《じっくり解説》エホバ証人とは?

エホバ証人とは?

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エホバ証人…

1.名称.<復> 現代の異端的グループ「ものみの塔」に所属する人々のこと.団体名としては,正式には「ものみの塔聖書冊子協会」([英語]Watch Tower Bible and Tract Society)を名乗る(1896年以降)が,一般には「エホバの証人」を団体名のように用いることが多い.<復> 2.歴史.<復> (1) 創立者ラッセル(Charles Taze Russell)(1852—1916年)により,1879年にその特異な主張を発表する定期刊行物第1号が米国で発行されたのが,この運動の出発である.この雑誌は現在の「ものみの塔」誌の前身である.ラッセルの主張の中心は,1874年秋にすでにキリストは不可視的に再臨し,1914年に「異邦人の時の終り」が来ると予言したことにある.<復> (2) ラッセルの死後ラザフォードが第2代会長となり,彼のもとに組織としての確立を遂げる.1914年に第1次大戦が起り,17年には米国が参戦,徴兵を拒否するエホバの証人たちが各地で現れたことなどで世の注目を浴び,急速に勢力を伸長した.今日ではほとんど世界中にその働きを進めている.<復> (3) 日本では,明石順三(1889—1965年)が渡米後入信,帰国して日本支部を設立したことによって活動が始まった(1926年).「灯台社」の名のもとに熱心に活動したが,兵役拒否がきっかけとなり苛酷な弾圧を受け解散.日本敗戦の秋に明石らは釈放され,米国本部との連絡がついたが,彼は戦時中の本部の姿勢を不純と批判し,除名される.戦後の日本支部は,明石と別に1949年に再発足した.<復> 3.特色.<復> (1) 教義的特色.<復> (a) 三位一体の否定.異端の定義は,一口に言えば「キリスト教の基本教理から逸脱した教え」となるが,具体的には使徒信条などの基本信条否定として現れる.エホバの証人は明白に三位一体を否定し,御子と聖霊との神性を認めない.キリストは被造物であり,天使の最高者とする.彼らにとって,聖霊は単に「神の力」にすぎない.御父のみが神(=エホバ)であり,自分たちはその純正な証人,真のクリスチャンであると主張する.既成教会はすべてサタンの組織であるとして,自派のみが初代教会に直結したものと考えている.<復> (b) 十字架嫌悪.キリストの神性を信じないラッセルには贖罪が理解できず,この派の教えで「贖い」という語は用いても,その内容は″人質解放のための身の代金″程度を意味するにすぎない.罪の全き処理と解決という福音の奥義は知らず,従ってその教えは結局″わざによる救い″という律法主義から脱していない.この贖罪信仰の歪みは,端的に十字架嫌悪として現れる.キリストがかけられたのは十字架ではなく「杭(くい)」であると主張し,それに固執する.そして,既成教会は十字架を偶像にしていると,事実に反する批判,非難を繰り返す.<復> (c) 神名への誤解に基づく執着.「エホバの証人」の「エホバ」という神名は,正しい読み方ではない.本来,旧約聖書のヘブル語原典には子音4文字YHWHを記すのみであったのを,便宜上eoaの三つの母音を補ってエホバと読んだが,これが神の真の御名であるという誤解も生じた.今日では,正しい読み方はYaHWeHとすべきであるとされている.しかし「ものみの塔」においては「エホバ」という名称を絶対視し,この名にこだわることが神への(しかし実際は組織への)忠誠のしるしとされる.<復> (d) 終末論の歪み.ラッセルは,現在の体験としての救いを確信できないため,終末時における救いを期待する結果,終末に関する預言に関心が集中し,再臨の年月の予測計算に熱中した.そして1914年という年を算出したが,それがたまたま第1次世界大戦の起きた年となったため,ラッセルの教えは権威あるものとされた.しかし,その計算の基礎となる聖書の解釈は恣意(しい)的なものであり,それとともに主張された1915年に関する予言(1915年までに世界は終る)は全くはずれている.またものみの塔では,1975年に世の終りが来る,と一時熱烈に主張したが,これも当らず,どちらの場合もその時期が過ぎると主張を廃棄している.<復> (e) 救いの階級性.ものみの塔の教えに従い,その組織に忠誠を誓っても,それだけでは救いは保証されない.本部に完全に服従することが救いの条件である.この〈支配—服従〉の絶対化構造は永遠の世界にまで持ち込まれ,地上でのこの組織の支配階級は天国に住み,被支配階級は地上の楽園で永遠に(被支配者として)生きるとする.<復> (2) 実践的特色.<復> (a) 輸血禁止.輸血は神の意に背く恐ろしい罪だとして,重傷を負ったエホバの証人が輸血を受けることを禁じ,そのために死亡する事例が起って社会問題にもなったが,ものみの塔ではそのような死を殉教なみに美化する.なお信者は献血も禁止されている.<復> (b) 格闘技拒否.格闘的なスポーツを罪悪視するので,学校の授業であっても拒否する.もちろん,信仰的良心に従っての行動であれば第三者がとやかく言うべきではないが,問題は,そのような「罪悪視」が聖書の教えの誤解,曲解に基づくことである.これは(a)でも(c)でも同じことが言える.<復> (c) 投票拒否.クリスチャンは政治的な事柄にはかかわるなと教えて,信者が選挙権を行使することを禁じる.<復> (d) その他.誕生日の祝いは,偶像崇拝に通じるとして禁じられる.その他,様々な戒律が課せられ,律法主義的なこの派の教えの特色が,これらの実践面において体質として感じられるほどに目立っている.<復> (e) 不信者との離婚の是認.布教方法としては,家庭を訪問し「御一緒に聖書を学びませんか」と誘う形をとる.従って対象となるのは主婦が多い.こうして,妻がいつの間にかエホバの証人になっているのを「発見」した夫が,上記の(a)—(d)のような事実に触れて驚き,それに反対すると,「ものみの塔」の伝道者は″迫害に負けるな″と妻を励まし,その結果,深刻な家庭トラブルを生じるケースが多い.その際に夫がどこまでも妻の信仰に同調しないと,離婚もやむなし,とする事例もままあるようである.<復> 4.「新世界訳」聖書.<復> この派では最初,一般のキリスト教会と同じ聖書(まず英訳,そして各国語訳)を使用していた.しかし,一般の(正統的な)教会の教えとはあまりにも異なる自分たちの主張の根拠として通常の訳の聖書を使用するのは都合が悪く,1950年頃からエホバの証人独自の訳として『新世界訳』と称する「聖書」を刊行するようになった.この新世界訳聖書は「旧約」「新約」という名称を避ける.内容が66巻である点は同じだが,その翻訳にははなはだ問題が多い.特に重大なのは,英訳以外の各国語訳がすべて英訳を底本とする「重訳」である,という事実で,これは普通の聖書では見られない新世界訳独自の現象である.これはものみの塔本部(アメリカにある)の教えから各国支部が逸脱することを厳重に警戒,防止するためにほかならない.聖書そのものの教えるところからの逸脱よりも,本部の教えからの逸脱のほうが危険とされていることの証拠と言えよう.→異端.<復>〔参考文献〕千代崎秀雄『「エホバの証人」はキリスト教か』『輸血は罪か』いのちのことば社(1986,1987);W・ウッド『「エホバの証人」への伝道ハンドブック』いのちのことば社,1987;後藤光三『エホバの証人とは?』日本教会新報社,1981.(千代崎秀雄)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社