《5分で分かる》愛餐とは?

愛餐とは?

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愛餐…

イエス・キリストを信ずる者同士が,信仰と愛と希望とを分ち合いつつ,共にした食事のこと.特に初代教会の時代には,聖餐式と密接に関係を保ちつつ,盛んに行われた.またこれは,貧しい人々,やもめたちに対する援助をも念頭に置いた食事でもあった.愛餐—Love Feast—と呼ばれるゆえんである.<復> 1.旧約時代における予型.<復> (1) 愛のもてなし.もともと神の民には,旅人をねんごろにもてなして食事を共にしたり,やもめ,みなしご,貧しい人々に対する配慮を忘れない,という美しい習慣があった.アブラハムの饗応(参照創世18:1‐8),ロトのもてなし(創世19:1‐3),ボアズの配慮(ルツ2:14)などにその例を見ることができる.<復> (2) 神への感謝,信頼などの意味を込めた食事.過越の食事がその典型であるが,イスラエルの民は,神の驚くべき救いを記念し,神に対する愛と信仰とを表明する食事を続けてきた.この食事は家族単位で行われたが,これは,同じ神を信ずる者のきずなをいっそう強める機会ともなった.<復> 2.新約時代における予型.<復> (1) イエス・キリストによって備えられた食事.キリストは,大群集に食事をもてなし,その愛と栄光を表された(マタイ14:14‐21,15:32‐39,マルコ6:34‐44,8:1‐9,ルカ9:12‐17,ヨハネ6:5‐14).復活の後,ガリラヤ湖畔で,弟子たちのために朝食を用意された(ヨハネ21:9‐13).<復> (2) エッセネ派あるいはクムラン宗団等による儀式的会食.最初に祈りがささげられ,会食中の会話は宗教的テーマを巡って行われた.パンが裂かれ,神の国成就を願い求める祈願で締めくくられる場合もあった.<復> 3.使徒時代の実情.<復> ユダの手紙12節に「愛餐」ということばが出てくる.その他,Ⅱペテロ2:13(欄外注参照),Ⅰコリント11:17‐34,さらには使徒2:42‐47等を参照してみると,使徒時代の愛餐の実情が浮び上がってくる.すなわち,愛餐と聖餐とは当時密接に結び付いていたようであり,恐らく愛餐の後,そのまま聖餐に移って行ったと思われる.そこには,愛が,喜びが,そして真心が見られる.ところが,ペンテコステ直後の場合は別として,時も経過し,場所も広がるに従い,不純な要素が入り込んで,愛餐が愛餐でなくなり,これが過食,酩酊,自己中心などによって汚される場合もあったようである.使徒たちはそれらに対して警告を与え,また愛餐を破壊する偽兄弟を警戒するよう教えている.さらに,酒に酔うのでなく,聖霊に満たされ,「詩と賛美と霊の歌とをもって,互いに語り,主に向かって,心から歌い,また賛美しなさい」(エペソ5:19)と勧めている.<復> 4.使徒後教父時代以後の場合.<復> しばらくは,使徒時代と同じように,愛餐と聖餐は互いに分割されずにいたようである.例えば,ディダケー(100年頃)9章は,明らかに聖餐についての指針であるが,続く10章は,「満腹をした後,次のように祈りなさい」と,愛餐後の祈りに関する教訓となっている.ところが,殉教者ユスティノスの著書(150年頃)によると,そこには愛餐についての言及が見られず,聖書朗読,祈り,勧めなどから成る礼拝に続いて,聖餐式が行われた,と記されている(『第一弁証論』1:67).従って,この頃までには,聖餐と愛餐とが分離されたと言われている.愛餐自体は,テルトゥリアーヌスの時代(200年頃)にも続いていたが,もはや聖餐とは明確に一線を画していた.このような分離の原因としては,まず,先に見た愛餐自体の俗化,つまり,そこに当時の異教的習慣が入り込んで,これが大食や酔酒の機会となったこと,次に,ローマ皇帝がキリスト教の集りに疑惑の目を向け始めたこと,さらに,聖餐の儀式化などを挙げることができよう.東方教会においては,愛餐と聖餐のつながりは,西方教会よりも長く続いたが,これも次第に分離の方向に進んで行った.なお,カタコンベの壁画にも描かれているように,愛餐は,葬儀や記念会の食事という方向に発展した例もある.こうして,8世紀頃まで,愛餐の習慣は命脈を保ったが,次第に行われなくなった.<復> 5.宗教改革以後の時代.<復> 「初代教会に帰ろう」というモットーのもとに,特に敬虔派のグループを中心に愛餐が復活した.また,その影響を強く受けたジョン・ウェスリも,愛餐を重んじた.現代に至っても,各個教会における会食,朝祷会などに見られる超教派の集り,エキュメニカル運動の一環としての愛餐など,様々な形態をとって,なおも実施されている.→主の晩餐,聖餐式,聖徒・聖徒の交わり.(岩井 清)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社