《じっくり解説》情報化社会とキリスト教とは?

情報化社会とキリスト教とは?

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情報化社会とキリスト教…

1.情報の概念.<復> 情報化社会とは,情報の果す役割が主要なものとなる社会を表す言葉である.それでは,情報とはいかなるものか.情報は知識がおもな要素であるが,図書館のような建物の中に知識がため込まれているだけでは情報とはなり得ない.その知識が伝達されなければならないのである.次に,それでは知識が他者に情報として伝達されただけで情報となり得るのか.それも否である.伝達された知識が受け手に受容され,認識され,その結果,受け手に反応を起させなければ情報とはなり得ない.結局,情報とは伝達,受容・認識・反応を伴うところの知識と言うことができる.<復> 2.パウロの情報観.<復> パウロは,福音の内容を「キリストは,聖書の示すとおりに,私たちの罪のために死なれたこと,また,葬られたこと,また,聖書に従って3日目によみがえられたこと」(Ⅰコリント15:3,4)と規定し,福音が変質してしまわないように知識を固定した.次に,「聞いたことのない方を,どうして信じることができるでしょう.宣べ伝える人がなくて,どうして聞くことができるでしょう」(ローマ10:14)と伝達の必要性を語り,最後に,「ユダヤ人にはユダヤ人のようになりました.それはユダヤ人を獲得するためです.…律法を持たない人々に対しては…法律を持たない者のようになりました.それは律法を持たない人々を獲得するためです」(Ⅰコリント9:20,21)と福音の受け手がそれを受容し,認識し,福音によって新生することを最終目標とした.パウロは福音を情報(喜ばしい音信)ととらえていたのである.<復> 3.情報化社会.<復> 今日,情報化社会という言葉が使われる時,暗黙のうちにコンピュータ技術の発達と通信技術の発達が想定されている.通信技術の発達は,アメリカのテレビニュースを日本で同時に受信したり,ヨーロッパの外科手術を日本の医師が同時にテレビ画面で観察し,ディスカッションすることを可能にした.さらには,日米欧の3地域の人々がテレビを通して会議を持つことも,今日では珍しいことではない.これらの通信技術の発達は世界の距離を大幅に短縮した.通信技術の発達は福音伝達にも大きな影響を及ぼし,マスメディアによって同時に,広範囲に,福音を伝達することを可能にした.また福音に門戸を閉している国々に対しても,電波ならその壁を越えることが可能である.通信技術の発達が福音伝達の対象を一挙に全世界に広げた意義は大きい.<復> 次に,コンピュータ技術の発達は,通信技術の発達との相乗効果によって知識の収集を膨大なものにしたばかりでなく,電子的に情報を管理する技術を生み出した.以下に,幾つかの例を示そう.<復> (1) 市販データベースの利用.データベースとは,多数のデータをその関連データとともにコンピュータに蓄積し,必要なデータを利用者に瞬時に提供するシステムである.この利用には二つのタイプがあり,一つは,CD‐ROM(読み出し専用のコンパクトディスク)(Compact Disk‐Read Only Memory)またはフロッピーディスク(floppy disk)によって提供されているもので,CD‐ROMタイプでは,『ディスク聖書新共同訳』(日本聖書協会),『広辞苑』(岩波書店),『現代用語の基礎知識』(自由国民社),『オックスフォード英語大辞典』(紀伊国屋書店),『朝日新聞全文データベース』(朝日新聞社)などがすでに販売されている.CD‐ROMの情報を読み出すためには,パーソナルコンピュータとCD‐ROM読み出し装置が必要である.『ディスク聖書新共同訳』では,聖書の文章のみならず,1万5千点に及ぶ関連する風景画像や900点に及ぶ聖書関連文書を瞬時に見ることができる.フロッピーディスクタイプのものでは,バイブル・リサーチ・センターから販売されている『新改訳聖書データベース』,『新共同訳聖書データベース』,『口語訳聖書データベース』,『ギリシャ語新約聖書』などがある.これらの聖書のデータベースを用いると,語句(日本語,ギリシヤ語)の検索,語句の使用頻度調査,四福音書の比較,各翻訳の対比,ギリシヤ語から日本語への自動翻訳などが可能となる.CD‐ROMやフロッピーディスクのデータベースを用いると,知りたい記事が瞬時に得られるだけでなく,複数の条件を満たす記事の検索も可能となる.<復> もう一つは,電話回線を利用して,国内,または国外の各企業が開設しているデータベースを利用する方法である.この場合には,利用者はあらかじめデータベースを提供している会社に連絡し,利用者番号とパスワードを登録しなければならない.そうすると,手元のパーソナルコンピュータで全世界の膨大なデータを自由に使用することができるようになる.この際,パーソナルコンピュータ以外にモデム(MODEM)(MOdulation‐DEModulation)というディジタル信号(コンピュータ信号)をアナログ信号(音声信号)に,またはその逆に変換する装置が必要である.電話回線利用によるデータベースの中で,特に朝日(及び日経,読売,毎日)新聞記事データベースは説教の準備などで,新聞記事の検索が必要な時に役立つものである.<復> (2) ワープロの利用.ワープロ(Word Prosessor)は,原稿を活字並みの美しい文字に印字し,作成原稿を電子的に保存しておくことを可能にする.そのため,著述活動に携わっている人々には必携の器具であると言えよう.ワープロは過去の文書を取り出して,現在作成中の文書に加えたり,現在作成中の文書を自由自在に編集することが可能である.また,慣れてくると,文章の下書きをせずに,直接ワープロ画面に入力することも可能となる.ただし,自由自在に活動する頭脳の発想を手入力でワープロに制限されずに打ち込むためには相当の熟練が必要である.<復> (3) データベースによる管理.教会員が多数になった教会においては,牧会者が牧会上,教会員の必要データをコンピュータに保存しておくことが考えられる.この際,データを保存するソフトウエアとしてはデータベースが便利である.データベースでは,各種条件による検索,例えば7月生れの人を検索するとか,ある地域に住んでいる人の一覧を見るとか,個人についての家族情報を知るということを簡単に行うことができる.この際,最も注意しなければならないのは,牧会者が教会員の個人情報を管理することについて,牧会者,教会員双方の十分な納得が必要なことである.次に,図書または資料の管理についてもデータベースの利用が適している.図書または資料の基本的な分類法に加えて,それらの内容を幾つかのキーワードをつけて管理すると,内容によって探索を行う際に,威力を発揮する.<復> (4) 神学教育への利用.現在,すでに聖書語句,聖書言語の研究にデータベースは用いられている.今後は,人工知能(エキスパートシステム)の利用によってギリシヤ語,ヘブル語原典から日本語への聖書の翻訳が可能となるだろう.さらには教義学,組織神学の分野において,聖書の基本的論理ルールと聖書知識をコンピュータに与えることによって,聖書の示す教義体系を構築することも可能となるだろう.<復> 4.情報化社会の限界.<復> 通信技術の進歩,コンピュータ技術の進歩は目覚しい情報革命をわれわれに与えてくれた.しかし,これらの技術の進歩は知識の収集と伝達についての発展を促しただけであり,受け手が担う,知識の受容・認識・反応という部分については,先端技術は何らの貢献もしていないことに気付かなければならない.ビジネスマンに対する「高度情報社会の意識調査」(日本DEC社,1984年6月)によれば,ビジネスマンの67%が現在の情報量は多すぎると感じている.すなわち,受容・認識・反応の段階において拒否反応が出ているのである.キリスト者は無防備に情報化傾向を受け入れるのではなく,情報化社会の限界を見詰めつつ,人間が人間らしく活動するために,知恵をもって情報の取捨選択を断行しなければならない.(武川 公)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社