《5分で分かる》アミロー主義とは?

アミロー主義とは?

アミロー主義…

[英語]Amyraldinism.アミロー主義とは,フランスのソミュールに存在した改革派神学校(1599—1685年)で活躍したモイーズ・アミロー(Amyraut, Moi¨se, 1596—1644年)とその一派によって唱えられた神学思想を指す.<復> 主唱者アミローは,初めに法律を学んだが,J・カルヴァンの『キリスト教綱要』を読むに及んで神学研究に転じた.彼は,ソミュール改革派神学校で彼の師であるスコットランド出身の神学者J・カメロ(Camero, John)から強い影響を受けた.彼自身も師の跡を継いで,同神学校の組織神学教授となり(1633年),有能な神学者として活躍した.アミローを中心として,同神学校は,当時のフランス・プロテスタンティズムにおいて指導的役割を演じたのである.アミローの主要著作には,『予定論』([フランス語]Traite´ de la Pre´destination, 1634),『キリスト教道徳論』([フランス語]La morale chre´tienne, 6Vols.,1652—60)等がある.<復> アミローの神学思想で,最も特徴がありまたよく知られた主張は,予定論に関連した彼の「仮定的普遍救済主義」([英語]hypothetical universalism)である.アミローは,二重の聖定を主張する.先行する第1の聖定によれば,神はキリストを信じる信仰を条件としてすべての人を救おうと意志された.それで,神はすべての人のために死なせるという目的でキリストを世に遣わす決意をされたのである.この第1の聖定は,→普遍的/・・・←であるが同時に→仮定的性格/・・・・・←を持っている.この意味において,「仮定的普遍救済主義」と呼ばれるのである.第1の聖定に第2の聖定が後続する.確かに,→仮定的には/・・・・・←信じるのであればすべての人が救われるのであるが,→事実的には/・・・・・←罪による腐敗のためにすべての人は道徳的無能力に陥り,自分自身の力では信じることができない.この点を予知して,神は第2の聖定を置かれる.第2の聖定によれば,神は,恵みにおいてある者たちには聖霊によって信仰を与え,彼らを救いへと選び,義においてある者たちを滅びのうちに遺棄することを意志されたのである.この第2の聖定は,→特定的/・・・←であると同時に→無条件的性格/・・・・・・←を持っている.要約すれば,第1の聖定は仮定的あるいは理念的普遍救済主義であるのに対して,第2の聖定は事実的特定者救済主義と特徴付けることができよう.<復> アミローの神学思想は,調停的性質を持っている.アミローは,厳格な改革派正統主義とアルミニウス主義との総合,しかもアルミニウス主義に陥ることなく,その総合を成し遂げようと企てたのである.この点は,既述の二重の聖定概念にも明確に反映している.後続の第2の聖定概念において,ドルト信仰規準の立場が堅持され,正統的改革派の二重予定の真理が告白されている.アミローの教説は,1637,44,59年の三度にわたってフランス改革派教会全国総会において問題とされながら,異端として断罪されなかった.その理由は,第2の聖定概念に示されている見解が彼の中に存在したからである.しかし同時に,アミローの教説は,多くの改革派神学者たち,例えば,フランスではモリナェウス(Molinaeus),オランダではリヴェー(Rivet, A.),マレーシウス(Maresius, S.),シュパンハイム(Spanheim, F.),スイスではハイデガー(Heidegger, J.)等によって批判された.それは,特に,先行する第1の聖定の概念にアルミニウス主義への親近性が洞察されたからである.スイスでは,アミロー主義は,ハイデガーやトゥルレッティーニ(Turrettini, F.)等によって起草されたスイス一致信条(Formula Consensus Helvetica,1675年)によって信条的に断罪された.近代においても,チャールズ・ホッジ(Hodge, C.),ウォーフィールド(Warfield, B.),シェッド(Shedd, W.)等は,アミロー主義に批判的に対峙する.<復> 教理史的研究の最近の状況は,アミロー再評価の傾向を示している.アミローがスコラ的正統主義神学を批判し,カルヴァンへの復帰を主張した点が注目され,アミローこそ,本来のカルヴァンの精神を反映していると評価されるのである.このようなアミロー再評価の立場に立つのは,モルトマン(Moltmann, J.),アームストロング(Armstrong, B. G.)などである.しかし,一般的に言って,正統的改革派神学はアミロー主義に対して批判的立場を堅持している.→予知・予定論.<復>〔参考文献〕B・B・ウォーフィールド『救に於ける神の計画』活水社,1956;Armstrong, B. G., Calvinism and the Amyraut Heresy, Madison, 1969 ; Moltmann, J., “Pra¨destination und Heilsgeschichte bei Moyse Amyraut,” Zeitschrift fu¨r Kirchengeschichte, 65, 1954.(牧田吉和)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社