《特集》さあ賛美しよう!②賛美はすべて信徒のア・カペラ~無楽器派の礼拝

信仰生活

アメリカの復帰運動に由来し、礼拝だけでなく結婚式もア・カペラ

御茶の水キリストの教会

東京都千代田区、JR御茶ノ水駅近くにある御茶の水キリストの教会は、礼拝で楽器を使わない無楽器派の教会。賛美はすべて信徒がア・カペラで行う。この日も礼拝が始まると、黙祷後の静寂が満ちる会堂に、賛美リーダーの音取り用のハミングが短く響き、おもむろに振られた指揮に合わせて、会衆が一斉に賛美を始めた。

「人間は体自体が楽器です。有機的な存在である人間の発声メカニズムと音の出し方が近いという理由で、オルガンの名前はオーガンからついたと言われますが、私たち自身が有機的な楽器なのです。オルガンを使うのもいいですが、神様から頂いた体と声に感謝し、それを用いて賛美することを大切にしたいと思っています」

そう話すのは教会の伝道者、野口良哉さん。

アメリカの復帰運動(※)に端を発するこの教会の群れは、聖書の記述に忠実に沿う信仰生活を信条とし、礼拝での楽器使用の記述が新約聖書にないことから楽器を使用しない。その方針は徹底していて、教会学校や葬儀、結婚式でも守られる。たとえば、通常は楽器演奏される新郎新婦の入場曲、「結婚行進曲」も、信徒たちによるア・カペラだ。

日本では少数派だが、幼少期からこの群れで育った者には、賛美は無楽器が当たり前。他の教会から移ってきた人も、初めは多少驚くものの、すぐになじむという。本場アメリカで無楽器派の中で過ごした人には、むしろ賛美に楽器を使うことに違和感を感じる人が多く、来日の際は、わざわざ無楽器派の教会を探して、ここを訪れる。

一切楽器に頼らない賛美は、その有り様が一人一人の歌唱力にかかるため、教会では月に一度、皆で練習の時をもっている。指導に当たる池田孝子さんは大学で声楽を学んだ経験を生かし、全体のレベルアップの他、指揮法の教授、古くても歌い継ぎたい賛美の継承などにも力を入れる。

外国人信徒の出席も多く、英語の讃美歌集。礼拝は日本語と英語の二部に分かれて行われるが、聖餐式の時は合流し、2か国語入り交じった賛美がささげられる

「賛美リーダーがいない頃は、その時々で、リードする人によってキーも適当になりがちでした。でも、亡くなった音楽家の夫に『賛美歌はささげもの。適当という姿勢ではいけない』と、教えられて指導を始めたのです。いちばんいいものを神様にささげる。何よりもその心を、次の世代の人たちに伝えていきたいです」

無楽器の礼拝は、前奏も、間奏をつなぐピアノの音も無く、歌い終わりには信徒の声の余韻だけが残る。素朴だが、無音の「間」に何か清々しさも感じた。自分が歌っている相手は誰なのか。その「間」が確認させてくれるからなのかもしれない。野口さんのことばが耳に残る。

「無伴奏を指すア・カペラの語源はラテン語で『礼拝のように歌う』。昔は礼拝で楽器を使わなかったため、神を礼拝する賛美=無伴奏を意味したとも言われています。それは私たちが、ア・カペラでの賛美にこだわる理由そのものを表しているようにも感じます」
(取材:伊藤千賀子)

※復帰運動=18世紀後半から19世紀初頭にかけてアメリカで起きた運動。繰り返す教会教派の分裂・乱立を憂い、聖書に見いだされる教会の理想像に復帰することにより一致しようと唱えた。近年ではストーン・キャンベル運動とも呼ばれる。この流れから生まれた「キリストの教会」は最終的に有楽器派・無楽器派・ディサイプルズの三つに分裂するが、最も保守的なのが無楽器派。日本では茨城を中心に全国に五十ほどあり、楽器を使わない他、聖餐式を毎週行う、バプテスマは浸礼で行う、などの特徴がある

「百万人の福音」2017年1月号より>