《じっくり解説》使徒教父とは?

使徒教父とは?

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使徒教父…

[ラテン語]Patres Apostolici,[英語]Apostolic Fathers,[ドイツ語]Apostolische Va¨ter.<復> 新約聖書時代あるいはその直後に書かれたキリスト教文書の著者の中で,使徒たちの直接の弟子と信じられていた者たちの呼称.一般に使徒教父とは,ローマのクレーメンス(著作年代は1世紀末),アンテオケのイグナティオス(2世紀初め),スミルナのポリュカルポス(2世紀初め),「ポリュカルポスの殉教伝」(2世紀中頃?)の著者,ローマのヘルマス(2世紀前半),アレキサンドリアでバルナバの名で書かれたと推測される手紙の著者(2世紀前半),「ディダケー」(12使徒の教訓)の著者(2世紀中頃),「クレーメンスの第2の手紙」の著者(2世紀中頃),「ディオグネートスへの手紙」の著者(2世紀末—3世紀初め),「パピアスの断片」の著者(2世紀)を言う.<復> クレーメンスについて詳しくはわかっていないが,ある教会的な権威を持った人物であったらしい.彼はコリントのキリスト者あてに第1の手紙と呼ばれるものを書いた.この手紙によると,コリントの教会には騒動が起っていた.その収拾のために相談を受けていたのだが,ドミティアーヌス帝下の迫害があったために返事が遅れたことを述べた後,問題の解決策としてへりくだりを勧め,様々な例を引きながら教会には規律が大切であることを繰り返し教えている.それゆえに,この手紙は1世紀末の教会の状況を知ることのできる重要な文書である.<復> クレーメンスの第2の手紙と言われている文書は,第1の手紙と関連付けられて彼の第2書簡と題されているが,実際のところクレーメンスが書いたものではない.コリントあるいはローマで書かれたものと言われているが,著者は不明である.1875年以前は12章までの書として知られていたが,それ以後は20章から成る文書として公刊されている.これは最古の説教として,また多くの聖書引用があることから新約聖書正典を証言する文書として重要である.<復> イグナティオスの手紙は,エペソ,マグネシア,トラレス,ローマ,フィラデルフィア,スミルナにある六つの教会あてとスミルナの主教ポリュカルポスへの手紙の,合せて七つの手紙から成る.イグナティオスはシリアのアンテオケ教会の2代目主教であったが,2世紀初めのトラーヤーヌス帝下の迫害の時捕えられてローマに護送され,野獣と闘う刑に処せられ,110年に殉教したと言われている.七つの手紙の中で,イグナティオスはそれぞれの教会に一致を勧め,異端の警告など重要な事柄を記している.当時の教会の状況,教義,制度,礼典等が語られており,史料としての価値が非常に高い書簡である.<復> ポリュカルポスは多くの手紙を書いたと言われるが,残存しているのはピリピ教会あての手紙だけである.彼はトルコ西海岸の港町スミルナの主教で,イグナティオスと親しい同労者であった.彼は使徒たちから直接教えられ,またキリストに直接会った多くの人々との交わりもあったと言う.エイレーナイオスは若い頃,彼から直接教えを受けたと言われている.<復> ポリュカルポスの殉教伝は,彼の殉教後間もなくしてスミルナの教会の人々が書き,トルコ中央より西寄りのフルギヤ地方にあったフィロメリウムの教会に送られた手紙と言われる.この殉教伝は,かなり史実に根差していると見てよいであろう.<復> ヘルマスはローマの郊外に農園を持つ信徒であったと言われる.彼は黙示文学の形式を用いて2世紀の中頃にヘルマスの牧者を書いた.内容は五つの幻と12の戒めと10のたとえから成っている.<復> バルナバの手紙は主として教義的であるが,神の啓示を霊的よりも肉的に解釈したユダヤ人の間違いを正す部分と,道徳的勧告的な論述の部分の2部から成る.こうして著者はキリスト教とユダヤ教とをはっきりと分ける.この書は古代教会ではバルナバの作とされていたが,今日彼を著者とする者はいない.著作年代は明らかではないが,大体1世紀後半から2世紀前半の間と見てよいであろう.マタイの福音書など幾つかの引用があり,新約聖書正典の証明のために重要な文書である.<復> ディダケーあるいは12使徒の教訓は,正確には「12使徒を通して諸国民に与えられた主の教訓」と言う.ギリシヤ語の表題の第1語をとって,普通ディダケーと呼ばれる.第1部では命の道と死の道が述べられ,第2部では洗礼(バプテスマ)に関する規定から断食,祈り,聖餐の問題までが取り上げられており,第3部では教会生活に関する規定と偽教師判別法,教師の待遇など実際面が扱われている.最後の章は終末論的な色彩の濃い警告である.著者は誰かわからない.成立年代も不明であるが,大体1世紀末から2世紀初頭とする学者が多い.書かれた場所は明らかでない.古代教会では概して高い評価を受けていた文書である.<復> ディオグネートスへの手紙は,教養ある非キリスト者を想定して書かれた手紙形式の弁証の書と言うことができる.異教の偶像崇拝とユダヤ教の習慣の愚かさを指摘した後に,キリスト教の道徳的生活の高潔さと神的起源を述べ,信仰の喜びの生活を紹介する12章から成る文書である.ただし最後の2章は別人による追加と言われる.著者は11章の初めに,自ら使徒たちの弟子,異邦人の教師と名乗っている.<復> 最後にパピアスの断片を紹介しよう.パピアスは2世紀前半に小アジヤのヒエラポリス教会の主教であった.また使徒ヨハネの弟子で,ポリュカルポスの友人でもあったと言われている.彼は130年あるいは140年頃に「主の言葉の説明」という5巻の書物を書いたが,現在は他の人の著作に引用されている13の断片しか残っていない.→ディダケー,使徒性,教会教父.<復>〔参考文献〕荒井献責任編集『使徒教父文書』(「聖書の世界」別巻4・新約Ⅱ)講談社,1974;M’Clintock/Strong (eds.), Cyclopedia of Biblical, Theological, and Ecclesiastical Literature, Harper & Brothers, 1895.(泥谷逸郎)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社