《5分で分かる》京都宣言とは?

京都宣言とは?

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京都宣言…

1974年と82年にそれぞれ京都市で開かれた2回の日本伝道会議がいずれも「京都宣言」を発表している.第1回の会議は1974年6月3日から7日まで,日本全国からの1300名が参加した.日本の福音派による全国規模の最初の伝道会議であった.同じ年の7月に,スイスのローザンヌ第1回世界伝道会議が開かれることになっていた.それまでに世界各地で多くの伝道会議が開かれていたこともあり,日本伝道会議も世界的規模での宣教協力推進の気運に促されての会議であったと言えよう.事実この会議は結果的に,日本の福音派が日本の伝道のためだけでなく,世界との連帯の中での役割を意識させられる重要な契機になった.1967年の東京でのビリー・グラハム国際大会における協力伝道の祝福が励ましとなって生れた旧日本福音同盟が,第1回の会議を主催した.この事実から,日本福音同盟(JEA)の誕生と第1回日本伝道会議の実現は一連の出来事であり,日本の福音派による宣教協力への新しい意思表示であったとも言える.この会議の公式代議員は,日本福音同盟の創立会員としての日本福音連盟,日本プロテスタント聖書信仰同盟(JPC),宣教師団体としてのJEMA(Japan Evangelical Missionary Association)のメンバーに限られていた.創立会員が必ずしも教会を代表する機関ではなかったこともあり,この会議が期待されていたような,伝道のための共同戦略会議とならなかったことはやむを得ない.しかし,日本の福音派の全体にわたる参加者による会議となったこと自体が,最大の成果であったと言われる.<復> 従ってこの会議による京都宣言も,継続的な成果を見るまでには至らなかった.しかしそのための準備となったことは事実であろう.「今日の救い」についての発題もあり,その頃の,エキュメニカル運動の宣教観の影響の拡大に対する欧米の福音派の危機感との接点もあった.事実1968年のウプサラ,1972—73年のバンコク会議の状況も報告されていた.しかし日本の福音派が世界の問題意識を共有するまでにはなっていなかったようである.京都宣言はその第3項で,次のように述べている.「福音の提供する救いが,単に貧困や政治的・社会的圧迫からの解放ではなく,人間の不幸・悲惨の根本的原因である罪,及びその結果であるいっさいのものからの救いであることを表明する」.ここでは福音のメッセージの正統性が強調されている反面,教会の社会的責任についての取組の姿勢はまだない.聞き方によっては社会的,政治的な問題がむしろ否定的にとらえられている感がある.しかし日本では福音的な協力の基盤は何かということが最も緊急な問であった.聖書論の論争が続く中で,聖書信仰が一致の基盤であることが,多様な群を背景にしての大きな会議で確認されたのである.この意味で京都宣言の基軸は,やはり聖書の権威についての第1項であろう.「私たちは,聖書66巻が唯一の誤りなき神の権威あるみことばであり,私たちに,罪からの救い主である主イエス・キリストを示し,信仰と生活の唯一の基準であることを告白し,宣言する」.伝統的な福音信仰の再述そのものであるこの告白が福音信仰の一致,特に宣教協力の前提としてこの時期に認められたことの意味は大きい.<復> 第2回日本伝道会議は,1982年6月7日から開かれた.第1回会議以後,ローザンヌ世界伝道会議を初め幾多の伝道会議,研究会議が世界的な規模で開かれている.日本の福音派,日本福音同盟もいろいろな形で国際的宣教協力に関与するようにもなっていた.<復> 第2回日本伝道会議による京都宣言は,当然のこととはいえ,第1回のそれよりかなりの前進を見せている.宣言の背後に,日本の福音的な教会の意識の成長を見ることができる.日本の教会が,世界の福音主義の動きに連動する形を多少なりとも持ち始めていることを感じさせる.また,日本には,教会の責任意識が育つ前から超教派的な伝道活動が外国から多く入って来た.そういう中で,第1項での「宣教の主体としての教会」の強調は,日本の福音派の将来の前進のために避けられない再編への道筋を示しているとも言える.エキュメニカルな宣教論が社会的,政治的責任を宣教そのものと考えるのに対して,これらをキリスト教倫理の問題として教会のあかしの観点からとらえていることは,現代教会に対しての一つの見識であろう.宣教とその実についての区別と関連の認識を示している.5項の「宣教のための協力」は,世界を意識した上での日本伝道という視点を含んでいる.世界宣教の協力関係への確かな一歩を示したと言えよう.→ローザンヌ誓約,福音主義.<復>〔参考文献〕『日本の福音派—21世紀に向けて』日本福音同盟(いのちのことば社発売),1989.(舟喜 信)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社