《5分で分かる》さばきとは?

さばきとは?

さばき…

[英語]Judgment,[ヘブル語]mis▽pa~t∵,[ギリシャ語]krisis.<復> 「さばき」は法律用語である.イスラエルは法を重視する民であった.旧約聖書を読む時,そこに法的性格が脈打っているのがわかる.「モーセ五書」のことを「トーラー」(法の部)と呼んでいることにも,法重視の姿勢が見られる.つまり,イスラエルは法社会であり,「さばき」は法に照らしてなされなければならないのである.法は神が与えたものであって,王であれ,祭司であれ,法に従わなければならない.それゆえに,ダビデ王の姦淫の罪は激しく糾弾され,さばかれた(Ⅱサムエル11章).また,アハブ王がナボテのぶどう畑を奪った時にも,預言者エリヤが激しく王に迫った(Ⅰ列王21章).他国ならば王は,姦淫の罪も他人のぶどう畑の取り上げも事もなげに行い得た時代のことである.<復> さて,「さばき」が正しく行われるためには,さばく基準となる法体系が整備されていなければならない.この点,旧約聖書は実にすばらしい法典集(律法)を持っている.それは,十戒(出エジプト20:1‐17),契約の書(出エジプト20:22‐23:19),申命記法典(申命12‐26章),祭司法典(レビ記全体,出エジプト記及び民数記の中に散在),12ののろい(申命27:14‐26)などである.これらの中で,基本となるものが十戒(十のことば)であった.それほど重要な律法であったので,神の指で直接石の板に書かれ,契約の箱に入れられて,幕屋の最も奥深い至聖所に置かれていた.まさにそれはイスラエルの憲法に匹敵する.その他,法律形式で記されていない多くの箇所も,聖なる書物(聖書)に記されていることから,神の権威を持つものとして,さばきの基準となる.<復> しかし,真に正しいさばきを行うことのできる方は神のみである.神が本来の「さばき主」であり(詩篇50:6),「全地のさばき主,万民の審判者」である(創世18:25,ヘブル12:23).全被造物は全能なる創造者のさばきに服する.そのさばきに間違いはない.それゆえに聖書は,地上の法律的裁判も厳正でなければならないと教え,裁判官が間違った不公正な裁判をしないための数多くの規定を旧約聖書の中に記している(出エジプト23:6‐8,申命16:19等).<復> 旧約時代,(1)初期には,家長が自分の家の裁判をしていた(創世38:24).(2)次の段階では,部族の長(族長)が部族内の裁判を担った.(3)出エジプト後,モーセは最初一人ですべての裁判をしていたが,大変な重荷であったので,しゅうとのイテロの助言により,部下たちに権限を委譲した(出エジプト18章).彼らは小さい事件をさばき,大きな事件だけをモーセのところへ持ってきた.(4)士師時代には士師(さばきつかさ)がおり,司法的裁判と同時に軍事的指導者としての役割を担った.(5)王制時代には,(a)王も裁判官の役割を果したが(Ⅰ列王3:16‐28),それは直訴されたケースに限られていたと思われる.実際には,(b)小事件については地方の法廷が扱い(申命16:18),(c)大事件は,より次元の高い法廷(構成員は複数の祭司とさばきつかさ)が扱った(申命17:9).(d)また王から権限を受けた役人にも裁判権があった.さらに,(e)町では長老たちが主として家族問題の裁判を扱っていた(申命21:18‐21).(6)祭司は祭儀にかかわる一定の範囲内で裁判権を持っていた(レビ13,14章,申命21:5).(7)預言者の役割は倫理的なさばきを神に代って担当することであり,祝福とのろいの宣言がその代表的な仕事であった.<復> 新約聖書では,(1)議会(サンヘドリン)が裁判権を持っており,祭司・長老・律法学者たち70人で構成されていた(議長役の大祭司を加えると71人).この議会がイエスを有罪としたことは有名である.(2)こうした地上の「さばき」のシステムとは別に,新約聖書は「さばき」を道徳的・倫理的にとらえて語っている.「さばいてはいけません」(マタイ7:1).これは,さばく者が自分の罪を棚に上げて他人の罪ばかりを責めることのないように,との戒めである.もともと自らが大きな罪を赦された存在なのであるから,他人の罪を赦すべきである,との教えもある(マタイ18:23‐35).こうした教えの背後にも,神が絶対の「さばき主」であって,必ず正と悪とを正しく最終的にさばいて下さるという確信がある(使徒17:31,ローマ2:16,ヘブル9:27).→終末論.<復>〔参考文献〕『新聖書・キリスト教辞典』いのちのことば社,1985;『旧約新約聖書大事典』教文館,1989;Unger’s Bible Dictionary, Moody, 1969.(大山武俊)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社