《5分で分かる》異端とは?

異端とは?

異端…

[ギリシャ語]ハイレシス,[ラテン語]ハエレシス.この原語は,新約聖書においては特定の教えを有する宗派,分派に用いられている.例えば,サドカイ→派/・←(使徒5:17),パリサイ→派/・←(使徒15:5),クリスチャン(「異端」使徒24:14,「宗派」使徒28:22),教会内の分派(Ⅰコリント11:19,ガラテヤ5:20)等.キリスト教教理の面で用いられる時の用法は,Ⅱペテロ2:1に見られる.「あなたがたの中にも,にせ教師が現われるようになります.彼らは,滅びをもたらす異端をひそかに持ち込み,自分たちを買い取ってくださった主を否定するようなことさえして,自分たちの身にすみやかな滅びを招いています」.このように,異端は啓示された真理を否定し,誤った教えを主張する.そしてついにキリストを否定するに至るのである.<復> 異端の発生に伴って,正統的信仰の表明のために信仰規準が形成され,さらに信条が作られていった.初代教会の異端としては,ユダヤ主義(クリスチャンになるためにはユダヤ人の慣習を守り,ユダヤ人のように生活しなければならない,とする.パウロはガラテヤ人への手紙でユダヤ主義と対決している),初期のグノーシス主義(キリストが肉体をとって来られたことを否定する.参照Ⅰヨハネ2:22,4:2,3)などがある.2世紀のマルキオーンは,キリスト教のユダヤ教化,律法主義化に対抗して,旧約の神と新約の神の違いを説き,旧約を否定し,正典としてルカの福音書(1,2章を除く)とパウロ書簡(牧会書簡を除く)を編纂した.これにより教会の正典の範囲が問われることとなり,教会は旧約聖書を正典とし,現在の新約聖書27巻を正典として結集するに至った.同じ2世紀の後半,小アジヤのモンタノスは,聖霊の働きを強調し再臨と終末が近いことを熱烈に説いた.この運動はアフリカにまで広がり,厳しい禁欲主義になっていった.テルトゥリアーヌスもこの運動に加わっている.マルキオーン主義はパウロの教えを極端に解釈し,モンタノス主義は聖霊の働きを一方的に強調することによって異端に陥った.<復> 4世紀になると,キリストの神性と三位一体の教理を巡って,アリウス主義,アポリナリオス主義,ネストリオス主義,エウテュケース主義などの異端が続出し,これらに対しニカイア信条を中心とする正統教理が明文化されていく.さらにキリスト教がローマ帝国の公認宗教となり国教化されるに及んで,異端は法律で罰せられるようになり,異端者への迫害が行われるようになった.5世紀になると,アウグスティーヌスは『異端論』を著し,88の異端について論じた.この中に異端のほとんどの類型が明らかにされている.<復> 中世のローマ・カトリック教会は,教会の権威に従わない者を異端として処罰した.例えば12世紀には,ローマ教会を揺がす二つの運動(ワルドー派,カタリ派)が起った.ワルドー派は,リヨンの豪商P・ヴァルデス(ワルドー)が回心して自分の富を貧しい者たちに分け与え,キリストの模範に従って生活し,聖書を説き明かしたことに始まるものである.当初ワルドー派は教会の承認を受けたが,平信徒の説教が禁止され異端とされた.たとえ教理的に誤りがなくても,教会の権威と秩序を乱し聖職者を批判する者は,異端とされたのである.カタリ派は,マニ教に類似した霊肉二元論で聖書を解釈し,キリストの受肉を否定し,厳格な禁欲主義的生活を送っていた.この派は明らかに聖書的信仰から逸脱していた.<復> 宗教改革の先駆者たち,ウィクリフ,フス,サヴォナローラも異端とされた.彼らは教会の権威よりも聖書の権威を上位に置くことによって宗教改革への道備えをした.ルターも,内容原理としての「恵みのみ,信仰のみ」,形式原理としての「聖書のみ」によって教会を革新しようとしたが,ローマ教会によって異端として破門された.以来ローマ・カトリック教会とプロテスタント教会は対立する二つの勢力として20世紀に至った.しかし,カトリック教会がプロテスタントのクリスチャンを「分かたれた兄弟たち」と,第2ヴァチカン公会議(1962—65年)以降呼び始めることにより,関係の回復が模索され始めた.<復> 宗教改革以後も異端的グループはどの時代にも存在したが,特に19世紀北米で起った末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)と,ものみの塔聖書冊子協会(エホバの証人)は,日本でも盛んに活動しており,正統的キリスト教への挑戦となっている.また,第2次世界大戦後韓国の文鮮明が創始した世界基督教統一心霊協会(統一協会)は,聖書と東洋思想を混合した異端である.<復> 異端は教会の病める部分から始まる,と言われる.クリスチャンは「自分自身にも,教える事にも」(Ⅰテモテ4:16)心を配るべきである.→宗教裁判,破門.<復>〔参考文献〕『カラーキリスト教の歴史』いのちのことば社,1979.(勝原忠明)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社