《5分で分かる》比較宗教とは?

比較宗教とは?

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比較宗教…

初代教会の時代から,キリスト者はギリシヤやローマの諸宗教と出会い,対決を含めいろいろな影響を受けながら,神学を発展させ,教会を組織・発展させ,宣教の働きを担ってきた.この宣教の働きは,今日も世界の各地で継続している.歴史を支配し,人を含めすべての被造物を支配している唯一の神を信じるキリスト者にとって,キリスト教以外の諸宗教をどのように理解すべきであろうか.この問が「比較宗教」の原点である.この問題は長い間,一般啓示の問題として神学の領域の中で扱われてきた.19世紀後半になって宗教学が科学の領域の中で扱われるようになると,キリスト教も世界の諸宗教の一つとして,その類似点や相違点の比較研究の対象となってきた.神学の領域における比較宗教と,社会科学としての宗教学の領域における比較宗教の差異は,現代のパラダイム論において取り扱われているが,異なったパラダイムを比較する共通の土台となる領域が現在はまだ発展していない.従って現在のところ,諸宗教を比較しようとする場合,神学の領域における比較か,または社会科学の領域における比較かを明確にしておく必要がある.<復> さて,社会科学の領域においては,F・マックス・ミュラー(1823—1900年)以来,宗教学に比較の手法が取り入れられた.この場合,比較宗教とは,(1)世界中の宗教(キリスト教を含む)を,自然科学的な原因—結果(因果律)を土台として研究し,(2)研究の対象としての諸宗教に関する諸事実(Facts)を解釈を加えず収集し,(3)共通する事実を土台として比較(comparison)を行い,(4)比較の結果,宗教の本質・起源・機能・目的などの解明を行う.この手法は,比較によって自分の信じている宗教や,他宗教及び宗教一般に関してもよりよく知ることができるという暗黙の了解に立っている.この比較の手法に関しては,社会科学者の中にも,(1)比較しようとする人の意図や目的によって影響されすぎないか,(2)比較対照する宗教の諸事実を,事実としてのみ収集できるのか(収集した宗教的事実は,宗教的信仰を持つ者と持たない者との間で同じ意味を持つのか),(3)宗教的事実を支える歴史的文化的状況をどこまで理解した時に,比較をする材料となり得るか,等の基本的な問が残る(参照「比較研究の反省」〔「理想」1978年4月号〕理想社).従って,ミュラーの手法の中に,キリスト教的歴史観と創造論に基づいた宗教観が内在していると見ることができる.一方,神学的領域から見た比較宗教とは,(1)世界中の宗教は神の創造のわざとしての自然啓示であるとし,(2)研究の対象としての諸宗教を通しての神の語りかけの収集を行い,(3)収集した神からの語りかけを,特別啓示であるキリスト教を土台として比較し,(4)比較の結果として,神の共通の語りかけや語りかけの強弱・真偽などを判別し,信仰を深めるのに役立たせる.この手法の前提となるのは,自然啓示を研究してそこから神への探究を始めることはよいことであり,諸宗教の比較により特別啓示をよりよく理解でき,信仰を深めることができるという暗黙の了解である.この手法の問題点としては,(1)人間の営みとしての研究に伴う罪や腐敗をどのように避けることができるか,(2)罪人の中に「神の像(かたち)」が残されているにせよ,罪人が偶像を求める宗教活動の中に,特別啓示を補うものが含まれるのか,(3)一般啓示としての宗教をどこまで理解した時に,特別啓示と比較し得るのか,などの問がある(参照「比較宗教」『神学辞典』聖書図書刊行会).<復> 比較宗教を取り扱う時,神学の領域と社会科学の領域とが混乱すると,この混乱の結果として大きな問題が生じる.(1)社会科学における相対性をキリスト教に対する挑戦と見て,社会科学の営みを″罪″とするならば,これは社会科学の営みを神学の領域で扱おうとするがゆえの混乱であり,そこでは社会科学的比較は行い得ない.(2)キリスト教の唯一神信仰や絶対性,またその霊的な側面を,社会科学的な宗教的事実(Facts)として扱えないと考えるならば,これは宗教の営みを社会科学で割り切れる分野でのみ推し量ろうとするがゆえの混乱である.ここでも諸宗教の比較は行い得ない.従って,宗教としてのキリスト教と宗教としての種々の他宗教とをそのまま比較し得る新パラダイムはまだ形成されていないが,信仰者が,他宗教や社会科学の中にも神の創造のわざを認め,また社会科学者が,宗教としてのキリスト教や他宗教を丸ごと宗教的事実(Facts)として認める時,新しいパラダイムが生れる可能性はある.それまでは,神学の領域においても,社会科学の領域においても,それぞれの領域の主要目的(信仰の向上,宗教の知的把握と活用)に沿って比較宗教を行うことが望ましい.→諸宗教とキリスト教,宗教(神)学,啓示論.(金本 悟)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社