《5分で分かる》コプト派とは?

コプト派とは?

コプト派…

1.語源.<復> 「コプト」とは,古代ギリシヤ人がエジプト人をアイギュプトス(Aiguptos)と呼び,アラビア語で「ギュプト→コプト」と転じたことからくる.広義のコプト派は「エジプトにおけるキリスト教会」であるが,狭義には「迫害期から4—5世紀の神学論争期を経て,修道運動や民族運動とのかかわりを保ちつつ独自に形成されてきたエジプト人教会」を指す.<復> 2.背景.<復> アレキサンドリアは,ローマ帝国第2の都市で,地中海,アラビア,インド,アフリカ海岸の貿易中心地であった.最盛期の人口は百万人を数え,原住民のほかマケドニア人,ギリシヤ系移住民,ユダヤ人が住んだ.約70万巻の世界随一の図書館を持つギリシヤ文化,インドなどの東方文化,ユダヤ文化の合流点であった.さらに70人訳聖書(セプチゥアギンタ)やユダヤ人哲学者フィローンの存在は,エジプト諸都市における離散のユダヤ人の伝統を立証する.<復> 3.起源.<復> エジプトはヨセフとマリヤが幼子イエスを連れて避難した地である(マタイ2:14).また,使徒2:10はペンテコステの国名にエジプトを加え,同18:24は同地出身のアポロに言及する.<復> コプト派の人々(ウプティ)の伝承によれば,「使徒」マルコが40年代にエジプトで宣教した.チェスター・ビーティ・パピルスやオクシリンコス・パピルスなどの聖書写本は,エジプトにおけるユダヤ・キリスト教の宣教を伝統の古さから立証する好例と言える.アレキサンドリア在住のギリシヤ語を話すユダヤ人への宣教から始まり,ギリシヤ人やエジプト人,ナイル河畔のエジプト人へと福音が伝えられ,長い迫害期を耐えてその根を下ろした.コプト派の3種の暦のうち,迫害期の284年にできた「殉教者の教会暦」が今日に至るまで使用されている事実は,迫害期の重要視と同派成立の時期を示唆する.<復> 4.歴史.<復> 正統派神学者と並んでグノーシス派の指導者と活動が顕著である.エルサレム,ローマ,コンスタンティノポリス,アンテオケと並ぶ主教座がアレキサンドリアに確認できるのは,デーメートリオス(デメトリオス)(189—231〔232〕年在位.マルコから第12代目の主教)以後であるが,同時代にパンタイノス(194年以降〔200年頃〕没)によってカテケーシス(教理)学校が創設された.クレーメンスやオーリゲネース(254年頃没)の登場によって「アレキサンドリア学派」の形成を見た.また,コプト派は修道制の揺籃の地である.3世紀末のアントーニオスの「砂漠のエジプト人隠修士制度」は,4—5世紀のカッシアーヌスやカッパドキア三教父に受け継がれた.<復> 同派はアタナシオスとアリオス(アリウス)との論争(4世紀),キュリロスのネストリオス(ネストリウス)派攻撃(5世紀),カルケドン総会議の論点となったキリスト論論争の主要な舞台でもあった.この総会議で,カルケドン支持のビザンチン派(皇帝派〔メルキタイ〕)と,カルケドンを拒否するキリスト単性論支持派の修道運動や民族運動の色濃いグループとに分れた.640年には,百教区に単性論派が約3百万人,カルケドン派が20万人いたと推定される.<復> 7世紀のイスラム国教化により,以後は弾圧と融和を繰り返して受けた.ある時期にイスラムへの大規模な集団改宗が生じたが,これはビザンチン教会への反発を一因としたと言われ,それほどに歴史的な葛藤との関連が深い.11世紀末からの十字軍時代は,キリスト教会とイスラムの両陣営から疑惑を受けた.13世紀以降も受難の道が続き,16世紀のオスマン・トルコによる支配開始時期には信徒は住民の10分の1程度,主教座も12と減じていた.同派の再興は,19世紀半ばの改革を待たねばならなかった.1975年現在,現総主教は117代目のシュヌーダ3世であり,コプト正統教会は約660万の信徒数を数え,修道制の色濃い伝統を守っている.<復> 5.言語と美術.<復> コプト語が完成したのは3,4世紀であるが,教会が聖書翻訳を中心として独特のコプト文学を形成した.美術の素材はギリシヤ世界から取られているが,美術を通しての信仰告白として,コプト美術が修道運動に付随して花開く.建築美術も古代エジプトの神殿様式を下地にしてキリスト教化されている.そのほか,織物,彫刻,壁画,板画,民芸品などにコプト特有の精妙さが見られる.→アレキサンドリア学派,カルケドン総会議.<復>〔参考文献〕「エジプト」『世界キリスト教百科事典』教文館,1986;久山宗彦『神の文化と和の文化』北樹出版,1985;村山盛忠『コプト社会に暮らす』岩波新書,1974;Atiya, A. S., History of Eastern Christianity, Millwood, 1980.(岩本助成)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社