《5分で分かる》聖書と伝承とは?

聖書と伝承とは?

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聖書と伝承…

まず「伝承」という用語の理解を明確にしておくことが大切である.ここでの伝承とは,聖書(旧新約聖書)が記述され,翻訳され,印刷され,私たちの所有する聖書となるまでの成立過程ではない.むしろ,「聖書と教会伝承」という意味での「伝承」と理解すべきである.<復> まず,「聖書」と言う場合,プロテスタント教会では,伝統的に旧約聖書39書と新約聖書27書の両者を指し,全66書を信仰と生活の規範としてきた.すなわち「正典」である(→本辞典「聖書の正典」の項).もちろん,聖書の正典観は,ローマ・カトリック教会とプロテスタント教会では異なっている(プロテスタント教会の中でも,聖公会などではいささか異なっている).日本においても,近年になって新共同訳聖書が,ローマ・カトリック教会とプロテスタント教会の一部による共同作業として出版され,伝統的にプロテスタント教会が正典としてきた66書以外の,いわゆる外典と呼ばれる15書(数え方によっては13書)が付加され,旧約聖書続編または第2正典と呼ばれる部分が,従来の旧約聖書と新約聖書との間に入れられている(そのような旧約聖書続編または第2正典を含まない66書の新共同訳聖書も出版されている).このような聖書の正典観の相異の基底には,ローマ・カトリック教会は,教会の権威を重要視して聖書の書数に関して(また解釈に関しても)「オープン・キャノン」の立場をとり,プロテスタント教会は「クローズド・キャノン」の立場をとっているという事実がある.教会という地上における組織としての機構の権威を最高のものとするローマ・カトリック教会的正典観をとるならば,聖書の権威は,教会に対して「従」的位置付けとなり,教会が公認するならば,外典的なものや,教会に受け継がれてきた諸伝承も権威あるものとされ,第2正典のような諸書の付加または追加が可能である.それに対して,プロテスタント教会の伝統的立場は,聖書としての正典(66書)の権威は最高のものであり,教会もまた,神のことばである誤謬のない聖書(正典)に聞き,正され,従うという理解が基底となっている.それゆえ,聖書が主であり,教会は従であるという関係であり,プロテスタント教会の聖書観としては,正典としての66書以外の書は,どれほどに古く,貴重な価値あるものであっても,聖書としての正典の理解に参考になることはあっても,聖書の理解に不可欠のものではない.すなわち,聖書(66書)は正典として,キリスト者,または人間の正しい生き方のため,信仰と生活の規範としてそれだけで十分である,との聖書観である.それゆえに,聖書の解釈においても,聖書は聖書によって解釈され,大教師である聖霊の助けがあることによって理解,解釈されるべきであり,教会はその点でも,聖書に聞き従うという立場を基本とすべきなのである.このようなプロテスタント教会の伝統的な聖書観の背後には,聖書の霊感の積極的な理解がある(→本辞典「聖書の霊感」の項).<復> 第2正典を含めて,一般に外典及び偽典と呼ばれる諸書と,同じような歴史的背景を持つものとして死海写本に属する諸書も,伝承ということを考える場合に考慮に入れなければならない.ユダヤ教における伝承的諸書の重要と判断されるものは,ミシュナに含まれ,ラビたちの諸伝承は,タルムードやミドラシュなどに残されている.これらの諸資料は,伝承としての価値は認められ,歴史的背景という点,特に中間史から紀元100年頃までの歴史的背景を当時の社会事情や宗教思想という観点から知るためには参考になる価値はあっても,正典的価値という点では明確な一線を画することが必要である.<復> さらに,キリスト教においては,教会的伝承は信条や信仰告白などの形で存在した。使徒信条は今日に至るまで多くの教会で使用されている.そのほかに,ニカイア信条,カルケドン信条,アウグスブルク信仰告白,39箇条(聖公会大綱),ウェストミンスター信仰告白などを挙げることができる.ローマ・カトリック教会においては,さらに多く教会会議によって布告された教書なども伝承として取り扱われている.いずれにしても,教会伝承がどれほどに価値のある内容であっても,正典でないことを明確にしておくことが大切である.→聖書の正典,聖書の霊感,聖書の権威,聖書写本,外典と偽典(旧約,新約)教会会議,信仰の告白,信条・信条学,信仰規準.(服部嘉明)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社