共同体運動とは?
共同体運動…
1.教会の本質としてのコイノニア(共通の体験・交わり・分ち合い)を回復することによって,教会の革新を求めようとする運動を言う.信仰の連帯は具体的な愛の生活共同体を営むことにおいて表現される.生産手段を含めて一切を共有する共同生活から,協同組合的な助け合いのグループに至るまで多様な形態があり得る.<復> 2.歴史上多くの試みがなされてきた.例を挙げてみよう.<復> (1) フッタライト.16世紀のアナバプテストにとって教会の兄弟姉妹が物質的に助け合うのは当然であり,実際,ある教会の洗礼(バプテスマ)の約束には「必要ならば所有物を分ち合う」ことが含まれていた.フッタライトはその教えを徹底化して財産共同体を形成したのである.1528年,ニコラスブルクに逃れていた群れは絶対平和主義を主張したため町から追放された.その夜,大地に敷いた外套の上に各自が持物を置いて共同の財産としたのが出発である.必要に迫られて一時的に分ち合いを始めたというよりも,共有はキリストに従う弟子の道の当然の帰結だった.だからこそ多くの問題にぶつかりながら450年余りにわたって財産共同体を持続し得たと言える.<復> (2) モラビア兄弟団.1722年,ツィンツェンドルフ伯の領地にモラビアから逃れてきた兄弟団の群れがヘルンフート(天の守り)と呼ばれる共同体を形成した.各地で迫害されていた敬虔派やアナバプテストもここに難を逃れてきたが,互いに自分の立場を主張し合うことが多く,問題が絶えなかった.1727年8月13日の聖餐式に一同は新しい聖霊の力を体験し,その結果として財産共同体が出発した.救い主への信仰と兄弟への愛が持物の共有という形で表されたのである.多くの差異にもかかわらず聖霊による一致に導かれたことは,共同体が理想主義的な人間の決心のみによって成立するのではないことを示している.<復> 3.物質主義・個人主義・競争原理などでむしばまれている現代社会では,愛の連帯を生きることを求めて,多くの教会共同体が活動している.カナダ,アメリカに農業を主体とするコロニーを作っているフッタライト,都会の勤労者が収入を分ち合いつつ信仰共同体を形成するシカゴ近郊のリーバ・プレイス・フェローシップ,聖霊の働きによって教会の再建を経験したテキサスのチャーチ・オブ・リディーマーなどがあるが,いずれもキリストへの生きた信仰のみが共同体のかぎであることを主張する点で共通している.日本では栃木県の大輪に新フッタライト共同体がある.<復>〔参考文献〕榊原巖『教会共同体の研究』(アナバプティズム研究叢書)平凡社,1976;ドライヴァー『教会—イエスの共同体』すぐ書房,1982;Gish, A., Living in Christian Community, Herald Press, 1979.(棚瀬多喜雄)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社