《じっくり解説》バルナバとは?

バルナバとは?

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バルナバ…

([ギリシャ語]Barnabas) ギリシヤ語のバルナバという名前は,使4:36では「慰めの子」,あるいは「勧めの子」の意味であると説明されている(参照欄外注).バルナバは,キプロス生まれのレビ人で,ヨセフの別名である.彼は福音が宣べ伝えられ始めた初期にキリストを信じた.彼はヨハネ・マルコのいとこであった(コロ4:10).ペテロの奇蹟的出獄の際,弟子たちが集まっていたのは,「マルコと呼ばれているヨハネの母マリヤの家」(使12:12)であったので,この家は,エルサレムにおけるキリスト者の集会所になっていたのであろう.女中がいた(使12:13)ことから考えてみても,かなりよい暮らしをしていたことがうかがえる.バルナバもそうしたマルコ一家との関係でイエスの弟子となり,使徒たちとも知り合っていたものと思われる.アレキサンドリヤのクレメンスは彼を70人の弟子の一人であると呼んでいる.古くからイエスの弟子であった同じキプロス人マナソン(使21:16)なども,おそらく早い頃からのバルナバの友であったと思われる.バルナバはこうしたキプロス出身の人々と交わり,親戚のマリヤの家庭とも親しくしていたことであろう.彼はレビ人であったから,祭司たちの多くの者が信仰に入ったこととも(使6:7),関係があったと思われる.彼は,自分の持ち物であった畑を売り払い,その代金を,エルサレム教会の貧しいキリスト者を支えるためにささげた(使4:36以下).使11:24において彼は「りっぱな人物で,聖霊と信仰に満ちている人」として描かれている.このことからもわかるように,彼は早くから指導者として認められていたようである.エルサレムの教会が回心後のパウロを受け入れることをためらっていた時には,バルナバがパウロを弁護して,彼らの恐れを取り除いた(使9:27).バルナバはパウロの理解者であり,紹介者であった.彼はパウロを世に出した育ての親であるとも言えるであろう.アンテオケでの働きが始まって間もなく,エルサレム教会はバルナバをアンテオケに送り,指導に当たらせた.彼はそこでしばらく働いた後にタルソに行き,パウロを同労者として連れてきた(使11:22‐26).2人は1年後,当時ききんが起こって困難な状態にあったエルサレムの兄弟たちに対する救援物資を持って,アンテオケの教会から遣わされた(使11:27‐30).その後ヨハネ・マルコを伴って,アンテオケに帰った2人は,教会から福音伝道のために送り出された(使13:2‐3).2人は共にキプロス,ピシデヤのアンテオケ,イコニオム,ルステラ,デルベで伝道の働きを進めた.その際パウロと同じようにバルナバも使徒と呼ばれている(使14:14).使13:43まではバルナバが主導権をとっており,それ以後は,パウロがとっていたようである.ルステラでパウロが1人の生まれつき足の不自由な人をいやしたことから,その住民たちはバルナバをゼウスと呼び,パウロをヘルメスと呼んで礼拝しようとした(使14:8‐18).さて,彼らがアンテオケに帰った後,教会は彼らをエルサレム会議に送った(使15:2).会議の後,彼らはシリヤ,およびアジヤにある諸教会のために会議の決議文を委託された(使15:22‐35).このように行動を共にしていたバルナバとパウロの間にも,意見の相違が見られた.ガラ2:13には,バルナバまでが割礼派の人々を恐れて本心を偽った行動をとったことが,パウロに非難されている.また,もっと深刻な対立は,パウロが第2回伝道旅行を提案した時のことである.バルナバがいとこのマルコの同行を望んだのに対して,パウロは第1回伝道旅行の時にマルコが脱落してしまったことから,これを拒絶した.その結果パウロはシラスを連れて小アジヤに向かい,バルナバはマルコを連れてキプロスに渡った.これは,教理上の意見の違いからではなく,ヨハネ・マルコに対する評価の違いからの別行動であった.しかしこのことによって2つの伝道活動がなされ,マルコもそのままうずもれてしまわずにすんだことから,結果的にはよかったのではないかとの見解もある.いずれにしても,この出来事以後のバルナバの消息は明らかでない.バルナバとパウロの友情は,このような意見の対立によって終わってしまうことはなかったようである.パウロの手紙の中に見られるバルナバへの言及は,パウロが同労者として働いたバルナバを高く評価し続けていることを示している(Ⅰコリ9:6,ガラ2:1,9,13,コロ4:10).後にはパウロとマルコの関係も回復されたようである(Ⅱテモ4:11,ピレ24節).初代教会のテルトゥリアヌスを初め,ヘブル人への手紙の著者をバルナバとする者がいるが,これは決定的なものとは言えないであろう.(竹本邦昭)

(出典:竹本邦昭『新聖書辞典 新装版』いのちのことば社, 2014)

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