《3分で分かる》ルターの大・小教理問答とは?

ルターの大・小教理問答とは?

ルターの大・小教理問答…

1529年にルターによって出された二つの教理問答書を言う.両者とも信徒の信仰教育・訓練のために書かれたもので,キリスト教信仰の基本についての初歩的な解説である.「小教理問答」は主として青少年のためのもので,子供にもわかるような平易な文体で,しかも問答形式で書かれている.「大教理問答」は,教理問答そのものと言うよりもそれの説き明かしであって,大人を対象としている.原語では書名に「大」という語は含まれず,単に「ドイツ・カテキスムス」である.ルターの教理問答は,内容的には,「昔からキリスト教界の中に保存されており,しかもほとんど正しくは教えられも学ばれもしなかった三つの部門」すなわち十戒(十のことば),使徒信条,主の祈りについての説き明かしに聖礼典(洗礼〔バプテスマ〕と聖餐)についてのそれが加えられたものとなっている.当時のローマ・カトリック教会の教理問答が一般的には主の祈り,アヴェ・マリア,使徒信条,十戒という内容と順序であったのに対し,ルターのものが上記のような構成になっていることの中に,「律法から福音へ」という彼の福音主義的立場がよく表されている.十戒は罪をあらわにし,使徒信条はその罪に対する赦しを宣言し,主の祈りは神のそういうあわれみに対するわれわれの応答であり,そして二つの聖礼典は救いの恵みの手段なのである.その意味で彼の教理問答は,ルター主義的信仰理解の真髄を示すものであり,ルター自ら「奴隷意志論」と「教理問答」以外の自分の書物は灰に帰してもよい,とするほどいつくしんだものであった.<復> 「大・小教理問答」以前にも福音主義陣営ですでに20あまり同種のものがあったにもかかわらず,ルターが自ら筆を執ることになったのは,それまでのものが必ずしも十分に福音的ではなかったという反省に加えて,民衆の教会生活・信仰生活の実態把握を目的にザクセン地方その他でなされた巡察の結果,人々のキリスト教教義の理解は無に等しいことが判明したからである.主の祈りや使徒信条を唱えるのがやっとという牧師や,「天にましますわれらの父」の「父」が誰を指すのかわからないといった信徒がほとんどというひどさであった.失望落胆したルターが巡察後ただちに物したのが,この教理問答である.これは,教職者の説教準備のテキストとして使われることも意図されていたが,ルターは何よりも家庭での信仰教育のために書いたのであった.特に「小教理問答」のほうは,何回も繰り返し口に出して読み暗唱することによっていわばキリスト教教義を体にたたきこむことを目的として書かれた.発刊後それは実際に広く用いられ,「今や15歳の少年少女でさえ,昔の大きな大学の神学者たちよりももっとよくキリスト教教理を心得ている」ほどの成果をもたらしたと言われる.子供の宗教教育のためのこれといった書物が当時ほとんど皆無であったことを考えると,「小教理問答」は宗教改革のもたらした画期的なものの一つと言えよう.1563年に改革派の「ハイデルベルク信仰問答」が出て以来,ルターの教理問答はルーテル派諸教会のアイデンティティーを示すものともなってきた.和協信条においては「一般信徒の聖書」とさえ呼ばれ,今日日本のルーテル教会でも,「小教理問答」を洗礼(バプテスマ)準備の教育に用いるところが多い.→ルター,ルーテル教会,プロテスタント宗教改革.(角川周治郎)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社