《5分で分かる》アルコール依存症とは?

アルコール依存症とは?

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アルコール依存症…

過度の飲酒癖,習慣的な飲酒癖から,精神的にも肉体的にもアルコール依存をやめられなくなった状態を言う.日本では現在,約230万人の患者がいると想定されている.依存症患者は飲酒をやめると様々なアルコール離脱症状を発現する.これはいわゆる禁断症状であって,身体的には手の震え,嘔吐,不整脈,その他内臓,特に心臓,肝臓等の疾患である.また過度の飲酒によって,てんかん様の発作を起す場合もある.精神症状としては,性格の変化が起り,抑制がきかなくなり,集中力の低下,見当識障害などが起る.さらに幻聴,幻覚が起り,重症の場合には脳障害などを起す.社会的には家族崩壊などの悲劇を生み,犯罪に至る場合もある.世界のほとんどの民族は,それぞれ固有のアルコールを持っており,古くから人間が日常の苦しみや倦怠感などから逃れ,快楽を求めたり,時には宗教的恍惚状態を求めるために使われた.聖書では箴言20:1,21:17,23:20,21,31や預言書(イザヤ5:11,12,28:1,7,ホセア4:11,アモス6:6,ハバクク2:5)などで,酒の害について警告している.<復> 一度アルコール依存症になると,いやされることは非常に難しい.日本では現在,アルコール依存症者の治療は精神科の病院によってなされている.しかしこの方法もあまり効果が上がっているとは言えない.というのは,アルコール依存症は肉体的な病気とは違って,その人の生活環境に問題がある場合が多いからである.そのようなことから,病院での治療とは別に,依存症者たちが互いに援助し合う様々な「自助グループ」がある.「アルコホリックス・アノニマス」(AA)という自助グループは1935年にアメリカで始まったもので,その方法はキリスト教の思想が裏付けとなっている.それはアルコール依存症であったビル・ウィルスンが,神を信じることによって依存症から回復した友人から,オックスフォード・グループ(後に「道徳再武装運動」〔MRA〕と改称)を紹介されたことに始まる.ビルはそこで新生の体験をし,依存症者の援助の働きを始めた.その方法は,(1)自分がアルコール依存症であることを認めること,(2)自力では回復できない弱い者であることを認めること,(3)上からの力に頼ること,(4)互いに自分の体験を語り合うこと,(5)同じ依存症者に回復のメッセージを語ること,などが骨子となっている.そのほかに,断酒するだけでは回復は不十分で,社会復帰のための援助が必要であるという考えから,いわゆる中間施設の働きもある.このような働きの中では「青十字会」という世界的な組織がある.これは1887年にスイスのジュネーブで創立され,現在,世界の30か国で活動している.日本にはこの働きの一つの施設として札幌に「青十字サマリヤ館」(1978年創立)がある.ここでは共同生活をしながら,生活そのものの指導,軽作業などを通して,社会復帰のための訓練をしている.同時に聖書の学びの時間もあり,主日礼拝には近くの教会に出席を勧めている.<復> アルコール依存症の原因は,単に個人的な問題だけでなく,文化・社会的な問題を考えなければならない.彼らは何度も断酒の誓いを破り,酒を入手するためには嘘もつき,素面(しらふ)の時にはおとなしいのに酒が入ると人格が変ってしまい,喧嘩をしたり道路で酔いつぶれたりするので,彼らは意志薄弱で反社会的な性格の持主のように思われがちである.しかし,このような表面的なことで彼らにレッテルをはるのではなく,その人の置かれている状況をよく考えて対処しなければならない.社会的な歪みの中で困難を感じている人々や,脱落していく人々への援助,また社会復帰のための援助など,キリスト教会が果すべき責任は大きい.<復>〔参考文献〕喜安朗他「特集=アルコール中毒」(「現代思想」10月号所収)青土社,1982;斎藤学編「アルコホリクス物語」(「現代のエスプリ」10月号所収)至文堂,1988;斎藤学他編『アルコール依存症』有斐閣,1988.(荒井隆志)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社