《3分でわかる》ヤコブとは何者か?

ヤコブとは?

12部族の父 ヤコブとは…

アブラハムの息子イサクの妻リベカにはなかなか子どもが生まれませんでしたが、ようやく身ごもった子どもは双子でした。そしてその双子については、兄が弟に仕えるようになるという神のお告げがありました。

こうして生まれてきたのが、兄エサウと弟のヤコブでした。やがて猟師となったエサウは父イサクのお気に入りとなり、家(天幕)にいることの多かったヤコブは母リベカのお気に入りになりました。

ある日、ヤコブがレンズ豆の煮物を作っているところに、空腹のエサウが帰って来ます。そしてヤコブにそれを食べさせてくれと懇願すると、ヤコブは代わりに長子の権利を譲れと持ちかけました。たとえ双子だろうと、長男に生まれた者は父の死後、他の兄弟の2倍のものを相続できるというのが旧約時代のイスラエルの慣習だったのです。

貪欲なヤコブ

たった1杯の煮物の見返りに長子の権利を求めるヤコブの貪欲さとは裏腹に、エサウは与えられた特権に対してあまりにも無頓着でした。今、空腹が治まるならそれでいいとばかりに、その申し出を受け入れてしまうのです。

さらに、年老いたイサクがエサウに長男の祝福を与えようとすると、ヤコブはリベカに指示されるまま、視力の衰えた父をだましてエサウになりすまし、その祝福をも横取りしてしまいます。2度も出し抜かれたエサウは激怒して、父が死んだら弟を殺そうと決意します。

エサウの殺意に気づいたリベカは、自分の兄ラバンのもとにヤコブを逃がします。ヤコブはそこで、ラバンの次女ラケルを見み初そめました。ラバンは、自分のために7年働けばラケルを嫁にやると約束するのですが、いざ婚礼のときが訪れると、妻として与えられたのはラケルの姉レアでした。

驚いて抗議するヤコブにラバンは悪びれもせず、ラケルも与えるからもう7年、自分のために働くようにと告げます。兄をだまして逃れてきた地で、今度はだまされる側になったヤコブは、こうして2人の妻を持つことになったのです。

イスラエル12部族

レアは次々に身ごもり、4人の男の子を産みましたが、ラケルには子どもができませんでした。姉に対抗心を燃やすラケルは、自分の女奴隷を夫に与え、子をもうけさせます。すると、レアも負けじと自分の女奴隷にも子を産ませ、姉妹による出産競争が繰り広げられることとなりました。そしてついにラケルもようやく身ごもり、2人の子を産みます。こうして4人の女性がヤコブに12人の息子を産み、この12人がイスラエル12部族の族長となったのです。

ラバンのもとで一生懸命働くヤコブは神に祝福され、多くの財産を築くことができました。しかし、いつしかそんなヤコブに向けられるラバンの目にねたみを感じるようになった頃、神はヤコブに故郷に帰るように命じます。

ヤコブにとって故郷に帰るうえでの大きな障害は、自分を憎んでいるはずの兄エサウでした。まず、使者を送り、自分の帰郷を知らせると、兄は400人の従者を連れて迎えに来るとのことでした。

ヤコブはそれを聞いて恐慌を来きたします。兄がどんなつもりでこちらに向かって来るのかがわかりません。万が一、攻撃をされることがあっても全滅しないようにと、自分の宿営を2つに分け、被害を軽くする備えをしつつ、エサウにたくさんの贈り物を送ります。

神との格闘

それでも落ち着かないヤコブは、夜になると妻子を連れてヤボク川を渡り、自分は少し離れた所に残っていました。するとある人が現れ、ヤコブと格闘を始めました。それは夜明けまで続き、ヤコブに勝てないのを見て取った相手は、ヤコブの足の関節を外しました。

それでもヤコブは相手を放さず「私を祝福してくださるまではあなたを去らせません」と言います。不思議なセリフのようですが、格闘するうちに、ヤコブは相手が神であることを悟っていたのです。神は「あなたの名は、イスラエルだ。あなたは神と戦い、人と戦って、勝ったからだ」と告げ、ヤコブにイスラエル(神と戦う者という意味)という新しい名を与えます。

その後エサウと和なごやかな再会を果たしたヤコブは、カナンに向かいました。

聖書ガイドMOOK
フォレストブックス 編
B5判 96頁 定価1,200円+税

 

ゼベダイの子ヤコブとは…

新約聖書時代、ヤコブはかなり一般的な名前だった。というのも、ヤコブは旧約聖書に登場するアブラハムの孫で、のちに「イスラエル」と改名し、イスラエル民族の祖先となった人に由来する名前だからである。新約聖書のなかだけでも、ゼベダイの子ヤコブ、アルパヨの子ヤコブ、ユダの父ヤコブ、主の兄弟ヤコブと、少なくとも4人のヤコブが知られている。

気性の激しい雷の子

このうちもっとも有名なのは、おそらくゼベダイの子ヤコブであろう。彼はガリラヤ湖の漁師だったが、弟のヨハネと一緒にイエスに従い、その弟子となった。彼の家には雇い人がいたことが福音書に記されており、かなり裕福な家だったと想像される。また弟ヨハネは大祭司と知り合いで、エルサレムに自分の家を持っていたらしいことも記されている。
この兄弟は気性が激しく、イエスからボアネルゲ(雷の子)というあだ名をつけられている。あるときなど、自分たちイエスの一行を歓迎しなかった村に対して、天から火を呼び降らして、村を焼き尽くしましょうなどと提案している。また出世欲も強かった。2人の母サロメは、神の国が実現するとき、2人がキリストの左右の座につけられるように願い、イエスから叱責されたりしている。

十二弟子の中心の一人

こうした欠点にもかかわらず、イエスはこの兄弟を重視していた。十二弟子のなかでも、ヤコブ、ヨハネとペテロは3人だけ特別に選ばれて、キリストの生涯の重要な出来事に同行している。死んだ少女を復活させる奇跡、キリストが栄光の姿に変貌したとき、十字架の直前にゲツセマネの園で祈ったときである。
イエスの復活と昇天の後、ヤコブはエルサレムにあるキリスト教会の中心の一人となったが、十二弟子のなかで一番早く殉教した。紀元44年頃、ヘロデ・アグリッパ1世がキリスト教会を迫害し、その中核であったヤコブを捕らえて殺させたのである。
ヘロデはユダヤ人住民の関心を買おうとしていた。このため、初代教会の歴史にヤコブの名前はほとんど登場しない。兄弟ヨハネが長生きしたと言われるのと好対照である。
(出典:杉本智俊『聖書人物伝 これだけは知っておきたい127人』フォレストブックス, 2013, 184-185p)


 

ヤコブ(イエスの兄弟)とは…

イエスに兄弟姉妹がいたことは福音書に記されており、それにしたがえば、彼らはイエス誕生の後にヨセフとマリヤの間に生まれたと考えるのが自然であろう。ヤコブはリストの最初に挙げられており、イエスに次ぐ2番目の男子であったことになる。
イエスの宣教活動中、彼ら家族は当惑を覚え一定の距離を置いてみていた。しかし「使徒の働き」は、イエスの復活昇天後にヤコブがエルサレム教会の中心人物となり、「エルサレム会議」では調停役を果たしたことをも記している。使徒パウロも回心の3年後にエルサレムでイエスの兄弟ヤコブに会い、14年後にも会ったと書いている。さらに、復活のキリストがヤコブに現れたとの伝承の流布はパウロの手紙からも知られ、それはヤコブが重要な位置を占めたという記述とあいまっている。『新約聖書』の「ヤコブの手紙」はユダヤ的な色彩をもっており、伝統的に彼によるものとされる。
(出典:岸本紘『聖書人物伝 これだけは知っておきたい127人』フォレストブックス, 2013, 190-191p)

聖書人物伝
千代崎秀雄、鞭木由行、内田和彦、杉本智俊、岸本紘 共著
224頁 定価1,800円+税
いのちのことば社