《5分で分かる》誓約,宣誓とは?

誓約,宣誓とは?

誓約,宣誓…

1.誓約の重要性.<復> 人間存在はことばから切り離し得ず,人間社会は,その構成員各自が真実を語り,約束を守ることを前提として成り立つ.大切な宣言の真実性が確認できない状況では,ことばやそれに伴う行為による誓約により確認しようとする.<復> 2.旧約聖書に見る誓約.<復> (1) 人間の誓約.誓約をなす当事者の間に主なる神を証人とし,「神が私とあなたとの間の証人である」(創世31:50)との様式を取ったり,誓約を破れば自らの上にのろいを受ける覚悟をする形をもって誓いの重みを増したりする(Ⅰサムエル20:13).偽証や,誓約の破棄は,神の御名の誤用であり冒涜である(出エジプト20:7,レビ19:12).例えば,バビロンと結んだ契約を破れば,さばきを受ける(エゼキエル17:13‐19).また偶像を指してなされる誓約は,大きな罪である(エレミヤ5:7,12:16).<復> (2) 神の誓約.主なる神は,「わたしが生きており」(民数14:21)と,御自身を指して誓約をされる(参照アモス6:8).創世記に見る主なる神の族長たちへの約束に含まれる基本的な要素,例えば民(創世12:2),土地(同13:15),契約(同17:7)は,申命記の奨励においては,主なる神の誓約をもって再度強調されている(申命8:1,18).<復> 後代においては,様々なタイプの誓約が蔓延する傾向があったが,こうした中で,誓約の過度な使用を制限しようとする努力もなされた(ベン・シラ23章9‐13節).<復> 3.新約聖書に見る誓約.<復> マタイ5:33‐37に,誓約についてのイエスの決断と宣言を見る.そこにおいてイエスは,旧約聖書の偽証の禁止(レビ19:12)と,誓願を果せとの命令(民数30:2以下,申命23:21,23)を引用し,それとの対照で,「決して誓ってはいけません」(マタイ5:34)と全面的に誓約を禁じ,天,地,エルサレム,自分の頭のいずれを指して誓ってもいけないと強調しておられる(5:34‐36).当時のユダヤ人たちが日常生活でなしている多様な誓約において神の御名の誤用を避けているとの逃げ口上を鋭く批判しておられる.またマタイ23:16‐22においても,同様な厳しさで,祭壇,神殿,天を指して誓う者は,その誓約において,これらのものに権威を与えている神御自身を指して誓っているのだと,律法学者やパリサイ人の過度の微細な区別を批判しておられる.誓約は,人が語ったことについての真実を要求するが,そのことによって日常生活における偽りを前提としている.旧約聖書は,偽りと戦うため誓約を用いているが,偽りは,偽証や神の御名の誤用の形で忍び込む.イエスは,神の御名に訴えることなく,「はい」と「いいえ」をもって誓いに代え(マタイ5:37.参照ヤコブ5:12),誓ったことばだけでなく,すべての発言を全能なる神の御前に置かれる.「弟子の語る言葉の一つ一つは,真実以外のものであってはならないのであって,誓約によるいかなる保証も必要ないのである.誓約は,明らかに彼の語る生活以外のすべての言葉を疑惑の暗闇の中に入れてしまう」(D・ボンヘッファー『キリストに従う』).イエスは,旧約聖書の意図にではなく,その誤用や曲解に反対しておられるのである.<復> 旧約聖書と同様,新約聖書においても,神の誓約についての言及が見られる.ヘブル6:13以下では,創世22:16,17の神のアブラハムに対することばを引用しながら,人間が自分よりすぐれた者を指して誓うのに対して,神は御自身を指して誓われることを明記している.アブラハムの生涯は,神が御自身にかけて誓われた誓約により頼むものである.創世15:10,17に見られる表現をもって誓いを果し行く神,このお方をアブラハムは信じて進む.神が神御自身を指して誓われる,いわば神と神との誓いである.父なる神と子なる神の誓い.ここにアブラハムの生涯の基盤がある.「誓いをもって保証された」(ヘブル6:17)のである.この救いの御計画は変りようがない.「神が『光よ.あれ.』と仰せられた.すると光ができた」(創世1:3).この神は偽ることがない.偽ることができない.この事実によって励ましを受け,「安全で確かな錨」(ヘブル6:19)により守られる.この確かな救いに生かされるゆえに,ヘブル6:4以下の厳しい戒めに耳を傾けつつ,御計画をすべて実現される方の目的に従い,イエスにあって進む道が開かれている.→約束,契約・契約神学.<復>〔参考文献〕D.ボンヘッファー『キリストに従う』新教出版社,1966;Link, H. G., “Swear, Oath,” The International Dictionary of New Testament Theology, Ⅲ, Paternoster, 1978 ; Kline, M. G., By Oath Consigned, Eerdmans, 1967.(宮村武夫)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社