《連載》どうせなら楽しく自分を

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第4回 どうせなら楽しく自分を

自分の中にある、あの頃の自分に語りかける

となみ野聖書教会 牧師 横山幹雄

 詩人の谷川俊太郎さんがテレビで語っていました。「僕は人間の年齢って木の年輪みたいなもんだって思う。たとえ70歳くらいのじいさんでも、切ってみると真ん中にちゃんと赤ん坊時代の自分がいる

 さすがに詩人の描く鮮やかなイメージです。じいさんの私の出っ張った腹の中に、70以上の年輪がくっきりと浮かび上がり、赤ん坊時代、小学生時代、中学生時代、高校生時代の自分が見えてきました。それは過去の自分の姿ではなく、ちゃんと今の自分の中にある自分です。耳を傾けると、そんな自分の声が聞こえてきます。

 両親の離婚によって、田舎の祖父母のもとに預けられた小学生の声…「さびしいよ。ボクなんか生まれなかったほうがよかったんだ。死んでしまいたい」。多感な中学生の声…「ああ、いやだいやだ。自分がいやだ。顔が嫌い。声が嫌い。性質が嫌い。どうして自分は、こうなんだろう」。ニキビ面の高校生の声…「ああ、不安だ。これから自分はどうなってしまうんだろう。どうやって生きてゆけばいいんだろう。生まれてしまった以上、いつか死ぬのだ。ああ、死が恐ろしい」

今の自分だからこそ、言えることば

 そんなにぎやかな幼い自分の叫びやつぶやきに、今の私には、語り聞かせることばがあります。

 さびしくて、いつも膝小僧を抱いてメソメソしている小学生の自分には、「幹ちゃん。お父ちゃんやお母ちゃんがそばにいなくてさびしいよね。でも、幹ちゃんを大切に思っている人はたくさんいるんだよ。なによりも、イエス様が幹ちゃんのことを、どれだけ愛しているか、もうすぐわかるからね」

 いつも他人と自分を比べながら、劣等感にさいなまれている中学生の自分には、「幹ちゃん、他の人と比べてばかりでは大変だね。スマップの歌にあるように、ナンバーワンになれなくても、オンリーワンの幹ちゃんは、高価で尊い存在なんだよ。なんと言ったって幹ちゃんは、神様の手作りによる最高傑作なんだから」

 追い詰められて、落ち着きなく、あれやこれやに手を出している高校生の自分には、「うんうん、そうやって右往左往してくれたおかげで、好奇心から教会に飛び込んでくれたからこそ、今の私があるんだよ。いいかげんな妥協をしないで、答えを探してくれた高校生の君に、心から感謝してるよ」

 子ども時代、青年時代の私は、劣等感のかたまりで、いつもため息をついて不平、不満をもらしてばかり。なによりも、自分の容姿が嫌いでした。映画が大好きで、邦画では加山雄三、洋画ではアラン・ドロンが好きでした。映画館から出るときには、「ぼかあしあわせだなあ!」と若大将になったような気分ですが、すぐに現実に引き戻されます。加山雄三、アラン・ドロンは二重まぶた。私は一重。二重にならなければ、人生は開けないと悩みました。まぶたを折り曲げて押さえてみても、手を放すと元に戻ります。寝るときにテープを貼り付けて寝ようとしましたが、とても眠れません。涙ぐましい努力を重ねていたそんな自分を、滑稽に思いますが、その時は真剣でした。

自分が「最高傑作」だと知った日

 高校3年の秋に、ひょこっと飛び込んだ教会で、クリスチャンになりました。聖書を読むようになって、衝撃を受けたのが伝道者の書12章1節「あなたの若い日に、あなたの創造者を覚えよ」です。私の創造者? 私は偶然、この世界に生み出されたのではなかったのか。間違って生まれてきたのではなかったのか。創造者の神様が、最高の知恵と力を注いで、私という存在を造ってくださったのだ。私は私でいいのだ。最高傑作なのだから。劣等感と、他の人と比べながら生きる愚かさから解放されました。

 私の大好きな神様のイメージがあります。イスラエルに対する神様の思いを表わしていますが、それをクリスチャンに適用することができます。

 「あなたの神、主は、あなたのただ中におられる。救いの勇士だ。主は喜びをもってあなたのことを楽しみ、その愛によって安らぎを与える。主は高らかに歌ってあなたのことを喜ばれる」(ゼパニヤ3・17)

 神様が私のことを楽しみ、高らかに歌って私のことを喜んでおられる。そんな神様の、私へのラブソングが聞こえます。

 「あなたは、なんと美しい! あなたの存在は、私の喜び。あなたがいてくれるので、私はどれほど慰められ、どれほど楽しませてもらっているか。ああ、あなたを、どれほど愛していることか!」

 そんなラブソングなど信じられないとおっしゃいますか? とんでもありません。ローマ書8章32節「私たちすべてのために、ご自分の御子をさえ惜しまずに死に渡された方」です。驚くばかりの愛で、あなたを、私を愛してくださっています。

幸せは自分が決める

 今年の私の年賀状の文面です。

 「幸せは自分が決めること」…このフレーズが気に入っています。私ほど幸せな人間はいないと言える自分を幸せと感じています。それはイエス・キリストに出会えたことが基本です。良い妻、良い子どもたち、孫たちに恵まれたこと。良い友がたくさんいること。最高の仕事に就けたこと。良い楽しみを見いだせたこと。こうした喜びを知る感受性を保っていられることにあります。その幸せの一つが、「あなた」との出会いです。あなたにとっても、幸せ満ち満ちる一年でありますように。

 「満ち足りる心を伴う敬虔こそ、大きな利益を受ける道です」
(Ⅰテモテ6・6)

「百万人の福音」2016年4月号〉

よこやま・みきお
1943年高知県生まれ。石川県の内灘聖書教会で37年間牧会の後、富山県に移り、砺波市での開拓伝道に挑戦中。となみ野聖書教会牧師。内灘聖書教会名誉牧師。趣味はバードウォッチング。

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