《5分で分かる》教会教父とは?

教会教父とは?

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教会教父…

[英語]Fathers of the church,[ドイツ語]Kirchenva¨ter,[フランス語]Pe`res de l’Eglise,[ラテン語]Patres Ecclesiae.教会教父とは一般に古代教会の著者たちのうち,(1)教理の正統性,(2)聖なる生活,(3)教会の公認,(4)古代に属する,という四つの基準に当てはまる者を言う.これらをもう少し説明すると,(1)の基準は使徒の教えを保持しているということである.(2)は信仰と生活が一致している意味で言われている.(3)は教会の明文化された公認を言うのではなく,教会の公文書や宣言等の中に信仰と教理の証人として引用されていることを示す.(4)は,西方教会の場合はグレゴリウス1世教皇,東方教会ではダマスコのヨーアンネース以前の,教父と認められている著作家に限られる.従って,この教父たち以後の著作家たちは教父とは呼ばれないのである.厳密にはこれらの四つの基準に合う著作家だけが教父と呼ばれ,どの一つでも欠けているならば教父とは呼ばれず,教会著作家と呼ばれる.<復> しかし,これら四つの基準は相対的な意味で用いられているのであって,教会教父の述べる教理すべてが明瞭で正統的であるというわけではない.初代教会では父,教父を意味する[ギリシャ語]pate~rは教師,特に司教([英語]bishops)を指す語として用いられていた.325年のニカイア総会議以後は,この会議に参列した318名の司教たちはみな特別の意味で「父」と呼ばれるようになった.さらにその信条を正統に解釈する人々も教父と呼ばれるようになった.西方教会ではヒッポの司教アウグスティーヌスが,司祭であるヒエローニュムスを「父」と呼んでいる.レラーンスのヴィンケンティウスの頃から,教父はもはや司教に限定されず,今日用いられているような教父の概念ができ上がっていた.4世紀の終り頃からこの「父」という語はさらに限定された意味で用いられるようになった.すなわち,教理に関して権威を持っていると教会に認められた著者を指す言葉になったのである.それゆえプロテスタントの立場から言えば,聖書の絶対的権威,ただ信仰にのみよる義,信徒の万人祭司の教理などを彼らの中に探すのは困難である.教会の伝承を高く評価し,功績を重んじ,非常に儀式的,禁欲的な傾向が強く,ローマ・カトリック教会やギリシヤ正教会型の″正統性″に発展する思想の持主も多いからである.こういうわけで,教会教父と呼ばれる者たちは非常に多様性に富むと言わなければならない.<復> 時代的に言えば,教会教父は使徒教父後から325年のニカイア総会議以前の教父たちと,ニカイア総会議以後の教父たちに分類される.一般にギリシヤ正教会ではダマスコのヨーアンネースをもって,またローマ教会はグレゴリウス1世教皇をもって最後の教会教父とする.おもだった者は以下の通りである.<復> まず,ニカイア会議以前の教父たちを紹介しておこう.殉教者ユスティノス,ヘルミアス,コリントのディオニューシオス,ヘゲシッポス,タティアノス,アテーナゴラース,テオフィロス,エイレーナイオス(イレナエウス),ミヌキウス・フェーリクス,アレキサンドリアのクレーメンス,テルトゥリアーヌス,ヒッポリュトス,オーリゲネース,キュプリアーヌス(キプリアヌス),大ディオニューシオス,グレゴリオス・ホ・タウマトゥルゴス,ウィクトーリヌス,アルノビウス,ラクタンティウス.ニカイア会議以後のおもな教父は以下の通りである.カイザリアのエウセビオス,ヒラリウス,アタナシオス,大バシレイオス,エルサレムのキュリロス,ナジアンゾスのグレゴリオス,ニュッサのグレゴリオス,アンブロシウス,クリュソストモス,ルフィーヌス,ヒエローニュムス,テオドーロス,アウグスティーヌス,アレキサンドリアのキュリロス,テオドーレートス,レオ1世,ヴィギリウス,グレゴリウス1世,セビリヤのイシドールス,ベーダ,ダマスコのヨーアンネース.<復> 前述のように,教父たちが書いていることすべてが正統と言うわけではない.それゆえ彼らの書物を用いるに際して常に念頭に置いておくべきことは,聖書だけが信仰と神学の唯一の基準であるということである.→使徒教父,聖書の権威.<復>〔参考文献〕小高毅『古代キリスト教思想家の世界—教父学序説』創文社,1984;Schaff, P., History of the Christian Church, Vol.3, Eerdmans, 1960 ; M’Clintock/Strong (eds.), Cyclopedia of Biblical, Theological, and Ecclesiastical Literature, Harper & Brothers, 1896.(泥谷逸郎)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社