《じっくり解説》モルモン教とは?

モルモン教とは?

モルモン教…

正式名「末日聖徒イエス・キリスト教会」.この世に″福音の回復″をもたらした真のキリスト教会と主張し,世界的規模で布教活動を進めている異端のグループ.世界におけるモルモン教徒の数はおよそ650万人,日本の信者数は約9万人と言われる.<復> 1.モルモン教の沿革.<復> モルモン教の言う″福音の回復″は,14歳の少年ジョウゼフ・スミス(1805‐44年)が1820年に見たとされる″幻″にその発端がある.スミスの話によると,幻の中に父なる神もイエス・キリストも現れて,すべての教派が堕落しており,その信条は憎むべきものであると言ったと言われる.最初の幻があってから3年経過した1823年9月21日の夜,スミスはまた天から別のメッセージを受けたと言う.この時,「モロナイ」という御使いが現れて,スミスが特別に神に選ばれた者であると話してから,次のように語ったと言う.「アメリカ大陸の先住民の記録とその起源とを金版に刻んだ一部の書物が埋められてあって,その中には古代の住民に救い主がお伝えになったままの完全な永遠の福音が載せてある」(J・スミス『高価なる真珠』2:34).スミスは御使いの指図した場所に行き,″改革エジプト語″で書かれたとされる金版を手に入れ,″神の賜物と力によって″それを英語に翻訳する仕事に取りかかったと言う.1829年に翻訳の仕事が終り,スミスは翻訳した本に『モルモン経』という題を付けて,翌年の春にそれを出版し,早速,布教活動を開始,米国ニューヨーク州で末日聖徒イエス・キリスト教会を設立した.<復> 『モルモン経』は,船でイスラエルからアメリカ大陸に渡った「リーハイ」という人物とその家族,及び子孫が築いた文明国の盛衰を描いたものであり,その歴史の記録は,前600年から紀元420年までの1千年にわたって書かれたと言われる.しかし,『モルモン経』に記してある名前・出来事・場所などを裏付ける考古学的な証拠は,一つとして発見されていない(『モルモン経』には多くの大都会の描写があるが,それらがアメリカのどこにあったのかを示す地図が載っていないのはこの理由による).さらに,″改革エジプト語″もいまだに所在不明の言語になっており,″神の賜物と力″によって書かれたはずの『モルモン経』は,この160年の間大幅に変更され,その変更箇所が約4千に上る.以上の理由から,モルモン教徒は別として,『モルモン経』を歴史書として扱う学者は,一人もいない.<復> 2.モルモン教の教え.<復> J・スミスは,『モルモン経』のほかに,″神の啓示″によって『教義と聖約』と『高価なる真珠』と題する本を記し,これらが聖書とともにモルモン経の基本聖典となっている.また,教会幹部が神から示された事柄を語る場合,それも聖典とされるが,これらの″聖典″の内容を要約すると,″人間が神になれる″ということになる.実際に父なる神も,かつては人間であり,福音の原則に従って律法を守ることにより″昇栄して″,神になったと言う.そして,天の父には父があって,このような状態は永遠に昔からあったということである.このように,モルモン教では,数え切れないほどの″神″が存在することになっている.さらに,これらの″神々″は,骨肉の体を有しており,天で妻(天母)とともに霊の子供をつくり,やがて子供たちは地球で人間として生れて肉体を与えられ,現世の試練の時代に入る.もし試練を乗り越えて福音の原則を守れば,これらの子供たちは父のもとに戻り,父から永遠の生命を与えられて神になる.つまり,自分の父と全く同様に,霊の子供をつくり,地球に住まわせ,神としてその世界を治めることになる.そしてやがて,アダムとエバのように必ず過ちを犯すことになるので,彼らのために救い主を送り,彼らも復活して神になれるように,道を備える.このプロセスは,永遠にわたって繰り返されると言われる(『救いの教義』第1巻,pp. 55—7,第2巻,pp. 44—5,末日聖徒イエス・キリスト教会発行).<復> モルモン教の教えに対して,聖書は,主なる神は唯一であり(申命6:4,イザヤ44:6‐8,45:5,6,22),人間ではなく永遠から神であって(民数23:19,詩篇90:2),いつまでも変らない方であり(詩篇102:27,マラキ3:6.参照ヘブル13:8),霊の存在である(ヨハネ4:24)ことを明白に教えている.また聖書は,人間はあくまでも神の被造物であって神になれないことをはっきり主張しており,そのような高ぶった考えが偽りの父である悪魔に由来することを明示している(創世3:5,イザヤ14:12‐15,エゼキエル28:2,6‐8).<復> 神になろうとするモルモン教徒には,数多くのノルマが課される.守るべき規則が4千以上あると言われるが,そのうちで最も重要なのは,モルモン教の神殿(モーセの幕屋,ソロモンの神殿を継承する神聖な場所と言われる)の中で行われる儀式に関するものである.神になるために,まず,神殿で結婚式を挙げなければならない.この式の中で夫婦は結婚の誓約を交わして,この世でのみならず永遠にわたって結び固められ,その絆は永遠に続くということである(ちなみに,神殿での儀式によらない結婚は現世限りのものとされている).このように,神となって,天の星のように無数の子孫を得るという祝福を救いの目標としているモルモン教徒には,神殿での結婚は,永遠の昇栄を得るための基盤なのである.このほかにも,″エンダウメント″という儀式を行わなければならない.これは,神の国に入るための″かぎ″が与えられる儀式であり,他の儀式と同様,その内容は極秘にされているが,モルモン教を離れた人々の証言によると,″御国のかぎ″とは,特殊な合図や握手や合言葉だということである.御国のかぎを教えられて初めて,″日の光栄″(神の国の最高の階級とされている)に入ることができるとされる.こうした儀式は,第一にモルモン教徒個人の救いのためであるが,さらに,自分の亡くなった先祖のためにも,同じ儀式を行うことが義務付けられている.モルモン教の″福音″を聞いて神殿に入る機会のなかった先祖も神になれるように,身代りの結婚式や″エンダウメント″の儀式,また洗礼式などが行われるのである.実際に,神殿内での儀式の90%以上は死者のためであると推定されている.先祖を救う者にならなければならないと考えるモルモン教徒は,先祖の系図をできる限りさかのぼって探求する.その系図作成を援助するために系図部が設けられ,また,米国ユタ州の本部には系図図書館や記録保管庫まである.この保管庫には,世界各地から送られて来る系図の資料が厳重に保管されていると言われる.しかし,自分のみならず,先祖の救いまでもがかかっているという神殿の儀式を行ったことのあるモルモン教徒は,全信者数の3割にも満たず,定期的に神殿に入る人は1割しかいないということである.このように儀式を行わない多くの信者は,神になる他のモルモン教徒の″日の光栄″より一段落ちた″月の光栄″に入り,御使いになると言う.これより下に行くと,″星の光栄″があるが,モルモン教では,すべての人々がその信念や生き方にかかわりなく,キリストの贖いのゆえに体の復活にあずかり,ある程度の光栄に進むことができるとされる.永遠の刑罰はないと言う.<復> モルモン教の律法主義や秘密の儀式を中心とする″福音″に対して,聖書は,イエス・キリストへの信仰による救いを説いている(ヨハネ3:16,使徒16:31,ローマ10:9‐13).福音の中心はキリストの十字架と復活であり(Ⅰコリント1:23,15:1‐5),福音の提供する救いは賜物であって(ローマ6:23,エペソ2:8),人間の行いによるものではないと記されている(ローマ3:19,20,エペソ2:8,9,テトス3:5).また新約聖書には,神殿や秘密の儀式については何も述べられておらず,神の国に立ち返るために必要な″合図″や″握手″や″合言葉″に関しても,言及は全くない.むしろキリストは,「わたしは世に向かって公然と話しました.わたしはユダヤ人がみな集まって来る会堂や宮で,いつも教えたのです.隠れて話したことは何もありません」と言われたし(ヨハネ18:20),また,「隠れているもので,あらわにならぬものはなく,秘密にされているもので,知られず,また現われないものはありません」と教えておられるのである(ルカ8:17).初代のクリスチャンたちが神殿を建てたり,秘密の儀式を行ったり,先祖の系図を探求したりしたという記録は,新約聖書にも教会史にも皆無である.従って,モルモン教の″福音″は明らかに,″回復された福音″ではなく,″新しい福音″なのである.使徒パウロは,そのような「ほかの福音」に注意するように教会を戒めており,それを伝える者はのろわれるべきである,とはっきり述べている(ガラテヤ1:6‐9).→異端.<復>〔参考文献〕W・ウッド『モルモン教とキリスト教』いのちのことば社,1986;クリスチャン新聞編『ドキュメント異端』いのちのことば社,1983;Decker, E./Hunt, D., The God Makers, Harvest House, 1984.(ウィリアム・ウッド)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社