《じっくり解説》塩の海とは?

塩の海とは?

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塩の海…

[ヘブル語]ヤーム・ハッメラフ.パレスチナの東部にあってトランス・ヨルダンとの境をなすヨルダン渓谷は,北はヘルモン山からフーレ湖,ガリラヤ湖,ヨルダン川を経て南端の塩の海に至っている.塩の海の別名は死海である.この湖の水面は地中海海面より約396メートルも低く,世界で一番低い水面であり,その大きさは南北約76キロ,東西約14キロ,面積は約1050平方キロである.聖書の中では,塩の海(創14:3,民34:3,12,申3:17,ヨシ3:16,15:2,5,18:19)のほかに,アラバの海(申3:17,4:49,ヨシ3:16,Ⅱ列14:25),東の海(エゼ47:18,ヨエ2:20)とも呼ばれ,また,聖書以外では,ロトの海(『ユダヤ古代誌』),ソドムの海(「第2エスドラス書〔エズラ記(ラテン語)〕」,『ユダヤ古代誌』)とも呼ばれている.塩の海には北からヨルダン川,東からアルノン川が流れ込んでいるが,流れ出る出口は全くなく,この地域一帯の熱帯性の高い気温による水分の蒸発によって一定水面が保たれている.塩の海への流入量は,20世紀初めは,1日600万トンにも及んでいたが,1948年のイスラエル建国以来,イスラエル,ヨルダン両国がヨルダン川,アルノン川の水を灌漑用水に使用しており,流入量も急激に減り,それに伴って水面も下がっている.なお,1942年6月21日には,この地域で72゜Cの気温が記録されたが,これは観測史上,世界第3位の高温である.ヨルダン川流域には,岩塩の層があるために,ヨルダン川の水にはごく微量の塩分が含まれているが,流れ出る川のない塩の海に入ると水分の蒸発が激しいために塩分は濃縮される.その結果,塩分の含有量は普通の海の約6倍の26.4パーセントにも達している.成分も普通の海では塩化ナトリウムが主成分であるが,塩の海では塩化マグネシウムや塩化カルシウムが主成分である.この濃い塩分のため,湖水の比重は16゜Cで1.2274にも達し,魚類,貝類の生存は難しく,また,人が塩の海に入ってもからだが浮いてしまう.最近では,マグネシウムやカルシウムを多く含んでいる湖水や湖底の結晶から,金属を抽出,精製する工場も建てられている.
アブラハムやロトの時代には,この地域はよくうるおっており(創13:10),湖畔のソドムやゴモラのような町は力もあり富もあった(創14:10‐11).この両都市は神のさばきによって壊滅したが(創19:23‐28),その後,地震による地盤沈下により水没し,現在は死海の南部の水面下にあると考古学者たちは推論している.なお西岸の南部には「ソドムの山」と呼ばれる岩塩の山があり,時々,岩塩の柱ができることがあるが,それが婦人の姿に見える時,「ロトの妻」と呼ばれたりする.これは,創19:26のロトの妻の出来事に由来する.モーセの時代までには「瀝青の穴」があるシディムの谷が塩の海の一部になったようである(創14:3,10).民数記では,塩の海がイスラエル人に約束されたカナンの地の東側の境界線となっており(民34:1‐12),エゼキエルの時代にも,その境界線が確認されている(エゼ47:13‐20).エン・ゲディは西岸中部のオアシスを中心に発展した町であるが,古代の寺院の遺跡なども見つかり,前4千年頃にすでに居住の跡が見られる.本格的な定住はもっと後代のようである.この地は,ダビデがサウロに追われた時に住んだことがあり(Ⅰサム23:29,24:1/24:1,2),雅歌には「エン・ゲディのぶどう畑にあるヘンナ樹の花ぶさ」の麗しさが歌われている(雅1:14).塩の谷は南岸にある谷であるが,南王国ユダの王アマツヤがエドム人を打ち破った地であり(Ⅱ列14:7,Ⅱ歴25:11),また,それ以前にもダビデ王や彼の将軍たちが同じくエドム人を打ち負かした地である(Ⅱサム8:13,Ⅰ歴18:12,詩60篇題目/60:1-2).また,マサダは西岸の岩だらけの荒野にあるが,この地はパレスチナの中でも有数の天然の要塞であり,ハスモン朝のアンティゴノスがヘロデ朝と対立した時(前42年),ヘロデ家の人々が隠れた所である.また,ローマ帝国がパレスチナの直接統治を始めた時,これを嫌うユダヤ人たちがローマに対する反乱の最後のとりでとしてたてこもったのもここである(紀元73年).西岸北部にはクムランがある.ここは1947年以後死海写本がこの地の洞窟で見つかったことにより一躍有名になった.ここには自分たちを「聖なる残された民」と信じ,自分たちこそ神の契約の正統な後継者と信じていたエッセネ派に近いクムラン宗団の人々が住んでいた.預言者エゼキエルは,聖なる神殿の水が神殿の東の地域に流れ出し,アラバを通って塩の海に流れ込む時に,塩水が真水に変えられ,魚のいない死の海は魚のあふれるいのちの海となり,川のほとりや塩の海の両岸にはあらゆる果樹が生長し,緑のあふれる地となることを預言した(エゼ47:8‐12).(金本 悟)

(出典:金本悟『新聖書辞典 新装版』いのちのことば社, 2014)

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