《5分で分かる》真理とは?

真理とは?

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真理…

1.真理とは,哲学的領域においては,第1に,存在の事実及び関係についての知識,また科学的,歴史的に正当な認識を指す.第2に,合理的思考にかなった判断,推論の正しさ,事実と合致している思想を指す.第3に,その判断に基づく倫理的な真実さを言う.そこにおいて真理は,主知主義的な概念であり,隠れていたものが想起によってあらわにされ,人間の認識において明瞭になることを言う.この意味において真理は,実在しない事物と,それに基づく判断を意味する「偽り,虚偽」と対照される(参照箴言26:28,Ⅰヨハネ2:21,27).<復> ギリシヤ哲学を例に取れば,プラトン学派,ストア学派,エピクロス学派は,真理の倫理的な側面に強い関心を持ち,ピタゴラス学派や新プラトン学派は,真理の救済的な側面への関心を示している.そこでは人間の理性あるいは悟性は自律的なものと見なされ,認識の正当性は,もっぱら理性によって判断される.しかしながら,もしも理性によって普遍的な真理が把握できるとすれば,様々の論争は生じないはずであるが,現実はそうではない.すなわち,真理の規定の仕方が様々であることは,逆に,人間理性の不完全さを立証していることになる.さらに,哲学的に真理と見なされる数理的,科学的,歴史的な事実と,それらの関係原理のほかに,信仰の世界においては啓示を手がかりとして神学的に真理の規定が試みられる.<復> 2.神学の領域において真理の概念を総合的に取り上げた最初の人物は,アウグスティーヌスであったと見られる.彼によれば,真理は四重の層により成る.第1は,事実そのもの,いわば科学的な事実である.第2に,知覚される事象の背後にある原理,原則の類(美や知恵など).第3に,神を啓示するイエス・キリストと聖書.第4に,視聴覚において存在の確かめられる現実の事物を概念としてとらえたものである.しかしながら,彼の思考は,あまりにもギリシヤ哲学におもねった把握と考えられ,合理的な思考を超越した実存的な神経験も含めて,他の真理規定の方法が様々に試みられてきている.ことに旧約聖書によって代表されるヘブル的な真理の概念と,その表現方法は,必ずしも哲学的な論理に拘束されてはいないのである.<復> 3.聖書において「真理,真実」を指す代表的な単語は,旧約では[ヘブル語]エメス,新約では[ギリシャ語]アレーセイアである.<復> [ヘブル語]エメスは,おもに契約関係における忠実さを意味し,「真実,誠実」といった倫理的な意味合いが濃い.真理は,神に由来し(詩篇25:5,86:11),神の告知した内容を指す(詩篇19:9,119:160).神の前における人間の誠実さ,誓いの正しさも,真理に沿うものとして重要視される(創世42:16,ヨシュア2:12,エステル9:30).<復> [ギリシャ語]アレーセイアは,「隠されていない,明らかな」を意味する形容詞[ギリシャ語]アレーセースと関連があり,真理のより客観的な側面を強調する.それは哲学的な真理を指しても用いられたが,聖書における用法はさらに広い含蓄がある.ことに罪,贖い,救いといった思想と,イエス・キリストによる啓示,さらに倫理的な規範の設定といった点において特徴的な含意がある.聖書は,人間の理性と知恵のみによって真理を把握することが不可能であることを十分に承知した上で(参照Ⅰコリント1:20,21),なお真理の様々の側面を明らかにする.真理の源は,究極においては,神御自身(ローマ3:7,Ⅱコリント13:8)とそのことばであり(ヨハネ17:17,19,Ⅱコリント4:2,6:7),イエス・キリストはその具現者(ヨハネ14:6,ローマ15:8),また証示者である(ヨハネ18:37).聖霊は,キリストの昇天後,その働きを継続し(ヨハネ14:17,Ⅰヨハネ5:6),偽りの霊と対照される(Ⅰヨハネ4:6).罪の赦しの福音(ガラテヤ2:5,14,コロサイ1:5),教会の正しい教え(Ⅰテモテ3:15),また霊的な洞察(同2:4)が,真理と呼ばれる.真理を悟り(Ⅰテモテ2:4,4:3),それに従って行動する時(ヨハネ3:21,Ⅰペテロ1:22,Ⅲヨハネ3,4節),人はまことの自由と(ヨハネ8:31,32),霊的で建設的な力を与えられる(Ⅱコリント6:7,13:8,エペソ4:15).真理に基づいて生活している人は,神と人とに対して誠実であり,信頼できる(Ⅰコリント13:6,エペソ5:9.参照ヨハネ19:35,Ⅱコリント11:10).人は,真理に堅く立つべきである(Ⅱペテロ1:12).聖書では,いわゆる経験的知識も「真実」として肯定されるが(マルコ5:33,ローマ9:1),霊的に死んでいる人間は,真理に逆らう悪魔に惑わされ(ヨハネ8:44),不義をもって真理を阻み(ローマ1:18,25,Ⅱテサロニケ2:12),同じように真理に逆らう者となる(ガラテヤ5:7,Ⅱテモテ3:7,8,4:4).<復>〔参考文献〕Piper, O. A.,“Truth,”Interpreter’s Dictionary of the Bible, Vol.4, Abingdon, 1962 ; Thiselton, A. C.,“Truth,” The New International Dictionary of New Testament Theology, Vol.3, Zondervan, 1978.(石黒則年)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社