バルメン宣言とは?
バルメン宣言…
[ドイツ語]Barmer Theologische Erkla¨rung.ドイツにおけるナチス台頭との深い関係の中で「ドイツ的キリスト者」(Deutsche Christen)と呼ばれている運動が急激に発展した.そして1932年にはその信仰運動の10項目から成る「基本方針」が打ち出された.それは,すべての領域において″一元化″を求めていたナチスの政策に合致する帝国教会の創設,非科学的なドイツ民族の純粋性と優秀性の主張,偏狭なナショナリズムによるドイツ的信仰の強調,ユダヤ的なものの排斥を内容とするものであった.これらの点はすべてナチスの世界観と重なるものであった.1933年ヒットラーの政権掌握とともに,ナチ政府は,28の領邦教会を「ドイツ的キリスト者」の中のルートヴィヒ・ミュラーに全権を与えて帝国教会へと統合させ,前述の基本方針を実施に移そうとした.言うまでもなく,この教会統合政策は,キリスト教のドイツ民族化を唱え,民族の法をただちに教会の秩序と見なす「ドイツ的キリスト者」たちによって推進されることとなった.このような「教会を荒廃させ,そのことによってドイツ福音主義教会の一致をも破壊するドイツ的キリスト者と現在の帝国教会当局の誤謬に直面して,…福音主義の真理を告白する」(宣言前文)必要を強く感じた138名の代議員(ルター派,改革派,合同教会の教職87名,信徒51名,ニーメラー,バルト,フォーゲル,ハイネマン,リッターなどの面々が含まれていた)によって,ブッパータールのバルメンにおいて第1回告白大会(1934年)が開かれ,一般に「バルメン宣言」として知られている「ドイツ福音主義教会の今日の状況に対する神学的宣言」を公にしたのである.バルトが中心となって起草されたこの宣言は全体で6箇条から成っている.第1条は,キリストのみが唯一の神の言葉であるので,そのほかのいかなる歴史上の出来事(例えばナチスの革命)も神の啓示とは見なされないこと,第2条は,イエス・キリストはわれわれが生きるすべての領域の主であり王であること,第3条は教会の秩序の独自性,第4条は政治的支配からの教会の独立性,第5条は教会と国家のそれぞれの使命の確認,第6条は教会の自由と神の委託の確認であり,それはまた専制政治に対する抗議の表明でもある.この宣言は教会闘争史上の貴重な証言文書である.(宇田 進)
(出典:『新キリスト教辞典』いのちのことば社, 1991)

1259頁 定価14000円+税
いのちのことば社