《5分で分かる》アディアフォラとは?

アディアフォラとは?

スポンサーリンク

アディアフォラ…

「差異」「違い」を表す[ギリシャ語]ディアフォラ(diaphora)に否定辞[ギリシャ語]ア(a)が付いたもので,「差異のないもの・変りのないもの」の意であるが,キリスト教的文脈においては,信仰にとって善でも悪でもない中立的あるいは非本質的な事柄を指す.ルーテル教会の『和協信条』では「神のことばの中で命じられもせず,あるいは禁じられもしないで,単に,よい秩序と安寧のために教会に取り入れられた儀式,あるいは教会の慣習」と,専ら教会内の事柄としてアディアフォラを説明し論じているが,いわゆる教会外の世俗的事柄のあるものについて,それがアディアフォラか否かという論議も当然なされ得る.事実,教会史上,ある事柄が信仰にとってアディアフォラであるかどうかを巡っての注目すべき論争が二つあり,一つは前者の意味でのアディアフォラに,もう一つは後者の意味でのそれにかかわる.<復> 第1のアディアフォラ論争は,宗教改革当時の1548年以降,ルター派教会においてメランヒトン派と純正ルター派との間に起ったもので,メランヒトンが皇帝カール5世とザクセン選帝侯モーリツの圧力に屈した形で取りまとめた「ライプチヒ仮信条協定」がその引き金となった.カール5世がローマ・カトリック教会とプロテスタントの不和打開策として「アウグスブルク仮信条協定」(1548年)をプロテスタント側に押し付けた際,ザクセン選帝侯はそれに対する領内での猛反対を和らげるため,メランヒトンにその修正版たる「ライプチヒ仮信条協定」の作成を命じた.メランヒトンは,ローマ教会とプロテスタントの両方が同意・受諾し得るような信仰箇条や教規を案出して双方の理解を得ようとした.その際彼は,礼拝用語・儀式順序・式服・画像・礼典などはもともと信仰の本質にかかわりのないアディアフォラなものであるから,ローマ教会の礼典や慣習のうち,司教による堅信礼・断食規則・終油の秘跡・(化体説抜きの)ミサ・聖人崇敬等は,これを保持するかどうかは二次的な事柄であり,宗教和議成立のため福音主義的立場からも承認・譲歩し得るものであるとした.フラーキウス・イリーリクスを筆頭とする純正ルター派はこれを激しく非難し,信仰告白が問題となるような場合には,本来アディアフォラである事柄ももはやアディアフォラではなく,その是非が厳しく吟味せられるべきであると述べた.この論争が一応の決着を見たのは,1577年の『和協信条』においてである.この信条は,真のアディアフォラとは,聖書が命じも禁じもしておらずしかも神礼拝に何のかかわりもない教会的儀式や慣習のことであるとし,教会はそれらを自由に変えたり増減したりする権威を持つが,福音の宣教が脅かされ福音主義的信仰告白が重大事となるような時には,たといアディアフォラであっても断じて妥協したり譲歩したりすべきではないと説く.信仰義認によりキリスト者は,律法の足かせや人間の戒めなどから自由にされている.アディアフォラはまさにそういう福音的自由の範疇に属する周辺的事柄ではあるが,肝心の信仰義認の教えそのものが存亡の危機にある場合には,アディアフォラも単に周辺的という以上の意味を課せられるということが,『和協信条』の基本精神である.<復> 第2のアディアフォラ問題は,17世紀の敬虔主義の禁欲的傾向に対するルター派正統主義からの批判という形で起った.シュペーナーやフランケに率いられたドイツの敬虔主義者は,聖書にはっきりと認められたもの以外はすべて罪であるとした英国ピューリタンに似て禁欲的志向が強く,観劇・ダンス・カード遊び・喫煙・飲酒といった世俗的快楽はもちろんのこと,時には散歩さえもこの世的なもの,罪悪的なものとして拒絶した.これに対して当時のルター派正統主義は,それらのものは本来命じられてもいなければ禁じられてもいないいわゆるアディアフォラであり,個人個人は自分の良心において自分にとっての限界をわきまえつつそれらにかかわっていけば済むことであるとして,敬虔主義者の狭い律法主義を批判した.<復> 異教社会に生きる現代日本のキリスト者にとっても,アディアフォラ問題は,天皇制とのかかわりといった政治的場面から,神道・仏教に起源を持つ冠婚葬祭的社会慣習,及び会社などでのいわゆる世俗的付き合いといった日常的場面に至るまで,日々それらとどうかかわるべきかという切実な課題として今も生きていると言える.その際の原則は確かに「キリスト者の自由」ということであっても,実際には信仰とこの世の論理とのはざまで呻吟し苦慮することが多い.それは結局は信仰者の実存においてしか「解決」され得ない課題なのかもしれない.→メランヒトン派,和協信条.(角川周治郎)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社