《5分で分かる》宗教裁判とは?

宗教裁判とは?

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宗教裁判…

[ラテン語]インクィシティオ.ローマ・カトリック教会が異端禁圧のために設けた裁判制度.異端審問とも言う.<復> 教会は,その初期から正統な教理を保持するために努力していた(ガラテヤ1:6‐9,Ⅱテモテ4:3,4).新約聖書の結集や信条の成立も,異なる教え(異端)が出現することによって促されたのである.5世紀には,アウグスティーヌスは88種類もの異端の一覧表を作った.異端はいずれの時代にも存在した.<復> 中世初期においては,異端は個々の知識人や限定された地域の問題であり,教会もそのつど個別に対応していた.しかし,12世紀になるとローマ教会を脅かす運動が起り,それらは異端として弾圧されるようになった.異端審問は,第2・第3・第4ラテラノ公会議(1139年,1179年,1215年)の教令公布に引き続き,1231年グレゴリウス9世(1227—1241年在位)によって組織化されるに至った.同年,教皇庁に異端審問官が任命される.<復> 迫害はおもにワルドー派とカタリ派に向けられた.ワルドー派は,フランスのリヨンの豪商ヴァルデス(ワルドー)(1140年頃—1217年頃)が回心して財産を貧しい人々に分け与え,使徒的清貧に生き,団体を組織したのに始まる.彼らは2名ずつで悔い改めの説教をしつつ巡回した.この運動は南フランス地方に広まった.しかし,説教者たちが聖職者の倫理の乱れを批判するに及んで,リヨンの大司教から活動を制限され,教会の許可する限りにおいてのみ説教を許された.しかし,ワルドー派はこれに従わず,1184年破門された.教会がワルドー派を異端とした理由は,ローマ教会を否定したことにある.正式に認可されていない説教が行われ,聖職者の仲介の役割が拒否されると,ローマ教会は不要となる.このため教会による異端審問は次第に厳しさを増していった.一方,ワルドー派は様々な民衆運動,敬虔運動と合流しつつ分派を形成し,ヨーロッパ各地に広まっていった.<復> カタリ派は,12,13世紀にフランスを中心に栄えた.アルビ地方に特に浸透したのでアルビ派とも呼ばれる.彼らはマニ教的二元論で聖書を解釈し,物質的世界を支配する悪神と霊的世界を支配する善神を対比する.ローマ教会の富と聖職者の腐敗の現実の中で,厳格な倫理を説き実践するカタリ派は,民衆を引き付けた.このような,二元論と倫理的な厳格主義がその特質である.13世紀初頭には,南フランス及び北イタリアが全面的にカタリ派になるのではないかと思われるほどの勢力を持つに至った.<復> ワルドー派やカタリ派に対抗して,ドミニコ会,フランシスコ会などの修道会が起され,彼らは異端審問官として各地に派遣された.すでに教皇インノケンティウス3世が1208年,カタリ派に対して十字軍を起しその勢力をそいでいたが,修道会士たちは説教によって人々をカトリック教会に取り戻した.異端審問官は各地を巡回して法廷を開き,異端を審理した.異端の容疑はおもに告発(密告)によってかけられ,容疑者は裁判が始まるまで留置された.審問官は完全な支配権を持ち,弁護人も置かれなかった.審問官は刑の宣告をするだけで,執行は世俗の権力にゆだねられていたが,重罪の場合は火刑に処せられた.異端の概念は審問官によって勝手に拡大され,魔術を行うと言われる者や権力に反抗する者にも適用されていった.宗教改革の先駆者たちも,異端として退けられた.ジョン・ウィクリフ(1320/29—1384年)は死後,異端として断罪され,著書は焼かれ墓はあばかれた.ボヘミアのヤン・フス(1369年頃—1415年)は,コンスタンツ公会議で異端として審問され火刑に処せられた.宗教改革時代にはルターも異端の宣告を受けた.<復> 宗教改革後は,異端審問が反宗教改革の有力な手段として用いられた.プロテスタント教徒のみならず,ユダヤ人やイスラム教徒を迫害するためにもこれが用いられた.<復> また1487年,ドミニコ会士によって「魔女の槌」が公刊され,異端審問の中に魔女裁判が強化されていった.特にドイツでは異教時代の悪霊信仰が民衆の間に残っていたので,悪霊と交わり有害な魔力を得るとされる″魔女″が取締りの対象となった.拷問が行われ,魔女として有罪と決った者は火刑に処せられた.1590年から1680年にかけて10万人が処刑されたと言う.<復> このように,異端審問の制度は教会の歴史の中で最も暗い部分であり,精神の自由を奪う恐るべきものであった.19世紀に至って,ナポレオンによりこの制度は廃棄された(1810年).→異端,プロテスタント宗教改革.<復>〔参考文献〕『カラーキリスト教の歴史』いのちのことば社,1979;『中世キリスト教の発展』(キリスト教史第4巻)講談社,1982.(勝原忠明)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社