《5分で分かる》約束とは?

約束とは?

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約束…

約束とは元来,状況の設定や特定の物を与えることなど,将来的な行動の保証あるいは予告であって,普通,人格的な相手に対して言質を与えるような確かさをもって宣言される.それは,相手に信頼の思いを呼び起す.また,以下に見るように,契約,預言,誓い,福音などとも密接な関連がある.<復> 興味深いことに,旧約聖書には,この厳密な含意を持つ単語が見当らない.旧約で「約束」と翻訳される原語は,多くの場合,[ヘブル語]ダーバールあるいは[ヘブル語]イムラーと,それぞれが変化した語群であるが,それらの元の意味は,単なる「ことば」である.動詞の場合も同様に,もともと「語る」「言う」を意味する[ヘブル語]ディッベール,[ヘブル語]アーマルが,しばしば「約束する」と訳出される(ヨシュア23:14,15,Ⅱ列王8:19).「ことば」はそのまま現実となる力を持つものとして発せられる(逆に言えば,悪意を含んだ呪文には迷信的な恐れさえ生じるのである).<復> 以上のことは,神のことばに関して特に当てはまる.神には偽りがなく,そのことばは必ず実現するからである(Ⅰ列王8:56,イザヤ55:11).それゆえ,神が個人あるいは民に向かって語ることばは,そのまま確かな約束として聞かれる(民数23:19,申命1:11,ヨシュア21:45,23:14,15).幾つかの具体例を示せば,アブラハムに対して子孫の繁栄と,彼が祝福の基となるという約束(創世12:3,22:16‐18),イスラエル人への嗣業地賦与の約束(Ⅰ列王8:56),ダビデに対して王朝を確立するという約束(Ⅱサムエル7:11‐16),ソロモンに知恵を与えるという約束(Ⅰ列王3:12,5:12),新しい契約樹立の約束(エレミヤ31:31‐34),聖霊の降臨についての約束(ヨエル2:28,29)などがある.神の約束の確かさは,救済歴史の土台である.<復> 新約聖書において「約束」と訳出される単語は,[ギリシャ語]エパンゲリアとその語群であって,語幹となる[ギリシャ語]アンゲリアは,もともと伝達者,伝令([ギリシャ語]アンゲロス)によって語られる内容を指す.同じ語根に由来する[ギリシャ語]ユーアンゲリオンは「福音」「良い知らせ」を意味しており,しばしば両者は,実質において同義的である.<復> 神の民の歴史は,神の約束とその成就によって織り成される.神の約束は,御自身の誓いによって保証されており,途中で放棄されることはない.信仰者個人や民の不従順によって,約束の実現が一時,延期されることはあっても,内容そのものは神の誠実([ヘブル語]ヘセドゥ)によって保持される.ヘブル11:13,33,39によれば,旧約時代の人々は神の約束の完全な成就を見ることができず,その実現は部分的であった.新約聖書は,神の約束の多くが,主イエス・キリストとのかかわりで果されたと語る(使徒13:23,32,Ⅱコリント1:20,ガラテヤ3:16).しかし,必ずしも歴史的でなく,霊的な成就もある.嗣業地の賦与は,パレスチナの土地の獲得であるとともに,霊的な安息の確立によって完成される(ヘブル4:1,9).<復> 以上の事柄を発展させて述べれば,神の約束とその宣言は,いわゆる「預言」と同義的となる.ことに新約の著者によれば,イスラエル民族に対する神の約束は,預言的な性質を持っている.聖霊の賦与は,預言の成就であり,その前提には神の約束がある(ルカ24:49,使徒2:16,39).預言と約束とを区別する要素は,前者には往々にして消極的・否定的な内容が含まれ得るのに対して,後者はほとんど積極的な内容に限られる点である.また約束の実現には,聞く者に,そのことばへの信頼など,一定の条件が付加して与えられることが多いが,預言は時として神の無条件的な宣言である.約束はしばしば,幾世代にもわたる長期的な効力を有するが,預言はしばしば,特定の個人や状況において成就され,その後は教訓的な意味合いを残すのである.<復> 後期ユダヤ教やクムラン教団において,約束の受益者の範囲は厳しく限定して考えられた.新約においては,救いの約束はもともとイスラエル民族に与えられたが(ローマ9:4‐9),異邦人にも門戸が開かれたと明言される(エペソ2:12,13).<復> 「約束と成就」のテーマが旧新約聖書全体を貫くものとして重要であると指摘し,積極的に評価したのは,ヴェスタマン,キュンメル,ツィンメルリ,フォン・ラート,ロウリらであった.これに対して,バウムゲルテル,ヘッセなどは,旧約における約束のテーマの重要性を認めはするが,その細部が新約に肯定的に継承されているとは考えない.彼らによればただ,「わたしはあなたの神,主である」という基本的約束が残るだけである.→神のことば,契約・契約神学,預言・預言者.<復>〔参考文献〕Hoffmann, E.,“Promise,” The New International Dictionary of New Testament Theology, Vol.3, Zondervan, 1978 ; Minear, P. S., “Promise,” Interpreter’s Dictionary of the Bible, Vol.3, Abingdon, 1962 ; Smith, W. M., “Promise,” Evangelical Dictionary of Theology, Baker, 1984.(石黒則年)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社