《じっくり解説》エリヤとは?

エリヤとは?

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エリヤ…

⒈([ヘブル語]’ēliyyāhû,短縮形[ヘブル語]’ēliyyāh,[ギリシャ語]Ēlias) 「主こそ神である」という意味.⑴前9世紀前半に北王国イスラエルで活躍した預言者.当初ギルアデのティシュベに居住したことから,「ティシュベ人」として紹介され,同名異人と区別される(Ⅰ列17:1,21:17,28,Ⅱ列1:3,8,9:36).彼の出身地ティシュベは,普通,ヨルダン川の東岸の支流であるケリテ川のほとり,ヤベシュ・ギルアデの東方約10キロの所にあったとされる.
エリヤの働きは,おもにⅠ列17章‐Ⅱ列2章に述べられる.彼の預言活動は,アハブ,アハズヤ王治世下における北イスラエルの宗教的堕落を背景としている.アハブは,ヤロブアムが導入した子牛礼拝を踏襲しただけでなく,フェニキヤから迎えた妻イゼベルのためにバアル,メルカルト礼拝の神殿を建て,またアシェラ像を作らせた(参照Ⅰ列16:29‐33).
エリヤはアハブ王の前でききんの到来を預言し,ヨルダン川東方に身を隠した(Ⅰ列17:1‐6).この預言は,雨期と,豊穣の源と信じられていたバアル神礼拝への大胆な挑戦であった.予告は適中し,きびしいかんばつが続いたので,エリヤ自身もシドンの南にあるツァレファテに移住し,やもめと同居した(Ⅰ列17:7‐16).彼女のひとり息子が死んだ時,エリヤは祈りによって彼を生き返らせた(Ⅰ列17:17‐24).
Ⅰ列18章には,カルメル山上でのバアル預言者たちとの対決が述べられている.異教の預言者は狂乱してバアル神の顕現を祈ったが,何も起こらなかった(Ⅰ列18:20‐29).一方エリヤは祭壇を修復し,いけにえを備え,さらに水を注いで後に神の火を呼び下した(Ⅰ列18:30‐38).この後偽りの預言者がキション川のほとりで処刑されたことは,現代人には残酷に響くかもしれないが,当時の社会的,宗教的情勢からすれば必要な処置であった(参照申13:12‐18/13:13-19,17:2‐5).この粛清の後,ききんは終わった(Ⅰ列18:41‐46).
ツロからバアル,メルカルト礼拝を持ち込み,その主導者でもあったイゼベル王妃は,エリヤへの敵意を燃え上がらせた(Ⅰ列19:1‐2).エリヤは南へ逃れ,ベエル・シェバで神の使いに守られて休息した後,シナイ半島ホレブ山にたどり着いた(Ⅰ列19:3‐8).かつてモーセが神に出会った山で,エリヤも神の顕現を体験し,新たな使命を与えられた.つまり,アラムのハザエル王とイスラエルのエフー王の任職,および後継者エリシャの訓育である(Ⅰ列19:9‐18).エリシャの召命はⅠ列19:19‐21に記されている.
アハブとイゼベルが所領地拡大のためにゆえなくナボテを殺した時,エリヤは敢然とその罪を暴露し,神のさばきとイゼベルの惨死を預言した(Ⅰ列21:1‐24).しかし,これを聞いて王が悔い改めたので,神は彼への審判を留保された(Ⅰ列21:25‐29).
アハブの次に王位を継いだアハズヤは,病気になった時,ペリシテ人が信奉した守護神に心を寄せた.エリヤは彼の不信仰を批判し,それは不治の病となると繰り返し預言した(Ⅱ列1:1‐16).
エリヤはまた,ユダの王ヨラムに書簡を送り,偶像礼拝を責め,審判を預言したと伝えられる(Ⅱ歴21:11‐15).おそらく,天に上げられる前の預言で,弟子の手によって届けられたものであろう.彼が奇蹟的に竜巻によって天に上った後は,エリシャがその霊的資質と預言活動を受け継いだ(Ⅱ列2:1‐15).
概説的に言って,エリヤの使命は,モーセ五書に期待されるような真の信仰を,偶像礼拝の蔓延した彼の時代に回復することであった.それゆえ,フェニキヤやペリシテなど近隣諸国から押し寄せる異教の排除がその具体的な課題であった.この宗教浄化の働きに注目したマラキは,彼の名を終末的改革者の称号として用いている(マラ4:5/3:23.参照マラ3:1).エリヤが,おそらくサムエルの時代から存在していた「預言者のともがら」と呼ばれる集団とかかわっていたことは確実である(Ⅱ列2:3,5,7等.参照Ⅰサム3:20,Ⅰ列20:35).しかしながら,「神の人」(Ⅰ列17:18)とも呼ばれる彼の権威は人為的なものではなく,神から与えられたものであり,その源は神のことばであった(Ⅰ列17:2,8,14,18:1,19:15‐18等).
旧新約中間時代にエリヤの再来への期待が高まり,モーセと並んで,御使い的な姿で思い描かれるようになった.タルグムによれば,ディアスポラの選民はモーセとエリヤによって集められると言われる.新約以後のラビ文献によれば,エリヤは人の言動を記録する天上の書記とされる.
新約聖書中,エリヤは30回ほど言及される.彼は「祈りの力」を実証した人物であり(ヤコ5:16‐18.参照ルカ9:54欄外注),真の信仰者のもとに遣わされる預言者である(ルカ4:25‐26).パウロも彼の生涯を熟知していた(ロマ11:2‐4).エリヤはメシヤの到来に備えて人々を整える終末的な先駆者である(参照シラ書48:10).この意味において,バプテスマのヨハネは新約時代のエリヤと見られる(マタ11:14,17:10‐13,マコ9:11‐13).その共通性は外見(Ⅱ列1:8,マタ3:4,マコ1:6)よりむしろ信仰浄化の使命にある(ルカ1:17).だが,当のヨハネ自身はエリヤと同一視されることを謙遜にも辞退している(ヨハ1:21,25).主の変貌に際してエリヤが現れたという叙述(マタ17:3‐4,マコ9:4‐5,ルカ9:30,33),キリストが十字架上で朗唱した詩22:1/22:2を人々がエリヤに助けを求めているものと誤解したことは(マタ27:46‐49,マコ15:34‐36),中間時代に生じたエリヤの概念と結びついている.また,ある人々はイエス自身をエリヤの再来と見ていた(マコ6:15,8:28,ルカ9:8,19).敬虔なユダヤ教徒は,今日でも,過越の祭りにおいてエリヤの到来を待つ信仰を表明している.
⑵ベニヤミン部族に属するエロハムの子(Ⅰ歴8:27).
⑶異邦人の妻を離縁した祭司.ハリム族の一員(エズ10:21).
⑷異邦人の妻を離縁した,エラム族の一人(エズ10:26).
⒉([ヘブル語]yeriyyāhû,短縮形[ヘブル語]yeriyyāh)「主は見ている」という意味.レビ人ケハテ氏族に属するヘブロンの子(Ⅰ歴23:19,24:23,26:31).(石黒則年)

(出典:石黒則年『新聖書辞典 新装版』いのちのことば社, 2014)

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