霊的照明とは?
霊的照明…
[英語]illumination of the Holy Spirit.神と霊的な事柄とに関してその内容を現し,それを伝達し,理解と洞察を人間に与えてその意味を把握させるのは聖霊の働きとされている.「神のみこころのことは,神の御霊のほかにはだれも知りません」(Ⅰコリント2:11.参照ヨハネ14:17,26,16:13,14).その過程における聖霊の働きは,霊感(inspiration)と照明(illumination)とに分けて理解することができる.霊感が,聖霊がいかにして聖書記者をとらえて神のみことばを完全に記すことになったかという啓示の方法論を扱うのに対して,霊的照明とは,信仰者の目を開いて,聖書の意味を明らかにし理解させる聖霊の働きである.それは,詩篇119:18の「私の目を開いてください.私が,あなたのみおしえのうちにある奇しいことに目を留めるようにしてください」という祈りに応えるものである.<復> 確かに,聖書は神のことばとしての権威をそれ自体の中に有していて,人間的な権威の裏付けを必要とするものではない.しかし,霊的照明を受けていない「生まれながらの人間」には啓示された事柄を悟ることができないばかりか,それを受け入れることができず,かえって愚かしく感じられるのである(Ⅰコリント1:20,21,2:14).神のすばらしいみことばを味わうためには,聖霊にあずかる者とならなければならない(ヘブル6:4,5).<復> さらに,照明が聖霊の働きであるとすれば,その働きが推進されるための条件として当然,働きを受ける側の信仰の資質が問題とされる.みことばが語られても信仰によって結び付けられない場合,聖霊の働きが無益となることをヘブル人への手紙の記者は述べている(4:2).照明のわざの障害となるものを総括すると,ローマ8章に描かれているように,「御霊に従う」「御霊による」と対照される,肉の思いということになろう(8:5‐8).Ⅰコリント3章では,肉の思いとは具体的に,信徒の間のねたみや争いであると警告され,肉性に捕われているような「キリストにある幼子」に対して堅い食物を与えることの困難をパウロは述べている(Ⅰコリント3:1‐3).御霊の照明を受けて「神の深みにまで及ぶ」(Ⅰコリント2:10)ためには,この世と調子を合せずに,心の一新によって自分を変え,神のみこころは何か,何が良いことで,神に受け入れられ,完全であるのかをわきまえ知ること(ローマ12:2)が,絶対的に必要とされているのである.→聖霊の内的証言,聖書の霊感,聖霊・聖霊論.(藤本 満)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社