェルハウグ神学校が修士号(M. Div.)資格校として認定された.⑤出版—英国のIntervarsity Press, Christian Literature Crusade, The Banner of Truth社,Lion社など.(宇田 進)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社