《5分で分かる》ハイデルベルク信仰問答とは?

ハイデルベルク信仰問答とは?

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ハイデルベルク信仰問答…

[ドイツ語]Catechismus, oder Christlicher Underricht, wieder in Kirchen und Schulen der Churfu¨rstlichen Pfalz getrieben wirdt. Gedruckt in der Churfu¨rstlichen Stad Heydelberg, durch Johannem Mayer;[英語]Heidelberg Catechism.<復> この信仰問答書に付された名は,これが書かれ,最初に出版された町ハイデルベルクから来ている.この町はプファルツ選帝侯の城のあった所で,ネッカー河沿いの美しい町である.ルターは短期間ではあるが1518年にこの町を訪問したことがあった.また,メランヒトンはプファルツの出身である.<復> 1546年にプファルツ選帝侯フリードリヒ2世が自分の領地にプロテスタント宗教改革を導入した.彼のもとに,この地方にアウグスブルク信仰告白が導入され,信仰の立場はルター派となった.ところが,ハイデルベルクに多くのプロテスタントの学者たちが集まるようになると,ルター主義者,メランヒトン主義者,カルヴァン主義者,ツヴィングリ主義者によって聖餐論論争が繰り広げられた.地区総監督ティレマン・ヘシュシウスは厳格なルター主義を導入するとともに,ツヴィングリの立場を保持するクレビッツ執事を除名にしたのみならず,聖餐式の場で彼と杯のことで争ったこともあった.この出来事がハイデルベルク信仰問答書作成の直接の原因の一つとなった.論争は選帝侯オットー・ハインリヒの治世下の1556年から59年にかけて激化した.<復> 1559年にプファルツ選帝侯となったフリードリヒ3世は,この争いを終結させるためにメランヒトンに相談し助言を得た後,先に問題を起した2人を免職にし,公開討論会を催し,ついにカルヴァン主義の聖餐論の立場を取るに至った.彼はまだカルヴァン主義が公認されていないドイツにおいてそれを信仰告白した,最初の勇気ある貴族であった.<復> 彼は前任者が設立したコレギウム・サピエンティアエを再組織し,1561年にオレヴィアーヌスに代えてツァハリーアス・ウルジーヌスを責任者として迎えた.ウルジーヌスはメランヒトンの弟子であり友人でもある.フリードリヒは自分の治世に論争を終らせようと願い,信仰問答書あるいは信仰告白の作成をウルジーヌスとカスパル・オレヴィアーヌスに命じた.(オレヴィアーヌスは一時コレギウム・サピエンティアエの教授であり責任者であったが,後に聖ペテロ教会の主任牧師になり,その後,聖霊教会に移った).彼らはドイツ出身で,改革派信仰のゆえに追放されていた人材であり,スイスとフランスの改革派教会にも通じた,教理問答書作成のためにはふさわしい人々であった.<復> このハイデルベルク信仰問答書は,ウルジーヌスのラテン語草案とオレヴィアーヌスのドイツ語草案を土台にして作成された.前者の明晰性と後者の敬虔の賜物がうまく溶け合ったカテキズムになっている.彼らは草案作成に当って,宗教改革者たち,特にカルヴァン,ブリンガー,ア・ラスコ(ウァスキまたはラスキ)などのカテキズムを参考にした.<復> 1562年の12月にフリードリヒ3世はハイデルベルクに聖職者会議を招集し,草案の検討と改訂に当らせた.手続きを終えた後,1563年初めにドイツ語で上記表題通りの信仰問答書が出版された.これには1563年1月19日火曜日の日付が記された選帝侯の短い序文が付されている.こうして,青少年の信仰教育のためにプファルツの教会と学校で用いられるカテキズムができ上がったが,同年には早くも改訂がなされ,第3版では第80問にローマ・カトリック教会のミサ否定が加えられた.これはその頃終りに近付いていたローマ教会のトリエント公会議を意識して,改革派の聖餐論を明らかにするための追加であったと考えられる.人間の悲惨,救い,感謝の3部からなり,129問答から成るこの信仰問答書は,その後各国語に翻訳され今日まで広く愛用されている.→改革派,カルヴァン主義,ルーテル教会,聖餐論.<復>〔参考文献〕Schaff, P., The Creeds of Christendom, Vol.1, Harper & Brothers, 1931; M’Clintock/Strong (eds.), Encyclopedia of Biblical, Theological and Ecclesiological Literature, Vol.4, Harper & Brothers, 1896; Klooster, F. H., The Heidelberg Catechism, Origin and History, Calvin Theological Seminary, Syllabus, 1981.(泥谷逸郎)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社