《5分で分かる》ペラギウス,ペラギウス主義とは?

ペラギウス,ペラギウス主義とは?

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ペラギウス,ペラギウス主義…

ペラギウス([英語]Pelagius)は4世紀の中頃,英国でキリスト教徒の家庭に生れたと言われるが正確な生年は不明である.道徳的に極めて謹厳な生活を送り,尊敬を得ていた.5世紀の初めにローマに現れ,当時の退廃した生活からの悔い改めを説き,貴族階級に大きな影響を与えたと言う.初期の著作で,マニ教の二元論的決定論を激しく攻撃している.アウグスティーヌスの反マニ教論を学び,彼の有名な命題である「汝の命じるところを与え,汝の欲するところを命じたまえ」に示されている思想に強く反対した.410—411年にかけての西ゴート族のローマ進攻の際,弟子カエレスティウスとともにアフリカに逃れたが,アウグスティーヌスを避けて,早々にパレスチナに向かう.そこで名声を得たがヒエローニュムス,オロシウスの激しい反対を受けることになる.北アフリカの教会会議でペラギウスの教えは異端とされ,それを伝え聞いたローマ教皇インノケンティウス1世も,この北アフリカ会議の決議を公認した.また彼の後継者ゾーシムスは,最初,ペラギウスとカエレスティウスを支持したが,後にそれを撤回して,彼らの教えを異端として定罪した.ペラギウスはこのようにして,西方教会だけでなく,東方教会でも支持基盤を失い,431年のエペソ総会議において最終的に定罪された.ペラギウスの熱心な支持者には,カエレスティウスのほかにエクラーヌムのユリアーヌスがいる.共にペラギウスの思想を体系的に発展させた神学者である.<復> ペラギウス主義([英語]Pelagianism)の教えの強調点は,善悪を選択することのできる人間の意志の自由にあった.神が人間に律法を課せられたのであるから,当然,人間にはそれを全うする能力がある.人間は正しい行為をする本性的能力を持ち合せているのであって,全く罪のない生活を送ることも不可能ではないと教えた.それゆえ,人間の本性の中に罪は見られないと考えて,親から子へと伝えられる原罪,生れながらの罪への傾向を否定した.アダムにまでたどることのできるのは肉のみであって霊魂ではない.アダムの堕落はその子孫にまで影響を与えるものではない.肉体の死は罪の結果もたらされたものではなく,自然的な死滅にほかならないとする.だから,子供が罪の赦しのために洗礼(バプテスマ)を受ける必要はないとされる.幼児洗礼が,将来犯す罪の赦しの先取りのためと考えていたからである.ペラギウス主義者は,人間の意志に影響を与える神の力としての恩恵を認めない.恩恵とは理性を啓明して,神の意志を見出させ,自分の能力でそれに従うことができるようにするものである.それゆえ,これは律法を通して与えられる神の啓示,特にキリスト御自身の教えや模範等を通して与えられる啓示から成り立つものとされる.従って,恩恵は,単なる助けにほかならず,人間は恩恵がなくても正しく行動することができる.すなわち絶対的に必要なものではなく,相対的に必要なものなのである.それは,人間が神に従って行動することを容易にするにすぎない.ペラギウス主義者は,パウロの教える予定について,人間がそれによって救われたり,罪に定められたりする神の主権的な決定ではなく,人間が自らの決断において選び取るものを神が予知したもうことであると言う.予定は予知にほかならない.<復> ペラギウスが信仰による義や罪の赦しの恩恵について語ったりしていることから,深い罪の自覚と,救いのためにキリストにより頼もうとする信仰を,彼の教えの中に見ようとする研究者もある.けれどもペラギウス主義全体の体系としては,福音主義的要素を欠く合理主義,自然主義,道徳主義の典型と見るべきであろう.→恵み,半ペラギウス主義,予知・予定論.<復>〔参考文献〕『アウグスティヌス著作集9—ペラギウス派駁論集1』教文館,1979;L・ベルコフ『キリスト教教理史』日本基督教団出版局,1989;O・W・ハイック『キリスト教思想史』聖文舎,1969.(橋本龍三)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社