《話題の絵本》 『イースター〜あたらしいいのち』著者インタビュー
著者:加藤潤子さん
Q1 2018年に出版された、『くりすます〜かみさまのおおきなプレゼント』では、天地創造から降誕、十字架、復活までを描き、クリスマスの本当の意味がしっかり伝わってくる内容でした。新作の『イースター〜あたらしいいのち』は、復活と救いに焦点をあてた作品ですが、どのような思いで取り組まれましたか?
クリスチャンホームに育ち、幼い頃から聖書の世界に慣れ親しんでいた私は、ふつう常識では受け入れられないイエス様の復活の出来事、イースターを当たり前のように信じていました。
それよりも、イエス様の十字架の死の意味が長い間わからずにいました。周りの人の話をいくら聞いてもわかりませんでした。
自分の内のどうしようもない醜さに苦しむようになり、必死でイエス様の救いだけを求めるようになった時に、ある日、イエス様の十字架にある私の罪の許しを体験的に知ることができました。
イエス様の十字架の死と復活には、それぞれに大きな意味があるはずですよね。これまで私が信じたつもりになっていた復活について、教えてくださいと祈りながら絵本作りに取り組みました。
Q2 テキスト(物語)作りはどのようにされましたか?
イエス様の復活の出来事は、聖書ではマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの福音書で書かれている場面がいくつか入れ違っていて、重複している場面と1つの福音書にしか書かれてない場面もあります。あらためて4つの福音書を読みくらべて、出来事の順、日時を追ってみることから始めました。できるだけ聖書の順序に従って整理して進めてゆきました。
そして弟子たちの行動や言葉なども、そのまま伝えたいと思いました。
弟子たちに謎の行動(なぜ今エマオへ? 漁へ行く?)があっても、そのまま描くようにしました。一つ一つの記述が当時の緊迫した状況や、弟子たちの心理をあらわす重要なものであると気づくからです。
読者が絵本を読みながら当時の時間の流れにのって、復活されたイエス様と実際に出会った弟子たちの様子を知ることができますように、そこで何を感じてもらえるだろうか?
これが今回の絵本づくりで一番大切にしたことです。
Q3 聖書の内容を絵本にするという点で、気をつけていることはありますか?
聖書は同じ箇所でもその時々読むたびに受け取る意味が違ったり、深まってきたりします。今私が受け取っていることは、とてもすべてとは思いません。聖書はどんな時もいつまでも新鮮にみことばを語り続けてくれる書物です。
聖書絵本も、ぜひ長く読んでほしいと思っています。読むたびに気づきがあってほしいです。
だから私の解釈や気持ちは少し控えめにして、聖書に書いてあるまま描くようにしています。私の役目は子どもや初めて聖書のお話を読む方のために、できるだけわかりやすく伝えることです。これが私の聖書絵本づくりの根本となっています。
Q4 この絵本で一番のこだわった場面はありますか?
イエス様がペテロに語りかけるところです。
みなさんのイエス様の姿イメージはそれぞれあると思うので描くのは本当にむずかしいです。後ろ姿や小さめに描いておきたいところですが……。この場面はイエス様がまっすぐこちらを向いて(あなた・私に)語ってくださっています。
Q5 最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
イエス様の復活のありさまはなんだか地味ですよね。華々しく登場するわけでもなく、周囲にはイエス様だと気づいてもらえなかったりもします。絵本の仕上がりもシンプルになりました。お祭り事のイースターよりも、二千年前のあの日になされたイースターの本当の喜びを知ってもらいたいです。
この事実の中に、たしかに神様の人への深い愛の現れがあるのだと思いました。イエス様の愛を信じる人は、新しいいのちに生きることができるのです! 読んでくださった皆さんに届きますように。
そしてこの絵本を読んだ後は、やっぱり、聖書を読んでみていただきたいですね。
ありがとうございました。
1973年、東京生まれ。女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室卒。インハウスのグラフィックデザイナーを経て、 2002年より絵本作家・イラストレーターとして活動中。絵本編集者・武市八十雄氏より学んだ “感じる世界の絵本づくり”を大切にしている。絵本に『くりすます~かみさまのおおきなプレゼント』(いのちのことば社)、『まいごのミーミ』、月刊保育絵本「こどものせかい」から『みんなのレストラン』『はこぶねをつくりなさい』(以上、至光社)など。イラストに『ひめくり31のすうじとせいしょ』『ティーンズのための命のことが分かる本』(以上、いのちのことば社)などがある。