《5分で分かる》キリスト教的ヒューマニズムとは?

キリスト教的ヒューマニズムとは?

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キリスト教的ヒューマニズム…

ヒューマニズム([フランス語]ユマニスム)という語は19世紀より用いられたが,これは15,16世紀に用いられたルネサンスのユマニストという語に由来する.キリスト教的ヒューマニズム(ユマニスム)を,人間個人とその文化がキリスト者の生活において価値を持つという見解であるとするならば,ユスティノス(100年頃—165年頃)にまでさかのぼることができる.ユスティノスはその著『弁証論』において,ことばであるキリストは文化をその統治のもとに置いたと述べ,キリスト教真理の正当性を体系的に立証しようとした.彼はキリスト教的ヒューマニズムの内容を表現した最初の人物とも言えよう.このようなアプローチによって,信者が信仰の真理よりも人間的文化に魅せられることのないようにするとともに,彼らを世俗的生活から守ることができると彼は信じていた.<復> 中世のヒューマニズムの偉大さは,人間を知的世界に置き,その知性でもって非常に美しく神賛美をさせたことにあった.14世紀後半から15世紀にかけて,ペトラルカ(1304—74年)とその後継者たちは,後にユマニスムの名で認められる知的革新運動を推進した.ルネサンス運動のユマニスムは「人間による人間と世界の発見」と表現される一つの思想であり,方法であった.そこでは世俗的な存在の価値が受け入れられ,中世的な超世俗性は軽んじられた.ユマニストたちは,世俗生活の追求は許されるというだけでなく,価値あるものであると信じた.この世的生活に関するこのような新しい見方は,自然とその美の賛美に結び付いた.しかし,ルネサンスのユマニスムはもう一つの有意義な点から見られなければならない.ジャーク・ルフェーヴル・デタープル(1450年頃—1536年)らの活動は人文研究,すなわち,歴史,原典批評,文法,詩,文献学,修辞学を含む一般教養科目に向けられた.これらの学科目はギリシヤ,ラテンの古典をテキストに用いた.ヘブル,ギリシヤ,ラテンなど古代言語の研究は,聖書及び教父たちの著作の理解をより正確なものにした.ユマニストたちは古代原典を尊重し,また,古代人の生き方を再現することに努めた.サヴォナローラ(1452—98年)やツヴィングリ(1484—1531年)を含め,多くのキリスト者はユマニスムの世俗的アプローチに反対したが,ジョン・コレット(1466年頃—1519年),トマス・モア(1477—1535年),エラスムス(1469〔66〕—1536年)ら他の人々は古典の研究と歴史的批評の発達から大きな利益がもたらされることを感じ取っていた.エラスムスはオーリゲネース(185年頃—254年頃),ヒエローニュムス(347—419〔420〕年),アウグスティーヌス(354—430年),アンブロシウス(340年頃—397年)らの教父を師,指導者として仰ぎ,ユスティノスと同様,「キリストの霊はわれわれが考えているよりも広がっている」と考えた.ジャン・カルヴァン(1509—64年)でさえ青年時代ユマニスムの影響を受け,その方法は聖書注解にも用いられ,また,ジュネーブ宗教改革の冠とも言われるアカデミーにおいて,一般教育が重視されたことにも表れている.ユマニストたちにとっては,文献学的な新しい方法は聖書の研究に役立ち,古代の思想はよりよい統治とよりよい社会正義のための約束と思われた.ユマニスムの倫理的かつ社会的関心とキリスト教の内省的力との結合は,多くのユマニストたちに教会の再生の可能性の希望を抱かせた.キリスト教的ヒューマニズムの思想は,英国教会,スコットランド教会の穏健派,ドイツの敬虔派の中に生きている.20世紀においては,ジャーク・マリタン(1882—1973年)のような思想家の間に継承されていると言われる.<復> キリスト教啓示である聖書が人間性に特に光を当てていると信じる人々は,人間が神のかたちとして造られたこと,イエス・キリストが受肉して人間性をとられたこと,個人の人間性の価値をイエスが一貫して教えられたことを指摘する.神の人間に対する戒めを要約して,キリストは「心を尽くし,思いを尽くし,知力を尽くして,あなたの神である主を愛せよ」また「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」(マタイ22:37,39)ということに尽きると教えられた.キリスト教的ヒューマニストは,人間の自由の価値を発見した古代思想や,人間が良き生活から疎外されてきた理由を経済的,物質的なものに帰するマルクス主義のような,他の形態のヒューマニズムのあることを否定しない.しかしながら,これら他の形態のヒューマニズムは神が不在なので,自己中心的な個人主義,あるいは乱暴な集団主義に陥り,結果として人間性否定につながる危険性を指摘している.キリスト教的ヒューマニストは文化を価値あるものとするが,人間はキリストとの正しい関係に入る時にのみ,文化の担い手である本来の機能を果し得るものであると告白する.このような関係に入る時,人間は聖霊により新しく造られたもの,新しい創造(Ⅱコリント5:17,ガラテヤ6:15)として,人生のすべての領域において人間本来の使命を果し始めるものとされるのである.→世俗主義・世俗的ヒューマニズム,ルネサンス,啓蒙主義,キリスト教と文化,人間論.<復>〔参考文献〕Bouyer, L., Dictionnaire the´ologique.(森川 甫)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社