《じっくり解説》ヨセフ(族)とは?

ヨセフ(族)とは?

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ヨセフ(族)…

⒈([ヘブル語]yôsēp, yehôsēp) ⑴族長ヤコブの11番目の子で,ラケルから生まれた最初の子である.「ヨセフ」という名は,「主がもうひとりの子を私に加えてくださるように」と言われた「加える」の動詞[ヘブル語]ヤーサフに由来する(創30:22‐24).ヤコブが20年間ラバンのもとで仕えてから,カナンの地に帰る6年ほど前に,パダン・アラムで生まれた(創31:41).ヨセフの生涯の記述は,非常に具体的で詳細に記されており,しかも全体に調和があり,まとまった形で記録されている.
ヨセフは,父ヤコブの年老いてからの子であり,しかもヤコブが愛したラケルの最初の子であったので,他の異母兄たちよりもヤコブに愛された(創37:1‐3).彼には特別に,「そでつきの長服」が与えられた.結果としてヨセフは兄たちから憎まれることになった.特に,兄たちがヨセフに仕えることになるという夢の話をしたので,ますます憎まれるようになり,ヨセフは兄たちに殺されそうになったが,長兄ルベンに助けられ,穴に投げ込まれた.しかしルベンがいない間に,他の兄たちはヨセフをイシュマエル人に売り,イシュマエル人はヨセフをエジプトに連れていった.ヨセフが17歳の時のことであった.兄たちは,ヨセフの長服を血に浸して父ヤコブのところに持っていき,ヨセフは野獣に殺されたと偽った.こうしてヨセフは,エジプトの王パロの廷臣で,その侍従長ポティファルに売られ,奴隷となった(創37章).
ポティファルのもとでのヨセフは,主が共におられたので,そのなすすべてのことにおいて成功を収めた.彼は,ポティファルの側近に任じられ,家の財産の管理をすべてゆだねられた.しかし,ポティファルの妻のざん言により,無実の罪をきせられ,数年の間王の監獄に入れられることになった.そこでも彼は監獄の長に認められ,全囚人の監督を任された(創39章).その頃,パロの献酌官長と調理官長とがパロに対して罪を犯したために,ヨセフと同じ監獄に入れられた.彼ら2人は夢を見たが,その夢の意味をヨセフが解き明かすと,その解き明かしの通りになり,献酌官長はもとの役に戻り,調理官長は木にかけられて殺された.ヨセフは,献酌官長に自分のことを思い出してくれるように願ったが,彼はヨセフのことを忘れてしまった(創40章).
それから2年の後,パロが2つの夢を見て,エジプトのすべての呪法師にその解き明かしを命じたが,解き明かすことのできるものはだれもいなかった.その時,先の献酌官長がヨセフのことを思い出し,監獄でのいきさつをパロに話した.パロはヨセフを呼び出して,その夢の解き明かしを命じた.ヨセフは,その解き明かしで示されていることは,これから神のなさろうとしていることであって,エジプト全土が7年間大豊作の恵みにあずかり,その後7年間のききんが起こり,地は荒廃するというものであった.そしてヨセフは,そのききんのために,豊作の7年の間に備えをするようにパロに進言した.このことは,パロとすべての家臣たちに認められ,パロはエジプトの全地をヨセフに支配させることにした.これはヨセフが30歳の時であった.ヨセフは,オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナテと結婚し,ききんがくる前に2人の子マナセとエフライムをもうけた.ヨセフは,豊作の7年間,食糧を町々に蓄えた.そして豊作の7年が終わると,7年のききんがやってきた(創41章).カナンの地にいたヤコブたちもききんにあい,穀物を買うために,ヤコブは末の子ベニヤミンを除く10人の子どもたちをエジプトに遣わした.この10人は,ヨセフのところに来て,顔を地につけて伏し拝んだ.これは,ヨセフがエジプトに売られる前に見た夢の成就であった.ヨセフは,弟ベニヤミンのことで兄たちを試みた.2回目にベニヤミンが連れてこられた時,ヨセフは自分の身を明かし,彼らを赦すことを告げた.ヨセフは,自分がエジプトに売られたのは,ヤコブの家の救いのために自分が先に遣わされたのであると言い,父と共にエジプトの地に移り住むように勧めた(創42‐45章).ヤコブとその一族とはエジプトに移り,ヨセフのゆえにエジプトのパロの歓迎を受けた.そして,彼らはゴシェンの地に住むことが許され,エジプトの地で大いなる国民となるという神の約束を受けた(創46‐47章).ヨセフは,父ヤコブが死んだ時,父をミイラにし,父の約束に従ってカナンの地に行き,そこで7日間葬儀を行った.父の死後,兄たちはヨセフを恐れたが,ヨセフは兄たちに神の恵みと計画の大きさを語った.ヨセフは110歳で死んだ.そして自分の遺体をカナンの地に葬るようにとイスラエルの子らに遺言した(創50章).出エジプトの時に彼の骨はカナンの地に運ばれ,シェケムに葬られた(出13:19,ヨシ24:32).
⑵イスラエルが約束の地カナンに入るのに先立って,カナンの地を探るためにモーセによって選ばれた12人のうち,イッサカル部族より選ばれたイグアルの父(民13:7).
⑶ダビデ王の時に,音楽をもって主に奉仕した人々のかしらで,アサフの子(Ⅰ歴25:2,9).
⑷捕囚から帰還して後,エズラの勧めにより異邦人の妻を離縁したビヌイ族の一人(エズ10:42).
⑸大祭司エホヤキムの時代に,祭司で,シェバヌヤ族のかしらであった(ネヘ12:14).
⒉([ギリシャ語]Iōsēph) ⑴イエスの母マリヤの夫(マタ1:16,ルカ3:23).彼はマリヤと婚約中であった時に,マリヤが身重になったことで,ひそかに彼女を去らせようとしたが,主の使いによって,聖霊によってマリヤがみごもったことを知り,彼女を妻として迎え入れた.ヨセフはその子をイエスと名づけた(マタ1:18‐25).イエスの誕生の時には住民登録がなされ,ヨセフはダビデの家系であったので,マリヤと共にユダヤのベツレヘムに向かい,そこでイエスの誕生を迎えた(ルカ2:1‐7).ヘロデ大王は,ユダヤ人の王として生まれた子がいるという知らせを聞いて恐れ,2歳以下の男児を殺そうとした.その時,ヨセフは天の使いの御告げを受け,エジプトに逃れた.そしてヘロデが死ぬまでそこに滞在し,ヘロデの死後ナザレの町に移り住んだ(マタ2:13‐23).ヨセフは,毎年過越の祭りにはエルサレムに行っていた.イエスが12歳の時,宮で教師たちと話し合っているのを見て,両親は非常に驚いた(ルカ2:41‐51).ヨセフは大工であった(マタ13:55,マコ6:3)ので,イエスも父ヨセフに仕えて,大工の仕事を手伝った.ヨセフは,イエスが公の働きを始めた頃は生きていたと思われるが(マタ13:55),イエスが十字架につけられた時には,イエスが母マリヤをヨハネに託していることから(ヨハ19:26‐27),ヨセフは,すでに死んでいたと考えられる.ヨセフの語ったことばは聖書には記録されていないが,神を恐れ,神に忠実に生きた人物であったと思われる.
⑵イエスの弟の一人(マタ13:55).マコ6:3ではヨセと記されている.
⑶アリマタヤの金持ちのユダヤ人で,ユダヤ人議会の有力な議員.神の国を強く待ち望んでおり,イエスの弟子の一人になっていた(マタ27:57,マコ15:43).彼は他の議員たちの計画や行動には同意せず,ピラトに願ってイエスのからだを十字架から取り下ろして,亜麻布に包み,自分の墓に納めた(マタ27:57‐60,ルカ23:50‐53).ニコデモも彼と行動を共にした(ヨハ19:39).
⑷イエスの先祖の一人で,マタテヤの子(ルカ3:24).
⑸イエスの先祖の一人で,ヨナムの子(ルカ3:30).
⑹小ヤコブの兄弟(マタ27:56).ヨセとも呼ばれている(マコ15:40).
⑺イエスの弟子の一人で,バルサバまたはユストと呼ばれていた人.イスカリオテ・ユダが十二使徒から脱落した時,その補充のために候補にあげられたが,くじに当たらず,選ばれなかった(使1:23‐26).
⑻バルナバの別名(使4:36).
⒊ヨセフ族(ヨシ16:1).ヤコブの12人の息子の一人であったヨセフから,後の北王国イスラエルに属するマナセとエフライムの両部族が出た.これは,ヨセフが自分の子マナセとエフライムを年老いた父ヤコブのもとに連れてきて,ヤコブから2人の息子に祝福を受けさせ,将来について祈ってもらったことに由来する(創48:1‐22).それゆえヨセフ族という呼び名は一般には用いられず,イスラエル12部族としては,通常エフライムとマナセが部族名として用いられる.(上沼昌雄)

(出典:上沼昌雄『新聖書辞典 新装版』いのちのことば社, 2014)

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