《3分で分かる》一元論とは?

一元論とは?

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一元論…

[ドイツ語]Monismus,[英語]monism.一元論という言葉はドイツの哲学者ヴォルフ(Christian Wolff,1679—1754年)によって紹介されたが,この考え方は前ソクラテス期のギリシヤ哲学からすでにあり哲学の歴史とともに古い考えである.すべての実在は究極的には一つであり,すべての存在,現象をこの統一的原理から説明する哲学的形而上学的立場を言う.精神と物質,霊魂と身体を区別する二元論や多様性を実在的と考える多元論に対立する.パルメニデースの一者の思想やエレア学派の運動・変化の否定などは一元論である.<復> 福音主義キリスト教は唯一の真の神を信ずる唯一神論の有神論であるから,一元論のように聞えるが,そうではない.形而上学としての一元論と有神論は両立しない.一元論には創造者なる神と被造者なる人間と世界の質的区別がない.有神論における人格的な神の存在,神の人格性と超越性の観念,創造と摂理の神観念,また神によって創造され摂理によって統御される自然観,歴史観が欠如している.一元論は精神と物質を共に根源的一者の現れと見るか,それとも精神と物質のいずれか一方を究極的実在すなわち実体と見る.前者は,(1)汎神論であり,後者は(2)観念論(唯心論)と(3)唯物論となる.いずれもキリスト教有神論と調和しない.<復> (1)スピノーザは神を実体とし,精神と物質を属性と考えて,精神と物質は共に実体としての神の現れと見る汎神論の形而上学を主張した.<復> (2)ヘーゲルは精神が感覚的知覚を素朴に信じている段階から悟性的知識の段階を経て理性的認識に至る精神の現象学を書いた.その最高の段階は絶対知としての絶対精神の自己認識の完成であるとして,すべての現象を精神の自己認識の過程と考える汎論理主義的観念論の形而上学を主張した.<復> (3)唯物論は物質的存在を実体的なものと考え,物質的存在が意識を規定すると考えて物質的因果関係からすべての精神活動や文化を説明しようとする.また科学的実証主義は数学的物理的因果性によって精神的活動をも説明しようとする機械論的自然観と認識の自然主義的態度によって,実在を数学化し理念化して一元的範疇で見ている.数学的理念が実在のすべてをおおう法則性であると考えている.<復> 精神と物質の関係を進化論の立場に立って単一の普遍的実体から一元的に説明しようとするヘッケルの進化論的一元論は有名である.また一つの究極的実体が人間の認識を通して自己を実現していくと考えるホワイトヘッドの哲学とこれに影響を受けたプロセス神学の汎心理主義も一元論的である.<復> 人間の自然的理性の領域(自然の光)と啓示的信仰の領域(恩恵の光)の総合に成り立つスコラ的二元論に対しては,創造と摂理の人格的三位一体の存在論的神観念を前提とする福音主義的キリスト教有神論は創造の全領域における神の主権を認める一元論であるが,一元論という概念がこの意味で使用されることはあまりなく,普通は上述のいずれかの形而上学的立場を意味している.→有神論,キリスト教哲学,理性と信仰.(春名純人)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社