《じっくり解説》イエズス会とは?

イエズス会とは?

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イエズス会…

[ラテン語]Societas Jesu,[英語]Society of Jesus(略称S.J.).イエズス会は,ロヨラのイグナティウスによって創立された司祭修道会である.彼は神学研究のため,ちょうどカルヴァンが去った直後のパリ大学に入学していた.周囲に集まった同志や弟子のうち,P・ファーベル(Faber),F・ハビエル(ザビエル)(Xavier),D・ライネス(Laynez),A・サルメロン(Salmero´n),N・ボバジリャ(Bobadilla),S・ロドリゲス(Rodriguez)の6名とともに(そのほとんどがイベリア半島出身),1534年8月15日,パリ郊外,モンマルトルの聖マリヤ教会で,清貧,貞潔,エルサレムへの宣教活動(可能な場合は)を,教皇への絶対的忠誠とともに誓願した.この日にイエズス会の誕生を見る.当時,ベネチアとオスマン・トルコとの間に戦闘が行われていたので,聖地へ赴くことは禁じられ,彼らは北イタリアの諸都市で説教し,カテキズム教育や慈善事業を開始した.イタリアには多くの軍隊組織があったが,イグナティウスらのコンパーニア(部隊)は,この世の軍隊同様の厳しい訓練により,異教徒や異端との戦いに打ち勝つ霊的部隊を目指した.同志は増加し,1540年に教皇パウルス3世から修道会としての認可を得た.当初,会士数は60人の司祭に限定されたが,やがて定員数の上限は引き上げられるようになり,教皇は多くの特権とともに,アイルランド,スウェーデン,ロシアへの宣教を含む多くの義務を彼らに課した.1541年,イグナティウスは初代総会長に選出され,56年7月31日に死去するまでその職にとどまった.彼は『会憲』の作成に努めた.徐々に形成されたこの規則が,主著『霊操』とともにイエズス会の基本となった.<復> 1.設立の目的.<復> 認可を与えた教書は,設立の目的を次のように記す.「イエズス会が設立された目的は,特に,公の説教および神のことばを教える務めに従事し,種々の霊操(exercitia spiritualia)を与え,キリスト教的な博愛と慈善の事業を果たし,とりわけ子どもや無学な人々にキリストの福音を教えさとし,さらに告白やその他の秘跡(サクラメント)を授けてキリスト者を力づけ,こうして,人間が実生活の面でも,キリストの教えを理解する面でも進歩するように,そしてキリストへの信仰が広まるように努めることである」.つまり,(1)宗教改革の台頭期に際して,従来からのローマ・カトリック改革をさらに推進してカトリック信仰を啓発すること,(2)非キリスト教諸国において福音を宣教すること,を目的としたのである.こうして,「より大いなる神の栄光のために(Ad Majorem Dei Gloriam)」(A.M.D.G.と略す)を標語として掲げ,イエズス会は宣教運動の全世界への拡大を目指した.<復> 2.組織.<復> ベネディクトゥス会,フランシスコ会,ドミニコ会など従来の伝統的な修道会とともに,清貧(paupertas),貞潔(castitas),従順(oboedientia)の3誓願を共有した.ただし,大家族制的な定住制,定時の共同祈祷,聖務日課,特定の修道服の着用,などの規定はない.<復> 独特の組織体系として,総会長(Praepositus generalis)→大管区長(Praepositus provincialis)→院長(Rector)→一般会士という中央集権的で厳格な指導体制がある.総会において終身制で選ばれる総会長は,最高の行政権を持つが,同時に,総会のもとにあってその決議に従い,総会が指名した補佐役によって監査され,必要な場合には免職処分もあり得る.総会は原則として,総会長死去の際にのみ開かれる.総会は,総会長(代理と顧問を含む),管区長,各管区会議からの代表2名で構成された.<復> 会士は,次の種別を含む.(1)修練士(Novicius)—2年間の修練期間とそれに続く単式終生誓願(教皇への特別の服従,会の清貧を緩めないこと,教会での高位を受けないこと,教会での高位を避けるように積極的に努めること,の誓願)を果す者,(2)修学修士(Scholasticus)—修練期を終了した司祭補で,古典学の継続学習,哲学と聖職者の実習を2,3か年,神学を4年間,それに第3の修練期を終了した者,(3)修士補(Coadjutor formatus)—司祭または平修士,修道期間10年を終え,かつ司祭の場合は研究と第3修練期を終えて,単式公誓願を立てた者,(4)立誓修道士(Professus)—7年間の哲学と神学履修のほか,少なくとも10年間修道会内で生活し,特別の学問的,道徳的資格を認められ,盛式誓願(清貧,貞潔,従順の誓願のほか,特命に関して教皇への絶対服従)を立てた者,である.(4)の段階では,私有財産権を放棄する.<復> このように,会士は,宗教的にも学問的にも長期間にわたり教育された.会士が確固とした自律的な人格として育成され,統一的で有機的な組織体としてのイエズス会を構成し,生き生きと活動できるように組まれたのが,この会の体系であり教育方法である.その結果,(1)会士が修道院という隔絶の場所においてでなく,社会のただ中にあって活動し,(2)会士各自が,社会の思想や風潮に流されない確固とした,同時に柔軟な精神の持主として,克己心と,他者や社会への理解と的確な対応策に長じ,(3)しかも,会全体として組織的,有機的に働く協同の精神を宿すようになるのである.<復> 3.歴史と特色.<復> 17世紀半ばまでは,プロテスタント教会との対立と抗争とに明け暮れた.イエズス会の特色として,教育事業,司牧のわざ,宣教活動を挙げることができる.<復> (1) 教育事業.イエズス会のカトリック改革への最大の功績は,主として若い聖職者や信徒を対象にした教育事業にある.1540年春,イグナティウスは,勉学を必要とする会士をパリに送った.こうして学費不要の,会士専用学舎・生活共同体としてのイエズス会最初のコレギウムがパリに誕生した.哲学や神学を学びつつ,他の大学にも通学する会士(スコラスティキ,Scholastici)は,自発的に学習や討論を重ねた.当初,コレギウムでの正規の講義は行われなかったが,40年代後半になると,イギリスを除く当時の西欧の主要な大学都市にコレギウムが次々と開設され,45年,スペインのガンディアのコレギウムで正規の哲学講義が始められた.48年,シチリア島メッシナに文法,人文学,哲学,自由学芸,神学の課程を備えた本格的コレギウムが創設された.1586年,イエズス会全体への最初の『学事規定』(Ratio studiorum)草案が発表された時には162校が,同規定が公布された1599年には245校が数えられており,イエズス会士も1万人を越えた.1749年に至ると,669のコレギウム,176の神学専門学院,24の総合大学を擁するまでに進展していた.「ヨーロッパにおける優れた教育機関とは,イエズス会の機関のことである」との高い評価を得た.その間,P・カニーシウス(Canisius),R・ベルラルミーノ(Bellarmino)など著名な神学者を輩出した.また,ベルギーのイエズス会グループであるボランディスト(Bollandists)による『殉教者行伝』の刊行が特筆される.<復> (2) 教化事業.説教,聖礼典の執行,「聖心の信心」([英語]Devotion to the Sacred Heart of Jesus)などの奨励による霊的修行,『霊操』による修練など多方面にわたった.<復> (3) 宣教活動.18世紀半ばには,イエズス会は他の修道会が派遣し得ないほど多くの宣教師を,より多くの派遣国に送っていた.圧倒的多数で,特にアメリカ新大陸,アジア,アフリカなどスペイン,ポルトガル両国の勢力圏で活動した.フランス領の北アメリカでも苦闘した.今日のアメリカ合衆国領土で言えば南東部沿岸に沿って,1566年にイエズス会士が最初の入植を敢行した.独立期までは,英国植民地でのカトリック宣教師の活動をイエズス会が独占していた.中国では,先にハビエルが計画した伝道活動を,1582年,会士M・リッチ(Ricci)が継承し,新時代を画した.しかしイエズス会への反対勢力も強く,ガリカニズム,ヤンセン主義,ヴォルテールら啓蒙主義者からの反対は強烈であった.特にブルボン王家下,フランスを初めスペイン,ナポリなどでは(ロシアとポーランドはエカテリーナ2世の支配下にあった),教会法的解散を命じられたほどの抑圧を受けた.一方,わが国におけるハビエルらの宣教も忘れられてはならず,「耶蘇(やそ)会」の名で親しまれた.<復> 4.現況.<復> 同会も他の教会や修道会同様,時代への適切な対応を迫られている.1965年,3万6038名(アメリカ8393名を含む)が,1983年度は2万5952名となっていて減少傾向を示す.特に若い修学修士数において顕著である.とは言うものの,1974—75年の第32回総会などを中心に,多方面での活動を継続中である.P・テヤール・ド・シャルダン(Teilhard de Chardin),K・ラーナー(Rahner),B・ロナガン(Lonergan)ら代表的神学者がおり,N.T.Abstracts, Theology Digest, Theological Studiesなど数多くの学術誌や雑誌を刊行している.→イグナティウス,ハビエル,修道院制度,対抗宗教改革.<復>〔参考文献〕J・ロゲンドルフ編『イエズス会』エンデルレ書店,1958;高祖敏明「イエズス会学校」『ルネッサンスの教育思想』下,上智大学中世思想研究所,1986;Broderick, J. F., “Jesuits,” The Encyclopedia of Religion, Macmillan, 1987.(岩本助成)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社