きさき・ともゆき
1971年生まれ。2005年、依存症者の更生と社会復帰を支援する一般社団法人「ティーンチャレンジ・ジャパン」を設立。2013年からは岡山に拠点を移し、引きこもりや依存症の若者を農業を通して社会復帰させるプログラムの構築に取り組む。
最終回 仙台で受けた刺激と大きな目標
ティーンチャレンジ・ジャパン ディレクター 木崎智之
9月8日(日)
マサ君の卒業式。去年の9月に岡山に到着した翌日、白菜を1万株定植させられて畑でダウンしてしまった姿を昨日のことのように思い出す。この1年で体力も技術もつき、定植も草刈りもうまくなった。ヒロ君(第11回参照)が働いている仙台で新生活を始めたいと願っているが、旅費や引っ越し費用を貯めるため、まず岡山でバイトをすることになった。卒業はゴールではなく、新しいスタートだ。
9月16日(月)
10年前に卒業したテッちゃんが、家族を連れて訪ねてきてくれた。今は兵庫で不動産関係の仕事に携わっているが、県北に誰も住まなくなった畑つきの一軒家が点在するので、ティーンチャレンジ(TC)の卒業生が借りて農業できる可能性もあるとのこと。卒業後、10年以上「クリーン」というだけでもすごいことだが、幸せな結婚をしてしっかり子育てしている姿は、後輩にとって本当に励みになる。
9月19日(木)
苗は雨が降る前日に植えるのがベストだが、肝心の雨が降る気配がない。白菜は定植が1日遅れると生長が1週間遅れると言われていて、9月下旬に定植してもちゃんと育たない。昨年より10日以上定植が遅れているのだが、この暑さの中定植したら2日で枯れてしまうので、天気予報に☂が出るのを祈りながら待つ。これ以上待てないと思った時、☂が出た。ハレルヤ!
主はその恵みの倉、天を開き、時にかなって雨をあなたの地に与え、あなたのすべての手のわざを祝福される。(申命記28章12節)
9月22日(日)~29日(日)
カンボジアのTCから要請があり、1週間出張。首都プノンペンから南へ2時間の田舎に土地が与えられ、生徒22名をスタッフ十数名でケアしている。健康保険や生活保護は存在せず、訓練費を払えるほど経済的余裕のある生徒もいないので、収入は海外からの献金に頼るしかない。魚を養殖したり、食用に牛・豚・鶏を育てたりしているが、畜産は経費がかかり、小規模だと利益が出ないどころか赤字らしい。結局、昨年から作り始めたキュウリが稼ぎ頭になっているそうだ(冒頭写真)。地味に見えるが、やはり農業がいちばん利益率がいいのかもしれない。
農作業が生徒の心身に良い影響を与えていることから始めた農業プロジェクトの2年め。毎月原稿を書くことで、作物の物理的生長と生徒の霊的成長の共通点を再認識できた。また多くの励ましも頂き、農業を通して地方の教会やミニストリーが経済的に支えられ、地域を活性化する働きが全国に広まることを願ってやまない。1年間、ご愛読ありがとうございました。
〈「百万人の福音」2019年12月号〉
ティーン・チャレンジ・インターナショナル・ジャパン
〒700-0976 岡山市北区辰巳28-119-301 TEL:086-244-6080
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