《じっくり解説》ヤング・エバンジェリカルとは?

ヤング・エバンジェリカルとは?

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ヤング・エバンジェリカル…

[英語]Young Evangelical.アメリカ福音派内の最新の進歩的な群れ.「世俗的福音主義」(Worldly Evangelical)とも呼ばれている.<復> 第2次大戦後のアメリカの福音派は,「根本主義・近代主義論争」の直系である戦闘的・分離主義的ファンダメンタリズムとディスペンセーション主義系に多い穏健(オープン)ファンダメンタリズム,ファンダメンタリズムの欠陥を超克する形で登場したポスト・ファンダメンタリスト福音主義,ルター,改革,長老,アングリカン,メノナイトの各歴史的教派の中で継承されてきた告白主義的福音主義,カリスマ運動の五派という形で発展してきた.ところが,1970年に,特にウルバナ宣教大会を契機に進歩的意識を持った青年福音主義者の群れ(カルヴィニスト新派,ウェスレアン新派,黒人グループ)が台頭し始め,現在では福音派の一つの流れを形成するまでになっている.<復> 1.台頭の契機的要素.<復> (1) 現代的センスと適応性を具備した福音主義をあかししたC・S・ルーイスの影響.<復> (2) 世俗の真っただ中での真の弟子の道をあかししたディートリヒ・ボーンヘファーの影響.<復> (3) 既存の福音派教会に対する不満.例えば,厳格な聖書観の強調は一種の聖書本文の崇敬と化している.回心の強調は生きた弟子生活となっていない.伝道は人々の全人的ニーズに答えるよりも,決心者の数といわゆる″霊的″と言われる面だけに集中している.キリスト者の一致も依然お題目に終っている.精神的・物質的に抑圧され苦しんでいる世界の人々と福音を分ち合うことよりも,世俗からの分離の姿勢が支配的である.説かれる倫理は,特定の文化と結び付いた外的行為のみを律する律法主義的戒律主義が強く,それらの履行に失敗した者たちへの赦しの提供は少ない.社会的あかしも極端な警告か,さもなければ反動の方向をとりやすい.個人の信仰体験の強調と反知性主義との結び付きは,現代の世俗社会に対し説得力を持った福音の弁証の育成を妨げている,など.<復> (4) 神学と実践におけるフラー神学校の新しい進歩的姿勢の影響.聖書の限定的無謬性,聖書の文化的制約性,反律法主義,福音のコンテキスチュアリゼーション,神の国とは根本的に正しい人間関係であると説く″関係の神学″(Relational Theology),自由と自治とによる学生生活など.<復> 2.特色的な主張.<復> (1) 聖書論—生成・誕生の「いかに」を明らかにしてくれる批評学を受け入れる一方,無謬性を従来のように聖書の本文にではなく,聖書の中心を構成している救済的な教えについて主張するか,もしくは,聖書の中心目的は人々を救い主イエス・キリストとの人格的な関係に導き入れることであり,聖書はこのユニークな目的を間違いなく有効に果すと考える機能論的立場.<復> (2) 聖書解釈法としてのディスペンセーション主義の否定.人間の失敗の連続と悪化の段階を示すと言われる独断的な七つの時代区分.聖書の過度な字義的解釈と,倫理的側面と条件的成就の面を見失った預言の予言的・予告的性格と無条件成就の強調.終末における教会の秘密裡の空中携挙,聖書の統一性を危うくする区画化された聖書解釈(例えば教会はペンテコステまで導入されなかったとの解釈),既存教会の背教状況の極度の強調から結果する制度性に対する不信と個人主義的信仰理解への傾斜,歴史破滅論と未来主義の黙示終末論などを問題と見ている.<復> (3) 人々の全人的ニーズに対応する伝道の実践.ウィリアム・グレイアム(グラハム)の貢献は評価しつつも,グレイアムの伝道論がなおアメリカの「市民宗教」(ロバート・ベラー),「アメリカ的文化宗教」(ウィル・ハーバーグ)から十分脱却できていないことを批判し,フォード,スキナー,ストット,エスコバル,アウスバーガー(メノナイトの反戦主義者)などのよりクリティカルでホリスティックな宣教観を評価.回心に弟子としての生活(descipleship)と社会的あかし(social concern)を含めた宣教論を強調.<復> (4) 福音派版社会的福音(Evangelical Social Gospel)の提唱.ブルース・ラーソンらとともに「楽しい経験としての性愛」と新しい性倫理の提唱.意味ある人間関係と治療的共同体という機能を持った教会.<復> 人種差別の完廃—ロナルド・ベーム『あなたの神は白すぎる』(1970)やトム・スキナー『福音はいかに黒いか』(1970)などは,イエスは社会における革命的活動のために十字架で死なれたラディカルな活動家であると説いている.<復> 良心ある政治の確立—保守バプテストに属する上院議員マーク・ハットフィールド『良心への服従』(1976,邦訳1987)やリチャード・ピアード『不釣合なくびき—福音主義キリスト教と保守的政治観』(1970)は,アメリカニズムを清算した正しい政治と法則化を通してのあかしの現実的徹底化を呼びかけている.<復> 貧困の克服と健康な環境の保護のための戦い—リチャード・ケーベドーは,世界で富める上位19か国,世界人口の19%が世界の富の実に75%を独占しているとして,犠牲的な慈善と目的実現のための諸レベルでの共闘の必要を説いている.具体的な生活実践の面で,福音派はしばしば最初に,ある行為は間違いであると決め,その後で聖書の裏付けを見付け,いったん,いわゆる″証明聖句″とおぼしき箇所を発見するとそれを共通の教理と定め,規制力を持ったものにする習慣を持っている.しかし,禁止される行為がしばしば特定の時代,特定の社会,特定の文化を反映しているものにすぎない場合も少なくなく,普遍的な扱いになじまないものがある.具体的には,飲酒,喫煙,トランプ遊び,社交ダンス,ロック・ミュージック,長髪,映画観賞や観劇について,従来の頭ごなしの断罪の立場ではなく,分別と責任とを持った扱いを提唱している.<復> (5) 一致と協力の問題については,カリスマ運動は草の根エキュメニズムの橋渡し的役割を果していると見ている.また,エキュメニカル派との対話・交流を開くとともに,他宗教との会話を認めている.<復> (6) 諸科学とのより深い交渉を提唱.<復> 終りに,この群れはまだ固定したものとは言えないが,リベラル派内の比較的福音的な群れと合流して「新しい中道」(“A New Middle”—Coleman, R., Issues of Theological Conflict,1980)を形成するようになるのではないかという観察も最近出てきている.<復>〔参考文献〕Quebedeaux, R., The Young Evangelicals, Harper & Row, 1974 ; Quebedeaux, R., The Worldly Evangelicals, Harper & Row, 1978 ; Mouw, R., Politics and the Biblical Drama, Eerdmans, 1976 ; Wallis, J., Agenda for Biblical People, Harper & Row, 1976 ; Rogers/McKim, The Authority and Interpretation of the Bible, Harper & Row, 1979 ; Webber, R./Bloesch, D.(eds.), The Orthodox Evangelicals, Thomas Nelson, 1978 ; Hunter, J., American Evangelicalism, Rutgers Univ. Press, 1983 ; Pinnock, C., The Scripture Principle, Harper & Row, 1984 ; Pinnock, C.(ed.), The Grace of God, the Will of Man, Zondervan, 1989 ; Sider, R.(ed.), The Chicago Declaration, Creation House, 1974;雑誌にSojournersとThe Other Sideがある.(宇田 進)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社