《5分で分かる》ナイルとは?

ナイルとは?

スポンサーリンク

ナイル…

これは新約聖書には出てこない.[ギリシャ語]ホ・ネイロスは70人訳に出ていないし,そのヘブル読みも旧約聖書に出ていないので,「ユーフラテス」(創2:14)への言及とは性質が違う.
新改訳が「ナイル」「ナイル川」を訳語にするのは[ヘブル語]イェオール(創41:1,2,17,18,出1:22,2:3,5,4:9,7:17,18,20,21,24,25,8:3,9,11,17:5,イザ19:7,8,23:3,10,エレ46:7,8,エゼ30:12,アモ8:8,9:5,ナホ3:8,ゼカ10:11)と,[ヘブル語]シーホール(エレ2:18)である.
前者は元来「川」を意味したエジプト語(itrw)の借用語であるが,このエジプト語は特にナイルを意味する半ば固有名詞になっていたので,[ヘブル語]イェオールがナイルを表すことが多いのも当然であろう.
複数形はナイルの支流や運河を指すか(出7:19,イザ19:6),威厳を表す複数形で大川「ナイル川」(ナホ3:8)のことか,あるいは一般河川なのかも定かでない.ヨブ28:10では水の満ちた坑道を表すのに用いられているからである.
[ヘブル語]シーホールは,新改訳は他の箇所では「シホル」と音写している(ヨシ13:3,Ⅰ歴13:5,イザ23:3).ヨシ13:3「エジプトの東のシホル」はイスラエルに割り当てられる領土の境界とされているから,シホルがナイル川支流の意味か,「エジプト川」つまりワディ・エル・アリシュ(民34:5,ヨシ15:4,47,Ⅰ列8:65等)なのか,決めがたい.後者のエジプト「川」は乾期には干上がる川床を意味する[ヘブル語]ナハル(nahal)である.しかし新改訳が「エジプト川」と訳すアモ9:5は[ヘブル語]イェオールで,「ナイル川」と並行句である.通常ユーフラテスを表す[ヘブル語]ナーハール(nāhār)を用いてナイルを「エジプトの[ヘブル語]ナーハール」とさえ呼び得るのだから(創15:18),使用された単語から単純に訳すことはできないことが明らかであろう.
ナイルについての古代の知識についてはヘロドトス『歴史』2:2‐34に書かれている.ナイル川が5月に最低の水位に減り,7―9月に氾濫することを古代イスラエル人も知っていた(イザ23:10,エレ46:7‐8,アモ8:8,9:5).
ビクトリア湖から流れる白ナイルとタナ湖からくる青ナイルとがハルツームで合流してナイル本流となり,6瀑布を経てアスワンに至り,さらに下ってカイロ近くから何本かの流れに分かれてデルタを形成している.その全長はおよそ5600キロに及ぶ.

(出典:榊原康夫『新聖書辞典 新装版』いのちのことば社, 2014)

新装版 新聖書辞典
定価6900円+税
いのちのことば社