《5分で分かる》儒教とキリスト教とは?

儒教とキリスト教とは?

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儒教とキリスト教…

1.儒教の歴史.<復> 儒教は中国の孔子(前551—前479年)の思想・学問に始まる.当時は世間一般が周の文化の復興を目指していたと言われる.従って孔子に限らず全体が敬天思想を中心として「礼」を重んじ,政治的にも社会的にも忠実に伝統を継承することに専念していた.とりわけ孔子の教学がその働きに際立って貢献することとなり,ついには前130年頃に儒教の国教化が実現するに至った.<復> 戦国時代の九学派は,基軸に道家・儒家・墨家・法家がある.山田慶児によると,道家は反社会性を持ち利己的であり,これは墨家の大我性・利他主義に対立する.他方儒家は慣習を重んじ個人主義的であるが,法家の官僚的・法治主義に対立する.以上の事柄を倫理・法・政治・秩序の観点から考察すると,この四学派は隣接学派に対してそれぞれ次のような共通面と対立面を持つ.すなわち,倫理に関しては道家が自愛を説くのに対して,墨家は兼愛を説く.しかし両者の真中にあって,儒家は大家族制度のもとに家族道徳的な愛を説いたにすぎなかった.法に関しては儒家と法家が対立的であり,法家の成分化された法に対して,儒家のそれは非成文化の「礼」を説いた.政治に関しては,墨家の民主的権力主義に対立して道家の無政府主義があり,その間に入るものとして法家の専制的権力主義がある.儒家はこれらの他学派の主張を臨機応変によく吸収し,常に中庸の道を選び取った.秩序に関しては,法家の作為的秩序に対して儒家のそれは秩序の欠如,つまり漢帝国のもとにあって「儒家は農業社会の自然性に立脚し,家族倫理以外にいかなる理論的支柱をももたなかった」と言われる.両者の間には道家の自然(じねん)的秩序が介在する.以上のように,儒家は仏教を雑家(九学派の一つ)がしたように十分に吸収しながら,宗教として漸次発展していったと考えられる.<復> J・M・キタガワはゲラルダス・ヴァン・デル・レーウの類型学的構造追求を紹介しているが,それによると諸宗教のこの世に対する三つの態度は創造的支配・理論的支配・服従であり,また諸宗教の追求する三つの異なる対象は人間・この世・神である.さらに各歴史的宗教をそれぞれの特徴によって位置付けるとすれば,キリスト教は「愛の宗教」,仏教は「空(くう)と慈悲の宗教」,ユダヤ教は「意志と服従の宗教」,ヒンズー教は「無限追求と禁欲主義の宗教」,ギリシヤのある宗教は「旋律と様式の宗教」,ゾロアスター教は「苦闘の宗教」,そして儒教は「没我の中で思想を自由に遊ばせる宗教」と解説している.<復> M・ヴェーバーは,儒教の本質について端的にそれは倫理であると明言しており,仏教と比較して内現世的な俗人の人倫であったとする.この内現世的性格とはヴェーバーによれば,儒教の徹底した立場である「かつて存在したままのこの世の事物にのみ関心があった」ことから来る.実に儒教は家族倫理の域を出ず,「礼」を基盤としてそこに繰り広げられる家族主義の信仰が展開されていると見ることができる.孔子の「礼」思想が後継者によって「仁」等に受け継がれ,敬天思想のよりどころを与えつつ発展したのである.<復> 2.日本の儒学.<復> 儒教は韓国や日本に少なからず影響を与えてきた.日本における儒学は江戸時代初期に宗代の儒教を取り入れたものであって,宗学・朱子学と呼ばれる.特に徳川家康の学問好きが功を奏して,第5代将軍綱吉の時代には,朱子学は完全に幕府の保護を受けるようになった.阿部吉雄は儒学変遷の特質を3点挙げている.(1)江戸の儒学は多彩を極め,日本独自の学派が輩出した.(2)日本の伝統文化と密接にかかわり,武士道の形成,庶民の教育,神道・国文・歴史学等,多岐にわたって発達を遂げた.(3)儒学は国家統一の原理として活用された.<復> 3.キリスト教との対比.<復> キリスト教にとって儒教は教理的に相反するものがある.前者の罪観・救済観の厳しさに対して,後者は人間の善を信じ楽天主義的人間観に立ち,現世肯定を主張するのみである.さらに儒教の家族倫理はキリスト教の倫理とどの点において相違するか,この問題については多弁を弄するまでもなく明白なことで,イエスは隣人愛を説く時,「よきサマリヤ人のたとえ」(ルカ10:30‐37)で明らかなように,狭い民族的な偏愛や理屈を立てて愛を拒否する言動を戒めている.従って単に家族倫理だけの理念を一切の指導原理とする儒教とは,とうてい宗教としての次元を異にする.しかしながら宣教論的には,ここにこそ問題が伏在しているわけである.日本人における家族中心主義は,教会形成における誤った家族主義となる場合がある.また他面において個人の救いに関して家族の同意が必要だとの配慮を牧会者は常に考えの中に入れておかねばならない,といった気配りが要求される.しかしこれからのキリスト教はこのような日本文化の一面を積極的に評価し,批判的に考察しながら前向きに取り組むようにすべきである.→仏教・ヒンズー教とキリスト教,日本の宗教,比較宗教,諸宗教とキリスト教.<復>〔参考文献〕『中国思想1』(講座東洋思想2)東京大学出版会,1967;J・M・キタガワ編『現代の宗教学』東京大学出版会,1970;M・ウェーバー『儒教と道教』創文社,1971.(久保田周)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社