《5分で分かる》ホロコースト(大虐殺)とは?

ホロコースト(大虐殺)とは?

スポンサーリンク

ホロコースト(大虐殺)…

第2次大戦中,少数民族,とりわけユダヤ人を対象として行われた,ナチスドイツによる組織的虐殺行為.「劣性人種」としてユダヤ人を絶滅することにより,「優秀人種」としてのドイツ民族による国家主義を強化すること,また,ユダヤ財閥の経済的富を奪取することがこの背景にあったと考えられる.<復> 1.1933年から39年まで.<復> 1920年代には,すでに反ユダヤ的政党がドイツにおいて活動しており,ドイツ民族の「人種的」優越性を主張していた.また,F・デリッチュ,H・ギュンター等の学者も人種論を唱え,特に後者は,ユダヤ人は「劣性で危険な混血人種」であると論じた.(→図1「1912—33年のドイツ帝国議会における反ユダヤ的代議士の数」).<復> 1929年の大恐慌以後,ナチ党は影響力を強化し,1932年7月には,政権掌握に成功した.党首ヒットラーは,翌年1月30日に首相に任命された後,ユダヤ人は根絶さるべきだと主張し,それを実行に移そうとした.すなわち,同年4月には,ユダヤ企業に対する不買運動,そして,ユダヤ人の公職からの追放,公的機関におけるユダヤ人医師,法律家の制限等が定められた.<復> 1935年には,「ニュルンベルク法」として知られる反ユダヤ法が制定された.この法により,ユダヤ人は,政治的権利を持たない「被統治民」とされた.さらに,「ドイツ民族を永久に存続させるために」ユダヤ人と非ユダヤ人との結婚が禁じられた.1938年までに,ユダヤ人は,ドイツの経済生活,社会生活から追放され,約3分の1のドイツ・ユダヤ人は,他国へと移住した.<復> 1938年3月,オーストリアが併合され,35万人のドイツ国内のユダヤ人に,19万人のユダヤ人が加わった.彼らにも,ドイツ国内のユダヤ人と同じ制限が適用された.同年11月7日,パリのドイツ大使館において,ユダヤ人青年が参事官を暗殺した.この報復として,11月9日,ナチ党員と親衛隊とは,ドイツ領内においてユダヤ人に対する襲撃を行った.数百のシナゴーグが焼かれ,約7万5千のユダヤ商店・企業が破壊され,90人のユダヤ人が殺害された.これが「水晶の夜」(クリスタルナハト)と呼ばれる襲撃事件であった.<復> 2.ポーランド侵攻以後.<復> 1939年,ドイツはポーランドに侵入し,約200万人のユダヤ人が,ドイツ支配下になった.彼らは,ダビデの星型バッジを付けることを義務付けられ,さらに青年男子は強制労働に徴用された.また,都市内にはゲットーが建設され,ユダヤ人はそこに移住するように命じられた.1941年6月に,ソ連領にドイツが侵攻した時にはすでに,共産党員,ユダヤ人,ジプシー等を殺害する行動隊が組織されていた.同年9月には,キエフ近郊のバービヤールにおいて,少なくとも3万4千人のユダヤ人がドイツ人とウクライナ人により殺害された.<復> 1942年1月20日,ベルリンにおいて,ユダヤ人を絶滅する計画を討議した「ヴァンゼー会議」が開かれた.この会議において,ゲットーの状況を悪化させ,中欧のユダヤ人を東欧に移送し,強制収容所において,1100万人のユダヤ人を虐殺する計画を実施することが決定された.同年中には127万4千人のユダヤ人が虐殺された.また,ゲットーも破壊され,1943年4月には抵抗むなしくワルシャワのゲットーのユダヤ人が「絶滅」された.ドイツ,フランス,オランダ,ギリシア,ハンガリー等のユダヤ人は,強制収容所に送られ殺されていった.ヒットラーの政策に反対したフィンランド,デンマーク等の国々では,多くのユダヤ人が救助されたが,1945年に至るまで,推定450万人から600万人ものユダヤ人が虐殺された.実に,6割にも上るユダヤ人が殺されたことになる.ユダヤ史においても,また人類の歴史においても他に例を見ない組織的な大量虐殺であった.(→図2「ユダヤ人の虐殺(1941—45年)」).<復> 3.教会の態度.<復> ホロコーストに対して,キリスト教会は様々な態度をとった.ドイツの国教会であるルター派教会は,当初から反ユダヤ的態度をとり,政府に対して一般的には批判的ではなかった.しかし,告白教会は,反ナチの立場から,政府のユダヤ人政策に反対した(→本辞典「バルメン宣言」の項).カトリックの修道院,下級聖職者は,個人的に相当数のユダヤ人をかくまい,救助した.しかし,教皇庁は,ホロコーストに対しては何の反応も見せなかった.ギリシヤ正教会もまた,沈黙を守った.→ユダヤ人排斥主義,シオニズム.<復>〔参考文献〕S・エティンゲル『ユダヤ民族史』第6巻,六興出版,1980;Encyclopaedia Judaica, Vol.8, Keter Publishing House, 1972.(黒川知文)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社