ボランティア活動とは?
ボランティア活動…
キリスト教精神と深く結び付いて発達した,利益を目的としない自発的な諸活動のことを言う.今日では,社会福祉的な事業を第一義的に意味するようになっている.<復> 1.ボランティアとは何か.<復> ボランティアということばは,ラテン語のボランタス(voluntas)に由来しており,自由意思による行動のことである.英語では志願者,義勇兵,志願兵,自発的な活動,自生植物,任意記名人,随意筋,等々幅広い意味を持つが,ボランティア活動と言えば,ここ1世紀の間に,社会活動の意味に限定されるようになってきた.<復> 2.聖書の記すボランティア.<復> 聖書によれば,神は人間を御自身のかたちに似せて造られ,神のことばに対して自発的に応答するという本質を与えられた.また,神礼拝の重要な要素であるささげ物については,この自発性がことに重んじられた(出エジプト35:21,Ⅱコリント9:7).また,パウロは伝道を自ら進んでしていると言った(Ⅰコリント9:17).このように,自発的に行動することは,キリスト教信仰の本質にかかわることである.<復> 3.教会史に見られるボランティア.<復> (1) 自由教会(フリー・チャーチ).教会史では,ヨーロッパで国教会に対する,信徒の自発的な集会が見られた.教会の持つ教義や信仰告白を純粋に守り,国家及び国教会の干渉や統制を回避するためであった.自由教会は,その意味で,ボランティア活動の原型である.<復> (2) 宣教の担い手.また,19世紀には海外宣教に立ち上がる,主として信徒を中心とした宣教団体が起された.彼らは,国教会が海外宣教に立ち上がるのを,じっと待ってはいられなかったのである.アメリカで始まった,ステューデント・ボランティア・ムーブメントは,世界宣教に燃えて,多くの宣教師を送り出した.また,信徒2人1組で,家々を訪問して伝道する信徒のことも,ボランティアと呼ばれた時期がある.これらも,神に心を動かされた人の活動であり,文字通りボランティア活動であった.20世紀になると,無数の超教派伝道団体の出現を見るようになる.<復> (3) 福祉活動.さらに19世紀末には,組織立った社会福祉活動が,クリスチャンの手によって始められた.それは,劣悪な労働条件で働く雇用人の権利を守ることから始まった.やがて貧者の救済,廃娼運動,ハンセン病患者の介護等々,多種多様な活動へと広がった.近代以前の社会では,近隣の者の相互扶助という形態で十分であったが,近代以降,資本主義の進展,産業革命による社会構造の変化などのために,相互扶助では対応し切れない問題が数多く生じ,市民活動による民間救済型の福祉が発達してきた.COS運動,セツルメント運動,英国婦人矯風会,労働組合,YMCA,YWCA等である.救世軍は伝道と社会福祉の両方を活動の理念として,その頃結成された.この部門は,教会が先駆けとなったが,20世紀になると,国家や市民団体によって,より徹底した形で行われるようになった.そして,現代日本では市民による社会福祉活動のことを,ボランティア活動と呼ぶことが定着している.<復> 4.現代のボランティア.<復> ボランティア活動を成り立たせる構成要素は,(1)奉仕者の自主自発性,(2)共同体や苦難を持つ人の生活の向上を目指す福祉性,(3)一定の継続したプログラムを持つ継続性,またはそれを可能にするゆるい組織性,(4)奉仕者の無給性である.<復> 日本のボランティア活動は,太平洋戦争後盛んになった.その活動内容は多岐にわたっており,施設児童などに対する1日里親,1人暮し老人の訪問と配食,いのちの電話などの福祉電話,点字翻訳,寄付を目的としたバザーや廃品回収,募金活動,社会啓発のための教育活動,児童教育,子供会,障害者介護,介助,友愛訪問,災害復旧現場での労力奉仕,自然保護運動,巡回医療診療,レクリエーション指導,清掃,献血,難民問題への取組等々無数にある.<復> クリスチャンも一市民として,可能な限りこれらに参与すべきであるとともに,いまだ人の手がけていないことを,開拓したいものである.<復>〔参考文献〕『キリスト者の愛の実践』いのちのことば社,1989;大阪ボランティア協会編『ボランティア』ミネルヴァ書房,1981.(片岡伸光)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社