《じっくり解説》カリスマ運動とは?

カリスマ運動とは?

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カリスマ運動…

[英語]The Charismatic Movement.[ギリシャ語]カリスマは「賜物」を意味する.神の賜物としての「聖霊のバプテスマ」体験(使徒1:5)を基礎として,キリスト者の霊的成長を促し,聖霊の働きを追い求め,その賜物の現れにより機構化されている「教会」の刷新をはかることを目的としている.この運動の源流は「近代ペンテコステ運動」であって,その発端は20世紀の初頭にアメリカを初めとして世界各地に起った教会内のペンテコステ・リバイバル運動にさかのぼる.「ペンテコステ運動」として知られるこの運動の主流は,その歴史的伝統を,直接的には19世紀におけるホーリネス・リバイバル運動,ジョン・ウェスリのメソディズム(メソジスト)運動,モラビア兄弟団の系譜を経て,ドイツの敬虔主義から受けているが,根本的には新約聖書に示されている教会の規範に求めて,その姿に回帰しようという運動である.使徒の時代においては,常にイエス・キリストの名のもとに神のわざが現され,しるしを伴う宣教が行われた.また,初代教会には聖霊の働きが明らかであり,聖霊の賜物が現されている.今日における教会は,聖書の示す規範から離れているのではないかという,根本的な反省から,こうした動きが教会史の中に常に起っている.この運動も,その主流のペンテコステ運動と同様に,新約聖書に示されている聖霊のダイナミックな働きを,今日の教会内に求めることを契機として生れた活動と言うことができる.<復> 1.その特質.<復> 「聖霊のバプテスマ」を教会史上の一回的な「聖霊降臨」とはせず,また救済論における「新生体験」を象徴するバプテスマ(洗礼)と同一視せず,明確に区別されるキリスト者の聖霊体験として追い求める.「約束された聖霊」(使徒2:33)は,神に召されているすべての者が期待すべき賜物であり,ペンテコステの日の神の霊の注ぎは今も変らず起っているという信仰に立っている.<復> 2.その聖書観.<復> 聖書は過去に起った出来事の記録ではなく,現代における神の働きを立証するものである.新約聖書における使徒たちの著しい働きは,聖霊の働きと結び付いてのみ考えられる.復活の主は「天においても,地においても,いっさいの権威」(マタイ28:18)を保有しておられ,これを聖霊を通して弟子たちにお与えになる.霊的な力を回復するためには,新約聖書に示されている「聖霊のバプテスマ」を体験しなければならないと信じている.またコリント書簡に見る超自然的な霊の賜物の現れは,今日においても「キリストのからだ」としての共同体の徳を高め,働きを推進するために神が備えておられるものであると信じる(参照Ⅰコリント12,14章).この運動は,聖霊の賜物に関して,区別や制限を設けることを否定する.聖書啓示における聖霊の賜物で,今日もはや教会には与えられない賜物と,永続的な賜物が存在するという区別の根拠が不明であり,その分け方は極めて人為的なものであると考えるからである.<復> 3.その組織と活動.<復> ペンテコステ運動が,その活動の結果として生じた果実(新生した魂)を守り,宣教の働きを継続するために「教会・教団」の結成を余儀なくされた歴史的情況のもとにあったのに対して,カリスマ運動はより恵まれた環境に置かれている.半世紀余りにわたるペンテコステ運動の結果は,世界的な規模の広がりを持ち,「聖霊のバプテスマ」の概念も広く知られるところとなった.こうした情況で,主流のペンテコステ教会以外の教会・教派の中で「聖霊のバプテスマ」の体験を持つ者が多くなった.時代の趨勢(すうせい)は異なり,これらの「聖霊体験」を持ったキリスト者が,それぞれの教会の中にとどまり,この運動に参加することができるようになった.カリスマ運動は,それぞれの属する教会の教理を信じ,基本的なキリスト教会の神学と一致する教えに立ちつつ,新約聖書に示されている聖霊体験を求め,組織化された今日の教会の刷新を目指す教職・信徒によって推進される活動となった.主流のペンテコステ運動が,福音主義の土壌に生れ,その中にとどまっているのに対して,カリスマ運動は,福音主義,非福音主義を問わず,またプロテスタント,ローマ・カトリック,ギリシヤ正教会の違いを問わず,この運動を広げている.今日では,上記に加えて聖公会,ルーテル派,バプテスト派,メノナイト派,改革派等の教会が名を連ねている超教派的な運動である.<復> 4.その活動.<復> ペンテコステ主義の特質である「聖霊のバプテスマ」とその「しるし」としての[ギリシャ語]グロッソラリア(異言を語ること)体験は,もはやその運動固有の教義としてではなく,カリスマ運動によって広く受け入れられることとなった.こうして,初代教会において見られた聖霊の賜物が現される時,教派間の壁は除かれ,大きな融和が実現する.その時,教理の違いを離れて神をあがめる行為での一致が実現する.従って,教理における同意には触れず,神をあがめる礼拝行為における一体性を具現するところに,この運動の意義があると言う.この運動の活動は,研修会,修養会,祈祷会の開催,また全国的,国際的規模での大会などによる交流をもって交わりの輪が広げられている.その中でも重要とされているのはカリスマ祈祷会である.その形式は多様であるが,それぞれの地域において定期的な集会が持たれ,参加者は共通の聖霊体験を深めるために集まる.次のような要素が特徴として挙げられる.(1)聖霊の導きのままに進められる集会であって,計画されたプログラムよりも,その場における導きにゆだねる柔軟性.(2)会衆全員が参与することが特徴で,導かれるままに「賛美」を歌い,「教え」がなされ,「霊の賜物」が現され,「預言」があり,「異言が語られ」,「その解き明かし」が行われる.(3)預言,異言とともに「霊の歌」(エペソ5:19,コロサイ3:16)が期待され,賛美歌とともに詩篇による賛美やコーラスなどが繰り返される.(4)聖霊による自然な導きのままに,祈り,賛美,聖書からの奨励,あかしなどが逐次行われる.(5)キリストのからだである教会を建て上げるという明確な目的のために行われる.<復> 5.その推進と媒体.<復> この運動の推進の一翼となっている組織の一つに「国際全福音実業家親交会」がある.1953年,ディーモス・シャカリアンを会長として創立されたこの会は,超教派の朝食祈祷会,夕食祈祷会を世界各地で開催し,着実に成長を続けている.その主唱する「全福音(Full Gospel)」とは,イエス・キリストを救い主,聖霊のバプテスマの授与者,いやし主,来るべき王として強調するものである.日本においても,この活動が行われている.結成以来,「ヴォイス(Voice)」誌を発行し,アメリカを初め,カナダ,オランダ,スイス,香港,南アフリカなどの諸教会にその会員を広げ,一般信徒による独自の宣教活動を展開している.また,1961年にはジーン・ストー夫人による「トリニティ」誌が三一協会から発行されてカリスマ運動の紹介に大きな役割を果した.この後に「ロゴス・ジャーナル」誌が刊行されて,この運動の情報を扱ってきた.英国においては「リニューアル(刷新)」誌が隔月に刊行されている.1960年代の米国においては各種のテレビ番組が電波を通してこの運動の推進を始めて今日に至っている.<復> 6.その展開.<復> 使徒の時代と比較して,今日の教会に欠けているものは聖霊の働きであり,キリスト者の聖霊体験であるという信仰的立場から,霊的な力の回復のために「聖霊のバプテスマ」を求める運動は,様々な教理と伝統を持つ教会・教派にかかわる時,それぞれの教理との整合性が問われるようになる.この運動の中心命題である「聖霊降臨」は繰り返され,「ペンテコステ」は今日的体験とする教えに関して,ローマ・カトリックに属するカリスマ運動の人々は,教皇ヨハネス23世の祈りを引用して理解する.そして「新しき聖霊降臨として,今日おんみの奇跡を更新し給わんことを」と祈る.また,「教会は,永遠につづくペンテコステを必要としている」という教皇パウルス6世の言葉も引用される.しかしローマ・カトリックでは「聖霊のバプテスマ」の概念に関しては明確さを欠いている.秘跡におけるバプテスマとの関係がはっきりしていないからである.ローマ・カトリックではカリスマ運動を「カリスマティク・リニューアル」と呼ぶことを好む.しかし教義的には「聖霊のバプテスマ」を新しい体験として考えるのではなく,礼典において受けたバプテスマの「実際化」であると見なし,すでに受けている恵みの「確認」であるとする.こうして「聖霊のバプテスマ」を宣教論的にとらえるペンテコステ主義とは対立することになる.<復> カリスマ運動はまた,ペンテコステ主義の特質である「聖霊のバプテスマ」に伴うしるしとしてのグロッソラリア(異言)を,必須の要素としない人々を認めるようになっている.これらの人々は「ネオ・ペンテコステ」と呼ばれている.こうして教理的にペンテコステ主義から離れるに従って,この運動は「カリスマ刷新運動」と呼称されるようになった.→カリスマ,ペンテコステ運動.<復>〔参考文献〕R・H・カルペッパー(大塚九三子訳)『カリスマ運動を考える—聖書的視点から』ヨルダン社,1978;Spittler, R. P. (ed.), Perspectives on the New Pentecostalism, Baker, 1976 ; Hollenweger, W. J., The Pentecostals‐The Charismatic Movement in the Churches, Augsburg, 1972.(佐布正義)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社