《5分で分かる》神人協力説とは?

神人協力説とは?

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神人協力説…

神人協力説([ギリシャ語]Synergos,共に働くこと)は回心における神と人の協力活動の教理のことである.神人協力説は神の主権と人間の道徳的責任という二つの逆説的真理を調和させようと努める.<復> アウグスティヌス主義は回心における神の主権的働きを強調する.神の恩寵の独占活動を主張するのであって,これを単動説([英語]monergism)と言う.ルターやカルヴァンなどプロテスタント宗教改革者たちはこの伝統に属する.マルティーン・ルターは小教理問答で「自分の理性や能力によっては,私の主イエス・キリストを信じることも,みもとに来ることもできないことを,私は信じます.けれども,聖霊は,福音をとおして私を召し,その賜物をもって私を照らし,まことの信仰のうちにきよめ,支えてくださいました」と記している.これに対立するペラギウス主義の伝統では人間の道徳的責任を強く主張する.この立場は神の恩寵と人間の意志の自由を認める神人協力説という形に修正され,エラスムスやアルミニウス,ジョン・ウェスリなどによって主張された.エラスムスは,自由意志とは恩寵に自己を適用する力のことを意味する,と言う.<復> 宗教改革の時ルターの死後,ルター派内で神人協力主義論争(1555—71年)が起った.この論争はフィーリプ・メランヒトンの弟子たちとそれに反対する純正ルター派と呼ばれるルター派内の厳格なグループの間で行われた.メランヒトン自身が神人協力主義であったかどうかは古くから学者の意見が分れる.確かに彼は,人間は善を行うのに全く無能力である,すなわち,外的な事柄(世俗の事柄)においては自由意志があるが,内的な事柄(霊的な事柄)には無力である,と教えた.しかし,彼の「神学総論」の第2版(1535年)では,回心には三つの原因,みことばと聖霊と人間の意志が結合していると教えた.この場合意志は全く無活動というわけではなく,それ自身の弱さを拒否する…神は引き寄せるが,欲する人を引き寄せる,意志は像ではない,霊的感情はあたかも像のように外から押されるものではない,と記している.メランヒトンの立場についてわれわれがどのように考えようとも,メランヒトンの用語には,明確に神人協力的というわけではないが,そのように解釈される可能性があったことは明白である.フィーリプ主義者と言われた彼の追従者たちは,メランヒトンは人が悔い改める際,人は何らかの形で神に協力すると教えていると解釈した.この論争に登場してくるのは,単に数人の人物ではなくて,神学部の教授陣であり,また領邦全体を巻き込んでいた.純正ルター派の中心は,マクデブルクとザクセンの公爵領にあるイエナ大学であった.メランヒトンの追従者たちはヴィッテンベルク大学とザクセンの選帝侯領のライプチヒ大学において強力であった.論争はプフェフィンガーがメランヒトン主義者の立場から学問的な論文を書いて論争の口火を切ったが,次いで意志の自由についての書物を書き,アムスドルフがプフェフィンガーは神人協力説を教えていると批難した.純正ルター主義の中心地ではシュトリーゲルがメランヒトン主義を表明して,正統ルター派の代表者であるフラーキウスと論争を続けた.このほかにもルター派の内部で数多くの神学論争があったが,それらは1577年に成立した和協信条の中で信条的一致を見た.和協信条・梗概・第2条「自由意志について」でストア派,マニ教徒たちの決定論,ペラギウス主義,半ペラギウス主義,神人協力説,完全主義,熱狂主義,フラーキウス主義,神学者たちの幾つかの不正確な用語の使用,メランヒトンの三要素観,の九つの反対の,誤りの教えの項目を挙げて否定し,肯定の項で神の恵みの独占活動を教えて,「しかし,聖霊なる神は,手段なしには回心を生じようとはなさらない.そのために神のことばの説教と聴受をお用いになる.…聖霊が,このみことばと共に現臨して,心にはたらくのだが,それは使徒行伝第16章14節のルデヤのように,人々がみことばに心をとめ,聖霊の恵みと力によってのみ回心させられるためである.人間の回心は,聖霊だけのみわざである.…これらの短いことばのなかで,キリストは,自由意志に対しその力を否定し…すべてのことを神の恵みに帰しているのである」と明確に単動説を主張している.改革派の立場はウェストミンスター信仰告白の第9章「自由意志について」,及び第10章「有効召命について」に述べられている.ルーテル派とともに改革派はアウグスティヌス恩寵論の伝統に立つ.→選び,救い,召命,恵み.<復>〔参考文献〕オルベック『福音的信仰の遺産』聖文舎,1969;『一致信条書』聖文舎,1982;Schaff, Creeds of Christendom, Vol.1 History, Baker, 1877.(矢内昭二)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社