《3分で分かる》改宗,改宗者とは?

改宗,改宗者とは?

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改宗,改宗者…

広い意味では,ある宗教から別の宗教へ転向した者を言うが,特にユダヤ教への転向者を指す.その意味内容は時代とともに大きく変った.<復> 語源となったヘブル語ゲールは,旧約では寄留者,在留異国人,外国人などと訳され,元来はイスラエル人社会に住む他国人を意味する.後に,単なる寄留外国人ではなく,イスラエルの宗教生活に全面的あるいは部分的に自身を投げ入れた者を指す語となった.彼らは律法を守り,いけにえをささげ大祭に参加したが,特に割礼を受けると過越の祭を祝うことが許され,イスラエル人と同様に扱われた(出エジプト12:48).<復> 中間時代になるとこの語は独特の意味を持つものとなる.ヘレニストのディアスポラ・ユダヤ人による改宗者獲得運動が起り,ユダヤ教の律法を受け入れる異邦人が生じ,彼らを改宗者と呼んだ.ミシュナではユダヤ教への改宗者の意味で用いられる.ヨセフスやフィローンもこの意味で用いているが,フィローンは肉体の割礼よりも「欲望,情欲への割礼」のほうが大事だと言った.異邦人は改宗者となることでユダヤ民族の一員と見なされた.<復> パレスチナのユダヤ教では,割礼(男子の改宗者に対して)と洗礼(バプテスマ)といけにえの奉献の三つの儀式を経て改宗者となった者を「義の改宗者」と呼んだ.婦人の改宗者にとっては洗礼が最重要の改宗儀式である.義の改宗者は完全な改宗者とされ,タルムードによればあらゆる点においてイスラエル人である.最も強調されたのは割礼で,割礼を受けない改宗者は「門の改宗者,神を恐れかしこむ者,神を敬う者」と呼ばれ,安息日律法とノアの律法を守ることと唯一神を信じユダヤ教の道徳律を守ることが要求された.彼らは恒久的な入門者,加入者であり,「半改宗者」であった.新約でも両者は区別されている(使徒2:11,13:16,43等).<復> パウロはこれら改宗者への伝道に力を注いだ(使徒13:43,17:17等).イエスはパリサイ派の偏狭な改宗者獲得運動を厳しく批判したが(マタイ23:15),70年のエルサレム陥落以後,パレスチナでは改宗者獲得運動は急速に衰え,ハドリアーヌス帝による割礼禁止令(132年)を経,138年のアントーニーヌス・ピウス帝の宗教寛容令によって,割礼はユダヤ人に限って認められたため,割礼を伴う改宗は事実上禁止された.中世のユダヤ人迫害下には,ユダヤ人でキリスト教に形式だけの改宗を行うマラノ(豚の意味)という逆改宗者(隠れユダヤ教徒)が現れた.<復>〔参考文献〕Feinberg, C. L.,“Proselyte,”The Zondervan Pictorial Encyclopedia of the Bible, Zondervan, 1979.(熊谷 徹)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

新キリスト教辞典
1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社