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奇跡の歌―声を失った天才テノール歌手の復活
テノール歌手 ベー・チェチョル
ベー氏は日本でテレビに取り上げられたこもあるので、ご存じの方も多いかもしれません。
ベー氏は韓国出身でイタリアに音楽留学し、卒業後はオペラ歌手として次々と成功を収めていました。
そんなある日、喉に変調を感じて医者にかかると、甲状腺がんであることがわかりました。それもかなり悪性で、手術によって命は取り止めたものの、声がまったく出なくなってしまいました。子供の頃から歌一筋で生きてきたベー氏にとって、それは絶望以外の何ものでもありませんでした。
それでも何とかまた歌える方法はないかと探っていると、声帯機能回復手術という治療法があるとわかりました。その権威は日本にいた一色信彦医師でした。来日して受けた手術は無事に成功し、懸命なリハビリのかいもあって、ベー氏の歌声はまただんだんとよみがえっていきます。医師からは「過度に期待をしないでください」と言われたし、歌えるといっても以前のようにはいきません。けれどもここまで歌えるようになったのは、まさに奇跡だといえるまで、ベー氏の歌声は復活しました。
ベー氏は信仰をもってこの出来事を振り返り、こう述懐しています。「これほどみんなに心配をかけていてこんなことを言うのはおかしいんだけど、僕は病気になってよかったのかもしれない……。このことがあったおかげで、僕は人生で何が一番大切で、何のための歌うのか、改めて教えられたんだ」
「病気になってよかったのかもしれない」。これほどの試練に遭って、それは自分にとってよかったと言えるのは、まさに信仰のなせるわざではないかと思いました。
最後にこの本の冒頭に掲げられている聖書のことばを引用します。
「苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした。私はそれであなたのおきてを学びました」(詩篇119・71)