《5分で分かる》奥義とは?

奥義とは?

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奥義…

[ギリシャ語]ミュステーリオン.この語の概念はアラム語のラーズ,ヘブル語のソードゥに由来し,「隠れた事柄」を意味する.70人訳聖書の中では,ミュステーリオンは正典ではダニエル書にしか使われておらず,そのほかはトビト,ユデト,ソロモンの知恵,ベン・シラ,Ⅱマカベア等の,成立年代の比較的遅い外典だけに見られる.すでにこの語はギリシヤ世界において,哲学・密儀宗教・グノーシス主義・魔術などについて広範囲に使われており,聖書で用いられている意味を正確に把握することが肝要である.<復> 1.密儀宗教における用法.<復> 古典時代からヘレニズム期にわたる変遷の中で,ミュステーリオンは複数形で用いられることが多く,主として内密に執り行われる宗教儀式を意味していた.それは「入会を許された者」([ギリシャ語]ミュステース)だけが参加できるもので,そこからさらに,入会を許された者にしかわからない「密儀的礼拝の対象」,という意味が派生した.このように,この語は本来的には宗教儀礼に用いられていたのであるが,時折,戦略上の「機密」の意味にも用いられるようになった.また哲学用語にも影響を及ぼし,「自然の神秘」や「秘義」としての神も表すようになった.<復> 2.ギリシヤ語訳旧約聖書(70人訳)における用法.<復> [ギリシャ語]ミュステーリオンはおもにヘブル語のソードゥとアラム語のラーズの訳語として用いられ,外典においては「王の秘密」あるいは他にもらしてはならない仲間同志の「信用で結ばれたはかりごと」というような世俗的な意味で使われている.「ソロモンの知恵」では,知恵の神秘的な起源(6章22節)など哲学的意味で用いられたり,異教の密儀(14章15,23節)を表したりしている.<復> 3.新約聖書における用法.<復> 新約で「奥義」(ミュステーリオン)は,ダニエル書的用法の流れの中で使われている.<復> (1) 共観福音書の中では,それぞれの書に1回ずつ出てくるが,いずれも種まきのたとえ話の後の質問に「あなたがたには,神の国の→奥義/・・←が知らされているが,ほかの人たちには,すべてがたとえで言われるのです」と答えられたイエスのことばの中にある(マルコ4:11,マタイ13:11,ルカ8:10).メッセージを受け入れた弟子たちはその意味を知り,受け入れない人々は意味がわからないばかりか,救いのメッセージを聞いて応答する機会さえも失ってしまう.従ってこの場合の「奥義」は,旧約の預言者たちによって語られてきた神の国の到来が今現実となっているという事実を指している.<復> (2) 新約聖書の全体を見ると[ギリシャ語]ミュステーリオンは27回出てくるが,そのうちの20回をパウロが使っている.パウロの手紙においては,奥義とは隠された秘密ではなく,以前は知られなかったが今や明らかに啓示されたものであることが強調されている.端的に言えば,それはキリストがもたらした福音の内容を意味している(ローマ16:25,26,エペソ3:3,コロサイ1:26).十字架の教え(Ⅰコリント2:1‐16),受肉の教義(Ⅰテモテ3:16),キリストの内住(コロサイ1:27),キリストの再臨の時に聖徒たちが変えられること(Ⅰコリント15:51),異邦人もこの救いにあずかること(エペソ3:3‐6)等を表すのにこの語が用いられている.パウロはまた「私たちを…神の奥義の管理者だと考えなさい」(Ⅰコリント4:1)と語り,宣教の任務を明らかにしている.<復> 4.ローマ・カトリック教会における用法.<復> ローマ・カトリックでは[ギリシャ語]ミュステーリオンを「秘義」と訳し,そのおもな意味として次のものを挙げている(V・ワルナッハ『キリスト秘義と救いの歴史』あかし書房,1984).(1)神の世界計画,救いの計画としての秘義,(2)創造秘義,(3)キリストの救いのわざ,すなわち狭義の「キリスト秘義」,(4)教会の秘義,(5)ことばと秘跡における典礼秘義,(6)信じる者に働きかける救いの現実,(7)終末論的完成,(8)神の秘義に対立するものとしての悪の秘義(参照Ⅱテサロニケ2:7).プロテスタントの立場と顕著に対立する点は(4)と(5)であるが,これはラテン語訳聖書ウルガタが[ギリシャ語]ミュステーリオンを「秘跡」([ラテン語]sacramentum,サクラメントゥム)と訳したことから後世,秘跡,特に聖餐に対して「秘義」の称号が帰せられるようになったのである.また,エペソ5:32のウルガタ訳が結婚を秘跡に定めることに影響を与えたと言われている.→秘跡(サクラメント).(佐竹十喜雄)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社