《じっくり解説》長老派とは?

長老派とは?

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長老派…

教会の政治と組織を長老制度によって行い,維持している教会・教派の総称.教会政治の形態のひとつで,ほかには監督派と会衆派がある.改革派を名乗る教会も,教会政治の形態からすれば長老派である.「長老派」の呼称は,17世紀前半にスコットランドで用いられたのを初めとする.<復> 1.長老.<復> [ギリシャ語]presbuterosは一般に年長者を意味するが,新約の教会では,教会の指導,監督,管理に当る者を指した.新約聖書では,「長老」と「監督」とは交換可能の語である.新約聖書に「長老」の語が現れる最初の箇所は使徒11:30である(エルサレム教会).使徒15:2では,エルサレム会議に使徒たちと長老たちが共に議員として出席していたことが明らかである(参照同15:4,6).使徒たちは小アジヤにおいて教会ごとに長老を選ばせ,それぞれの群れの霊的指導に当る者として立てた(使徒14:23.参照使徒20:17).長老たちの指導の任務については,Ⅰテモテ4:14,5:17,Ⅰペテロ5:1‐4などに記されているところから知ることができる.<復> 初代教会には様々な賜物に応じて各種の務めを担う者が立てられていたが(ローマ12:6‐8,Ⅰコリント12:28‐30),そこでは専ら教える人と,専ら治め,指導する人の区別が明確である.ここに後の教会職制における牧師(教師)と長老の働きのそれぞれの原型を見る.Ⅰテモテ5:17では,「よく指導の任に当たっている長老」と「みことばと教えのためにほねおっている長老」とが,同一の長老職にありながらも別の分野を担う者であることが明らかに示されている.「神のみことばをあなたがたに話した指導者」(ヘブル13:7)は,明らかに教師を指す.後の教会が,統治に当る長老を「治める長老」と呼び,牧師(教師)を「教える長老」と呼ぶ根拠はこのような聖書の言明にある.<復> 長老とは別の職務として,貧しい者と病人に対するあわれみのわざに携わる執事の職務のあったことは,新約聖書の記す通りである(使徒6章,21:8「あの七人」,ピリピ1:1,Ⅰテモテ3:10‐13).<復> 2.長老による統治.<復> 新約聖書の記述を見ると,例えばエルサレムには複数の信徒の群れがあったと理解される.ペンテコステ説教に続いて3千人がバプテスマ(洗礼)を受けたこと(使徒2:41),信徒が増し,男の数が5千人ほどになったこと(同4:4),さらに主を信じる弟子の数が非常に増えたこと(同5:14,6:1,7),教会での使用言語が多くあったこと(同2,6章)などを読み合せると,たったひとつの教会があったとはとうてい考えられない.むしろ,多くの信徒集団があって,その集りを「エルサレムの教会」(使徒8:1)と呼んでいた,と理解するのが自然である.使徒会議のためにパウロとバルナバを迎えたのは,エルサレムの教会(単数形)であり,使徒たちと長老たちであった(使徒15:4.参照使徒15:22「全教会」).事あるごとに長老たちがみな集まっていた,とする記述からすれば(使徒15章,21:18),エルサレムの教会と総称される複数の群れが,長老たちの集団指導体制の下にあったと考えるのが順当である.同じことは,エペソ教会の場合にも見ることができる.ユダヤ人とギリシヤ人の別が特に言われていること(使徒19:17),パウロがわざわざ「あなたがたの中を巡回した私」と言っていること(同20:25),しかも「群れの全体」(同20:28)と言っていることからすれば,エペソ教会と単数で言われるひとつのまとまりの中に,複数の群れと多数の長老の存在したことが無理なく読み取れる.<復> 長老を指す[ギリシャ語]presbuterosは,英語ではpresbyterである.年長者を意味するelderが使われることの多いのは事実であるが,同一地域にある複数の教会をひとつの単位として統治する長老たちの会議をpresbyteryと呼ぶことには,大切な意味がある.長老(presbyter)と長老会(presbytery)の対応が,長老主義(Presbyterianism)の根幹を語り尽している.日本では,各個教会の牧師と長老による会議を小会,一定地域内の複数の教会を管轄する会議を中会,さらに全体を統轄する会議を大会と呼ぶのが普通である.これは会議の段階性を指し示す上では適切であるが,英語の用語presbyteryの語っている意味が日本語の「中会」に十分に反映されているとは言いがたい.韓国の長老派諸教会では,中会に当るものを「老会」と呼んで,presbyteryの意味を映し出している.<復> 3.長老主義の特質.<復> 長老によって教会の統治を行うべきであるとの主張とその実践が長老主義であるが,歴史的には,これは監督主義に対する批判として成立した.しかし,カルヴァンが主張した通り,長老制度は新約聖書の教会が採っていたところであり,古くは旧約時代の神の民が長老によって統治・指導されていたことに,そのパターンがある.ジュネーブでカルヴァンの実践した長老制は,フランス,スコットランド,オランダなどに広まり,さらに移民の流れとともにアメリカへと進むこととなり,世界伝道の進展に併せて諸文化圏へともたらされるに至った.<復> 長老主義は聖書の権威に服することを基本姿勢とするとともに,復活のキリストのみが教会のかしらであることを主張し,その前提の上に教会政治の枠組みを築く.キリストは御自身のみことばと御霊とをもって信徒を導かれるが,その統治に当って長老の働きを用いられる.歴史の中で行われてきた長老主義には次の特質が見出される.<復> (1) 民主的.「宣教長老」と呼ばれる各個教会の牧師は,当該教会の陪餐会員によって選ばれ,招聘される.しかし,教師任職及び牧師就職は中会によって執り行われる.「治会長老」と呼ばれる各個教会の長老は,同じく当該教会の陪餐会員によって選ばれ,小会の試問を経て小会によって任職され,その職に就けられる.通常,牧師が小会議長となるが,小会を構成する議員の間には何の序列もない.一教会に複数の牧師がいる時にも,会議においては同格である.一定地域内の複数の教会を統治する中会の会議においても,教師と長老は同等の権威を持ち,同等の議会権能を行使する.長老が教会員によって選ばれることは,長老が単に会衆の代表者であることを意味しない.むしろ,教会役員として主から託された職務を行う者として認められたことを意味する.<復> (2) 代議的.中会は,その地域内の全教師及び各個教会を代表する長老によって構成される.各個教会の現住陪餐会員数に応じて,中会議員として送り出す長老の数を定めるのが普通である.中会は当該地域内の教師・各個教会・小会を霊的に統治する代議機関であり,教会の設立・解散,教師の任免,牧師の就職・辞職を取り扱うほか,教育・伝道プログラムの推進を図る.大会も教師と長老によって構成される.小規模の教派の場合には,全教師及び各教会小会で選ばれた各1名の長老(あるいは会員数に応じ複数)が議員であるが,大規模の場合には,それぞれの中会が大会に送り出す代議員を選出する.教師と長老の平等性を具現するため,大会の教師議員と長老議員の数を同等に定めている教派もある.大会は全教師・各個教会・中会を霊的に統治する.神学校を経営することも大会の役目のひとつである.中会と大会の間に地方議会(synod)を設け,複数の中会にわたる形での諸活動を進めている例も見受けられるが,それは実質的な意味で中会を管轄・統治するというよりは,実際的な活動の推進・調整に当るという色合いが濃いのが現状である.長老主義は中会の権威を重要視し,中会独自の判断を尊重する.神学教育機関を中会立(あるいは連合中会立)とするのは,そのひとつの現れである.<復> (3) 立憲的.日本の長老・改革系諸教会の大会は,欧米の大規模な諸教会の全国総議会(general assembly)に相当する.全国総議会に直結するのは中会であり,地方議会ではない.大会はその教派の最高決議機関であり,教会の憲法の制定・改廃ほかの重要事項を取り扱う.憲法は信仰規準と教会規程から成り,教会規程は通常,政治規準・訓練規定・礼拝指針を含む.大会は教会全体の一致と一体性を具現するために,その議会権能を行使する.大会に限らず教会の会議は,常に神のみことばに一致する決定を目指し,良心の責めを感じない限り,その決定を尊重し,これに服従することが長老主義の基本姿勢である.信仰規準,政治規準,訓練規定などの重要な改訂に当っては,大会が改正案を中会に下ろし,中会の批准を経て大会としての最終決定に至ることが広く行われている.長老主義政治では,各会議の平等性を重んじ,固有の議会権能を尊ぶが,下位の会議で教理あるいは秩序に関して紛争が生じた場合は,上位の会議の決議に服することを通則としてきた.会議の段階性は全教会の一致を目指し,これを保証するものである.<復> 教理・政治・礼拝にかかわる長老主義の大綱が整った形をとって定められたのは,ウェストミンスター会議(1643—49年)においてであった.世界の長老派・改革派諸教会は,この会議で定められたウェストミンスター信仰告白,大・小教理問答書,礼拝指針,政治規準に負うところが大きい.このほかベルギー信条,ドルト信仰規準,ハイデルベルク信仰問答が果してきた役割も見逃せない.<復> 4.日本の長老派.<復> 開国期のプロテスタント・キリスト教伝道に当って,北米の改革派・長老派諸ミッションの果した役割は大きかった.日本基督公会,日本基督一致教会の時代を経て,100年に及ぶ歴史を踏んできたが,現在,長老派に含まれるのは,日本基督教会,日本基督改革派教会,日本基督長老教会,日本福音長老教会,日本キリスト改革長老教会,カンバーランド長老キリスト教会などがある.日本基督教団の中にも長老による統治を行っている各個教会が少なくない.→教会政治,職制,教派.<復>〔参考文献〕W・L・リングル『長老教会—その歴史と信仰—』聖恵授産所,1979;J・H・リース『改革派教会の伝統』新教出版社,1989;Macpherson, J., Presbyterianism, T. & T. Clark, 1949.(石丸 新)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社